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異世界でカボチャプリン  作者: マーブル
迷宮少女が空を飛ぶ
149/870

防衛戦第二幕の報告会

皆様の声に支えられて150話到達でございます。

一層の精進をしていく所存でございます。

【王国暦122年3月5日 5:28】


 いつも早起きだけれど、今日はドロシーたちと一緒に出勤して、開店前のトーマス商店に寄って、『計算端末』を置いてくることにした。

「へえ、それが改良版ってわけ?」

「うんうん。まず一台置いておくから、ヒマな時間に試しで使ってみてほしいんだ。使い方は……見ればわかると思うけど、一応、これ説明書ね」

 教会印の紙にメモを書いて渡しておく。

「わかったわ。やってみる」

 カウンターの外側からは見られない位置に設置して、『施錠』をしてしまう。これで私以外は動かせないことになる。お試しだしね。

「それじゃ、冒険者ギルド行ってくるね」

「うん、また夜にね」

 ドロシーとレックス、サリーから手を振られて、店の外に出る。昨日も敵襲があったということで警戒しているのか、朝イチから並んでいる冒険者は少ない。


 冒険者ギルドへ向かう短い距離の間でも、何となく会釈されたり合掌されたりする。これはあれか、雷の魔法を連発してたりするから認知されたということか。

 多少戸惑いながらも久しぶりの作り笑いを浮かべて、建物に入る。

「ちーっす」

「ちわっす!」

「おはようございます!」

 と、知らない冒険者たちからも声を掛けられる。

「え、えと、はい、おはようございます」

 戸惑いながらもペコリ、と反射的にお辞儀をしてしまう。何だろう、登校時に不良に挨拶されているような錯覚を覚える。


 私が返答したときの反応は二分していて、

「あっ! はいっ! おはようございます!」

 と顔を赤らめる人と、

「ヒイイ、おおおおはようございますすす」

 と、顔を青ざめさせる人。

 うーん、私にどうしろというんだ……。


 挨拶をくれた冒険者の中には第四班の人も――――ラナたんがいた。

「隊長!」

 正確には『班長』だと思うんだけど、まあいいや。


「おはようございます。ラナさんもお元気そうで。チームを組まれたとか?」

「はい、その件で………お時間ある時で構いませんので、時々様子を見に来ては頂けないでしょうか?」

「いいですよー」

 安請け合いしておく。時間はあんまりないけど時々ならいいし。乗りかかった船だし。袖触れ合うも多生の縁と言うし。

「ありがとうございます! 嬉しいです!」

「はい、それじゃまたー」

「はい!」

 ラナたんは真面目そうなのがいいよなー。固いところが魅力的みたいな。ああいうのもデレるとイイ感じなんだよなー。でも、真面目で出来過ぎる女は、ジェシカ女史やカミラ女史みたいになってしまうかもしれないよ……?


 受付ホールを歩きながら、受付カウンターの中にいる職員たちをチラリと見ると、無言のまま、ご自由に中へどうぞ、と視線を返される。私も頷いて、勝手に扉を開けて、廊下へ入ってしまう。今朝はベッキーは不在みたいだなぁ。支部長室にいるのかなぁ?

