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異世界でカボチャプリン  作者: マーブル
迷宮少女が空を飛ぶ
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カボチャのフルコース

時間的には飯テロにはならない……はず……。

カボチャ食えカボチャ!

【王国暦122年3月4日 18:25】


 フラフラ、とアーサ宅に戻ると、

「わっ!」

「そうっ!?」

 と、大声で驚かれた。


「あ」

 光球出しっぱなしだった。慌てて全部の光球を消す。

「何事かと思ったさ……」

「いやあ、面目ないです」

「そうね、眩しかったわ……」

 いやぁ、すみません……。


 家の中に入り、お腹をごまかしながらハーブティーを啜り、昨晩の経過を聞く。夕食はみんなが戻ってきてから。もう空腹過ぎて音も出ない。

「カレンさん、そっちの方は問題なかったですか?」

「ああ、何とかって長い名前の王族ね。大人しかったさ」

 なら良かった。トラウマを植え付けて良い方向に誘導しなくちゃね。

「明日はまた海岸の大掃除だとさ」

 カレンが苦笑する。

「あー、爆破しちゃったからですか?」

「しなくても上陸してたら同じだったさ。戦後の後始末に変わりはないさ。お嬢ちゃんは明日、朝イチで支部長のところに報告に来てほしいって言ってたさ」

「わかりました」

「そう、そんな近くまで来ていたの? 怖いわね」

 物騒な会話にアーサお婆ちゃんが入ってくる。

「なあに、お嬢ちゃんがドカーンとやっちゃうから大丈夫さ」

 過剰に演出するでもなく、カレンは淡々と言った。恐怖心を煽らない事も語り部(笑)として重要なんだな……。


「ただいまー!」

 と、そこにドロシーとシェミー、レックスとサリーが帰ってきた。

「おかえり。開店遅くなっちゃった?」

 私が訊くと、ドロシーは頷いた。

「ホント、迷惑な話よね。今日は開店休業状態だったわよ」

 プリプリ、とドロシーが怒るのを見て、レックスとサリーが微笑む。

「そうね、夕食にしましょう」

 アーサお婆ちゃんが立ち上がると、私とサリーもお手伝いに走る。

 腹減った……。


 今晩のメニューはカボチャフルコース、みたいな……!

「うまいぃいいい」

 ガツガツ食べる。

「そうね、すごい勢いね」

 みんなの視線が痛いけど、お腹空いてたんだよう!


 小型のカボチャに鳥肉を詰めて蒸したもの、焼いたカボチャのサラダ、カボチャのスープ(昨晩飲んだものよりもポタポタ感がない)、カボチャと細かくした肉を混ぜてあげ焼きにしたもの、カボチャを醤油で煮たものに、カボチャコロッケ、デザートが特大の――――カボチャプディング。

 何だ何だ、トリック・オア・トリート? な祭ですか? いやあれはロウソクを立てる入れ物――――ジャック・オー・ランタン――――の代わりにカボチャを使っただけで……。いやでも古代ケルト人の祭だそうだから、この島(グリテン)にあっても不思議じゃないのか。いやいや、やっぱり違和感あるなぁ。


「身体が黄色くなりそうね!」

 ドロシーが笑いながら料理をつつく。

「そう。それで、種をいっぱい! 取っておいたわ!」

 なんですと! まさかそのために?