 慎重にノックをすると、……入れ、と声が聞こえた。


「失礼します。おはようございます。出頭しました」

「……昨日はご苦労だった。……迅速な対応に感謝する」

 あんまり感謝してない表情で、フェイは『遮音』結界を張る。

「実はですね、タロスを家から操作してるときに気付いただけなんですよ」

「……ほう……。……巨人を操作できる限界距離というのは、どのくらいなんだ?」

 昨晩のグラスアバターにチェンジした距離を限界とするなら―――。

「王都からでも可能かもしれませんね」

「……ほう……。……それはアリバイに使えそうだな……」

 この世界では『アリバイ』と言って通じる人の方が珍しい。

「……しかしな、捕虜ばかりが増えて困ってもいる。……お前が捕虜ホイホイに思えてきた」

「捕虜たちのその後を考えると、生かしておくのが善だとは言い切れないのが辛いところですね……」

 フェイは大きく頷いて、眉根を寄せた。

「……全くその通りだな……。……プロセア王族二名と婚約者一名が捕虜になっているという状況は、不確定要素を考えると非常に恐ろしい」

 今にも全軍を挙げて奪還に来るのではないか、という危惧を持って当然だ。

「王族は実際には()()いたらしいんです。一人は冒険者の恰好でしたし、もう一人は勇者が誤射で殺してしまったので、王族だからと確保は難しい状況でしたね」

「……なんと」

「一人は末の妹でアンヌ、勇者に殺されたのがエルヴィーネ、と聞いています」

「……プロセアの第三王女と第四王女だな。……何も死にに来なくてもな……」

 戦場に女性を随伴できる神経も疑いたくなるところだ。(わた)の神様(神様はいないけど)に嫉妬される言い伝えとかはないんだろうか。

 勇者が仲間たちを揃えて、悪の島グリテンに囚われている無垢な市民たちを解放するストーリー。それを後ろから見守る姫。

 ケッ、お花畑過ぎて吐き気がするわ。


「っていうかですよ……? 敵軍千人、こちらの西側方面軍は百五十人ほどだったわけです。いかに上陸戦が難しいとはいえ、普通なら突破できる数字ですよね。さらに後方から治癒を使えば千は二千も三千にも相当するというのに。ところが彼らが負けたというのは、支部長ならどんな考察をしているのかな、と」

 ふむ、とフェイは手を顎に持っていき、思案顔になった後にポツリ、と話し出した。


「……それはトーマス、アーロンとも話したのだが、現在捕虜になっている士気の低い連中は、練度もまた低かったんじゃないか?」

「招集されて間もないとか、農民や漁民だったとか、満足な武器も与えられてないとか? ですか?」

「……様々な理由はあったと思う。……それでも彼らを肉の盾にして、数に任せて突っ込ませても勝てる、と踏んだんだろうな。……しかし、そこで上陸支援を行わないのは愚策だ。……つまり、指揮や編成や作戦に問題があったとしか思えない。……ヒーラー勇者の存在が生んだ慢心かもしれないし、そもそも指揮官が無能なのかもしれないな」

「ああ、指揮官は武芸には長けてましたけど、戦略や戦術を考えるのは苦手だったのかもしれませんね」

「……うむ。……貴重な魔術師を東海岸からの陽動に使っているしな。……ヴィンフリート王子は肉体派なのかもしれんな」


 なるほどなぁ。いわゆる魔術師、魔法嫌いみたいなやつかもしれない(割とよく聞く話で、冒険者にも一定数いる)のか。フェイの考察は一々納得できるものがある。

「じゃあ、陽動を最小限にして、魔術師連中が本隊の後方から援護射撃をしていたなら、こちらは詰んでいたかもしれなかったと?」

「……お前がいる、という前提で話すなら、どちらでもこちらの勝ちだな。……お前が横槍を入れなければ、西側は早晩壊滅していただろう。……お前がいなければ、ヒーラー勇者+雑兵で突破できると判断していたのは間違いではないと思うぞ。……つまり、お前が到着するまで保たせた、騎士団とセドリック隊の手柄だとも言えるな」

「なるほど……」


「……それで、今朝呼んだのは、オルトヴィーン王子とヴィンフリート王子、ヴィンフリートの婚約者であるアンジェリン姫。もう一人船長か。……四人は早期に送り返す必要がある。……まだ正式に送還する事にはなっていないが、護送するとすればお前に行ってほしい」

「面倒臭い、で済ましちゃ駄目なんですよね?」

「……ついでだから色々買い込んできたらどうだ? 大陸の港町を見てきたり、仕込んできたり……」

「ああ……」

 なるほど、中継魔法陣とか、監視の魔法陣を仕掛けてきたらどうか、と言っているのか。なかなか面白いアイデアだなぁ……。今の技術をもってすれば、簡単な魔法陣なら小石に刻むことも可能だ。


「……もちろん、今すぐという訳ではない。……交渉もされていない段階だからな。……ただ、そういった監視の魔道具については構想を練っておいて欲しい」

「わかりました。時期の目処はどんなものでしょうか」

「……一ヶ月を目安にして欲しいところだが……日程的にはどうだ?」

 フェイの口は日程(スケジュール)と言っていたけども、聞こえてきたのは日程、の言葉だった。

「例の迷宮の絡みで、なるべく早く向こうに行きたいんですけど。向こうが落ち着いてしまえば日程的には楽になりますので。数日間不在になれる、何か自然な用事があれば嬉しいなと」

 ふーむ、とフェイは考え込んだ顔になる。

「……ズバリ迷宮探索では駄目なのか?」

「私を攻撃しない設定になっているので、今の段階では難しいですね。攻撃させることも可能みたいですけど、マイ迷宮として愛着がありますし」

 マイ迷宮、と言ったらフェイが表情を変えずに噴き出した。凄く怖い………。うーん、どこかに笑うツボがあったのだろうか……。


「……うむ、それは考えておこう。……ああ……。……その王都西迷宮のリニューアルな。……話題にはなっているそうだ。……ザンの方からは、上級冒険者にはしばらく様子を見るようにとお触れが出ているようだがな。……ザンなら即座に探索を命じるはずなんだが。……お前、何かしたのか?」

「? さあ……? 迷宮内部に落ちていた遺品を返却したくらいですかねぇ……」

 ほう、とフェイが声を漏らす。得心した顔で頷く。

「……ああ、おそらくはそれだな。……上級冒険者による迷宮探索の動機を一つ潰したことになるか。……『勇者殺し(ラーヴァ)』探索は、そもそも『ラーヴァ』が迷宮に入ったかどうか疑わしいところではあるが、迷宮の活性化と時期が重なっているからな。……普通は関連づけて考えるだろうよ」


 それもそうだなぁ。今まで顔を出さなかった迷宮管理人が登場したのが、『ラーヴァ』の襲撃と、その追撃劇の直後だというなら、タイミングはバッチリだものね。イコールで結びつけない方が不自然か。

 ということは、いずれは上級冒険者による深部への探索がある、と思っていいな。時期はわからないけど、それまでに迎撃態勢を整えて、管理層までは絶対に届かせない、難攻不落の迷宮にしておかなければ、『ラーヴァ』の正体が露見する事態になりかねない。

 かかってこい! 冒険者共よ!

 なーんてね……。そう言えるまでの迷宮にできるといいなぁ……。


「……次の話だ。……アーロン、トーマスから依頼されていると思うが、収容所建設の方はどうだ?」

 治安に関わるとしても、収容所関連にフェイは関係するのかな?

「私の関わる作業は今日中で終わりそうですね。もう一つくらい監視塔を建てるかもしれないので、余裕を見てもう一日ですかねぇ。首輪は鋳造品が到着次第、やればいいですよね?」

「……うむ。……見せて貰ったが、あの首輪は秀逸だな。……しかしな、ウィートクロフト級を対象に、少数でいいから、もっと耐久性の高い品を作っておいた方がいいかもしれんぞ? ……あの首輪は過負荷を掛ければ解除できるだろう?」

 フェイに指摘された弱点は、確かにその通りだ。ちょっと見直したかも。

「良くわかりますね。その通りです。うーん、そのうち爺クラスの魔術師が出てきますかね?」


 東海岸で遭遇したウィートクロフト爺と思われる魔術師はサンダーブレ○クで一撃死したようにも思えるけど、予感というより確信レベルで、爺は生きているだろう。

「仮に爺だったとして……死んでる気がしませんよね」

 私に自分のスキルをコピーさせたり、ミネルヴァを送り込んだり、自身は王都の冒険者ギルド所属なのに大陸軍に随伴したり。気まぐれな爺の行動だとして頷けるものではあるけども、今のところ爺本人だったという証拠はない。

「……うむ。……その他に王族用みたいなのも必要だな……」

 フェイは真顔だ。

「ハハハ……。え、真面目に作るんですか?」

「……うむ。……金メッキとかでどうだ?」

 メッキはメッキで難しいんだけどなぁ。簡単に言うなぁ。

「うーん、わかりました。それも作っておきますよ」

「……あとは―――商業ギルド(トーマス)の方から話があるだろう」

 船の転売と修理関係かな。間違いなく金になる戦利品だものね。


「えと、戦利品と言えば、奪った武器類は冒険者たちに?」

「……うむ。……高額なものはオークションにかける。……安そうなものは十把一絡げに投げ売りで、素材直行(うちなおし)だろう。……冒険者には当座の金も必要だから、防衛戦の報酬も早々に払った方がいいだろう。……オークションは二日後を予定している」