「ありがとう、おばあちゃん!」

 ありがたくカボチャを食べまくるとしましょう。

 今晩のメニューは、ちゃんと蒸し、焼き、冷製、スープ、揚げ物、煮物、甘い物(デザート)と調理法が違うのも興味深い。鉄人の料理対決みたいだ。


「これだけ食感が違うと……いくらでも入るのが恐ろしいわ」

 シェミーの言葉に、レックス以外の全員が頷いた。案外男の子はカボチャが苦手だったりするんだよね。


「うぇっぷ。明日はカボチャはもう……無理だわ……」

「カボチャが襲ってくるさ……」

「いやあ、いくらでもいけます」

 余った料理を全て平らげると、アーサお婆ちゃんはドロシーのようにフフン、と鼻を鳴らした。

 もう入らない、とか言ってるカレンとシェミーだって、相当食べてたんだけどねぇ。

 ちなみにアーサお婆ちゃんが持ってきたカボチャ(緑色のやつ(スクウォッシュ))の種は小さな麻袋に2/3ほど。一体いくつのカボチャが採れるのやら……。


 やっと食事でのエネルギー補給ができて満足した。お腹だけ見たらゴブリンみたいになってるけど、誰も指摘しないからスルーしよう。



【王国暦122年3月4日 20:38】


 夕食後は軽く皆の魔法の練習を見る。

 サリーは私が不在だった間もずっと『練る』練習をしていたようで、保有魔力量が格段に増えていた。本来は練るだけでは魔力総量は上がらないんだろうけど、ギリギリまで魔力を使って練ったのだろう。属性魔法は発動前の状態を維持するのは、室内では危険だったためにやらなかったけれども、あっさりと初級の壁は越えてしまいそう。ミネルヴァが聞いたら落胆しそうな才能だなぁ……。


 アーサお婆ちゃんはと言えば、ついに『道具箱』の習得に成功した。

「そうね、何でも入るわ!」

 手当たり次第に色んな物を入れては出して、キャッキャッ言っている。それを見るドロシーは顔こそ余裕で微笑ましく見ているけど、もう追いつかれたのか、と内心は穏やかではなさそう。

 レックスは、『練る』練習をしていたお陰か、『殻』が安定してきた。もうちょっと安定すれば『道具箱』習得は近い、と励ましておいた。


 何故か一緒になって練習しているカレンとシェミーも、『練る』ことによって相当な魔力アップが図られている。魔力総量は、それほど増えていないみたいだけど。限界まで魔力を使うことでの魔力総量向上には限度があるのかしらね?


 コイルたちには『練る』方法を秘匿としたけれど、このまま秘匿しておくのがいいのか、公開した方がいいのか、ちょっと悩むところではある。あまりに簡単に見かけの魔力量が上がってしまうから。管理方法や教育が行き届くなら公開してもいいと思うけど、現段階では戦略兵器の量産に匹敵する危うさだと思うし……。

 サリーには近日中にぶっ放しにいこう、と言って、顔がパアアと明るくなったところで、就寝時間となった。



【王国暦122年3月4日 23:11】


 女子トークを数分した後にドロシーが寝入ったのを確認すると、今夜も魔法感知の網を広げてみることにする。

 東側にあるタロス三体を基準にして、真北に延々と探っていく。


 延々。

 まだまだ。


 と、もの凄く遠くに赤い点があるのに気付いた。方角的にはロンデニオン西迷宮に違いない。

 その点を引き寄せるように、意識を近づけていく。


と。


「おっ    (おっ)

 グラスアバターの中にいた。

 あれ、何か喋ったことと聞こえることの(タイムラグ)がある感じ……。


――――魔法スキル:召喚LV6を習得しました(LV5>LV6)


『お帰りなさい、マスター』

 めいちゃんの声がする。あれ、スキルLVが上がったからか、タイムラグがなくなった? それとも馴染むまでに時間がかかるとか?

「ただいま。様子はどう?」

『………………対象を指定してください』

 ああ、人間じゃなかったっけ。

 今の私はカボチャで満たされているから、ちょっとのことではイライラしないのだ。


「私が不在の間の、迷宮入り口付近の様子を教えて」

『……了解しました。……マスターが迷宮を離れた【王国暦122年3月2日 20:29】より現在時刻【王国暦122年3月5日 0:12】までの間、迷宮入り口への物理的、魔法的接触はありません。……入り口より周囲二百メトルに侵入したのは合計十二名、うち八名は現在も常駐しています。……対応しますか?』

「常駐している連中の想定危険度は?」

『……迷宮施設への破壊行動を取らない可能性が八十パーセントです」

「放置でよろしく」

『……了解しました』

 様子見か、グランドオープンにありがちな初物好きだろう。これで『入場は抽選でーす!』とかやったら発狂しそうだな!