 準備金や貯蓄しているお金は冒険者ギルドにはあるはずで、今すぐに支払おうと思えば支払えるはずだ。だけれども、戦利品を捌いて報酬にする、という経緯を取りたいのだろう。防衛戦への参加は本質的にはボランティアだし、それが無償であったとしても文句を言う冒険者は皆無だとは思う。だけど、人間は糧を得るために、やっぱりお金があった方がいいのだ。


 なお、商業ギルドは、船の売買と職人(私やギルバートやロール)の斡旋手数料、食料の手配を担当。冒険者ギルドが武器類の回収と販売、領主は一番実入りが大きくリスクも大きい身代金(プロセアと王都騎士団)の回収担当で、三者、それぞれに利益が出るように分割しているそうだ。


「領主さんの方は進展はありましたか?」

「……それだがな……。……アイザイアが渋りだしている。……その意味では昨日の襲撃は有り難かったとも言えるが」

「会議設立に難色を示しているんですか?」

「……そうだな。……すぐに折れるとは思うが、少しでも領主側を有利にしたいという駆け引きだろう」

 フェイが肩を竦めた。

「折れない時でも、なるべく暴力で解決することは避けたいところですね」

「……うむ。……会議の設立の根底は政治不信、領主不信だからな。……実績のないアイザイアが権威を主張したところで誰も納得はするまい」


 要はアイザイアが自らの立場を自覚しているかどうか。周囲が唆した結果、踊らされたと感じているのか………。ここで敢えて死中に活を求めるメンタリティを持っていなければ、政治家の素養もない、か。就任前に試されてるとは、中々厳しい状況に置かれているなぁ。

「……まあ、どちらにせよ十日ほどは待つつもりだ。……その頃には王都へ、ランド卿を護送することになる。……襲爵が先になると思うが」

 迷宮に行って、帰ってきて、ギリギリの日程だなぁ……。


「王都といえば、どうなってるんでしょうか? ダグラス宰相の進退とか、勇者のその後とか」

「……ああ、ダグラス宰相と息子は幽閉中……というか尋問中だな。……現職は解かれているみたいだが、後任が未だ決まっていない様子だ。この辺りはザン、キャロルからも報告が来ている」

 本来はザンの秘書官たるブリジットのお仕事なんだろうけど……まだ体調は戻らないのかな?

「政治的空白が出来てるってことですか?」

「……うむ。……ロンデニオン市、グリテン国、共に政治的には止まっている状態だな。……ポートマット(うち)の新領主も、誰を窓口にしていいのか迷っている」

「ファリスさんが宰相に就任するという話もチラリと聞きましたが」

 金髪の良い男……。柔らかそうで美味しそうな臭いがする……。

「……王都第一騎士団は多忙を極めているところだろう。……第四騎士団は解体を視野にいれて再編成を余儀なくされるだろうし、王都騎士団的には今ファリスを抜くことは治安維持が難しくなるんじゃないか?」

 なるほど、ますます王都は人材不足に泣いていると。


「支部長の情報網はすごいですね……」

 ポツリと言うと、フェイはちょっと渋い顔になった。

「……ブリジットがな。……ヒマなのか、短文を送ってくるのだ」

「え、もう体調はいいんですか?」

 っていうか短文送ってフェイに情報を流しているのはブリジットなのか。

「……戻りつつあるようだ。……何でもシワシワになったとか? ……お前、具体的には何をしたんだ?」

 答えていいものかどうか……。一瞬迷ったけど、正直に話すことにした。

「ええと……体中の水分を抜いて戦闘不能にしました。水系魔法ですよ」

「……塩を贈られたと言っていたが?」

「それは文字通り、水分補給と思って、水と一緒に塩分を投げたんです。慣用句や故事じゃありません」

 フェイは口元を押さえて、またも表情を変えずにプッと小さく笑った。野口さんかよ。

 ちなみに、『塩を贈る』のは、この世界だと『敵に降伏を促す』意味合いに近いものがあるんだそうな。塩は重要な物資だから、関係する言い回しは多いんだとさ。


「……なるほど……。……それは戦意も喪失するというものだな……。……ブリジットは数日もすれば戦闘は無理だが通常業務には戻れるだろう。……突っ込んで聞いてみれば、ブリジットはザンの指示を無視してお前を追ったようだ。……その結果の撃退でもあるから、ザンからは多少の嫌味はあったが、本格的な苦情というわけでもない。……まあ、苦情の言いようもないだろうが」