「人工魔核の残エネルギー量を表示せよ」

『……了解しました』

 ディスプレイを見ると、五十五パーセント、と表示されている。たった二日間で十五パーセントも消費しちゃってるのか。さすがは初期モードということか。


「第一階層、北西、南東、南西エリアの工事の進捗状況を報告せよ」

『……了解しました。……指定のエリアは迷路まで完成しています』

「第二階層南東、南西エリアの工事進捗状況を報告せよ」

『……了解しました。……南東、南西エリアともに迷路まで完成しています』

 第二階層北西に関しては、強度が確認できるまで放置。迷路の設営くらいなら大丈夫だと思うけど、魔法とかで余計な力が掛かると不安なんだよねぇ。


「魔物培養、第一階層への配置について報告せよ」

『……了解しました。……現在、初期モードにて稼働中、()()されたゴブリン、及びワーウルフは順次第一階層に送り出し、配置を行っています。……現在、過密状態にあり、共食いが発生しています』

 へぇ……。そういえばウィザー城西迷宮でも、ゴブリン同士は戦ってたっけ。あれがある意味自然な状態なのかな?


「ワーウルフも共食いが始まってる?」

『……共食いをするように設定してあります』

 ああ、そういう設定ができるのか。ウィザー城西迷宮の管理プログラムが、めいちゃんと同じものだとすると、故意にワーウルフの共食いをしないようにしてるのかなぁ。


「第三階層、第四階層の魔物の配置について報告せよ」

『……了解しました。……壁面の工事に就いていた魔物は、各々所属の階層へ戻っています」

 ミノやオークは元通りってことね。

「第五階層、第六階層、第七階層、第八階層の魔物補充と配置について報告せよ」

『……了解しました。……現在、第五階層、第六階層、第七階層、第八階層の魔物配置、予備配置は規定の数になっています』

 怒った特級冒険者辺りが再度攻めてくるかもしれないから、いずれリニューアルは必要として……。今はこのままでいいかな。


「第一階層の北西、南東、南西、第二階層の北西、南東、南西の壁面処理をめいちゃんが施工することは可能か?」

 迷路配置は終わってるけど、防護処理とか耐魔法処理とか、その辺はしてない。

『……可能です。……現在人口魔核の魔力残量は五十五パーセントあります。……第一階層、第二階層の壁面処理に約五パーセントずつ消費されると予想。……現モードのままですと約百二十時間後に人工魔核の魔力残量は十パーセントを切ると予想されます」

 うーん、それまでに魔力補充に行きたいなぁ。でも何だか後処理が沢山あってポートマットを離れるのも難しいし……。折衷案でいくか。


「現モードは、現時点より四十八時間継続。その後は通常モードに変更」

『……了解しました。……了解しました』

「第一階層の北西、南東、南西、第二階層の北西、南東、南西の壁面処理を開始」

『……了解しました』

「壁面処理終了後、第一階層の全エリア、第二階層の南東、南西エリアを開放」

『……了解しました』

「魔物培養は第一階層、第二階層に重点を置いて、第一階層、第二階層に等分に配置せよ」

『……了解しました』

「それじゃよろしく、また来ます」

『……いってらっしゃいませ、マスター』

 よし、本体に戻る………………………………………………。


 戻った。

 やけに時間がかかった。距離を感じさせるなぁ。


【王国暦122年3月5日 0:22】


 ああ、時間とか思っちゃったからだ。


【王国暦122年3月5日 0:22】


 く……なんて融通の利かない……。

 頭痛が酷いし………。

 遠距離でのチェンジは、かなり魔力を食う作業なんだな……。

 タロス操縦時と同じように、チェンジ中は本体の魔力がほとんど回復しないみたいだ。

 これは注意しなければ……。頭痛いし……もう寝よう……。



―――発動キーワードを『時間表示』に変更できたので【王国暦122年3月5日 0:35】あっ。解消できたはず……。





最近スーパーに行くたびにメイトーのカボチャプリン(三連)を買っています。もう少し繊維が残っている感じの方が好きなんだけど……。

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