 恨まれていると嫌だけど。ゲテ師匠(ブリジット)が何を思って追撃をして、ベッドの上で今、何を思っているのかは知る由もない。

「……ブリジットは『ラーヴァ』と戦ったのだ。……お前とは別人だ。……それは向こうもそうだし、お前も割り切ってくれ」

「はい」

 多少の罪悪感……いや多少じゃないな、大いに罪悪感はある。ブリジットに対しては、私は勝ったとは思っていないし。私にとって重要なのは勝ち負けじゃない。目的を達成できて、無事に帰還できたかどうか、だ。


 ん。

 目的か……。

「あの、勇者はどうなったんでしょうか。生きているという話でしたけど」

「……ああ……。……その通りだ。……現在第二騎士団で保護中とのことだが」

「第二騎士団?」

 迷宮で閣下が蹂躙した部隊か。

「……うむ。……生き返ったという話だったが。……お前の方で気付いていることはあるか?」

「あー、多分、ユニークスキルのせいだと思います。その勇者のユニークスキルは『不死』なんですよ」

「……なに? ……スキルは当然奪ったんだろう?」

 フェイの目が見開かれる。

「はい。ですが、スキルにレベルが存在したので、上位のスキルがある可能性がありますね」

「……アマンダによれば、ユニークスキルを奪えば、そのままの形では復活しないという話だったが?」

「違う形で復活したのかもしれません。『不死』LV2があるとすれば別スキル扱いになるのかも。もう一回殺せばわかりそうではありますが……」

「……それは『神託』で止められているしな。……全くどういう意図があるんだか。……勇者と言えば、プロセア軍にいた方はどうだったんだ?」

「さっくり倒しましたけど、勇者の力量、という点ではヒーラー勇者は秀逸でしたね。接近戦、もとい戦わずに後方支援に徹されていたら本気で厄介でした」

「……お前に近づかれた時点で、向こうに勝機はなかったか」

 私は軽く頷いて、話を続けた。

「ちなみにヒーラー勇者のユニークスキルは二つあったんです。こちらは『死者蘇生』と『不死者生成』で、実際にゾンビ作ってました」

 うーん、とフェイは低く唸って、少し考えてから、言葉を紡ぐ。

「……同時期に近い場所で、『不死』関連が集まっていたということか。……何とも意味深だな」

 深く同意する。そして、そのスキルが全て、私に集まっているというのも。

「まあ、今のところ、ゾンビ生成とか、迷宮管理でしか役立ちませんけどね」

 皮肉を交えて私は笑う。実際に作るかどうかは別にして、可能性を持てることには意味がありそうだ。

「……よし、関係者には情報を拡散しておく。……この後は収容所だな?」

「はい。お昼ご飯を食べてからいきます」

 とはいえ、お昼にはまだ早すぎる時間だ。

「……そうか。……ああ、もう一つ思い出した。……トーマス商店に目立つ魔力の持ち主がいるな。……ドロシー嬢か?」

 あー、フェイに気付かれるほどの大きさになってしまったか。


「いえ、多分サリーだと思います。トーマス商店の従業員で、魔法の素養があります。エイダさん以上の魔術師に育つ可能性があります」

「……なんと……なるほどな。……早期に教育してやってくれ。……では解散だ」

 フェイのその一言で私は席を立った。

「早々にやっておきますよ」

 仕事が増えちゃったなぁ、と思いつつ、私は天を仰いだ。天井に染みがあるのを発見して、この染みも私の仕事と同じように増えていくのかなぁ、とシンパシーを感じてしまった。



――――サリーはチャームな女の子らしいよ?





某所でスコッパーな方が取り上げてくださったようです。

あんまりにも嬉しかったので五分ほど涙を流しながら妖怪体操(第一)を踊りました。

作者大歓喜であります!

つつつつつ、ついでに感想やら評価やらいただければっ! 作者感涙であります!


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