論争4
内容も客観的に見たらやばいなあ。
太朗は肩を落とした。
「こんなくっそくだらない内容でお金を貰おうだなんて、るかわって作者は舐めてるとしか言えないわ」
「いえ、確かにこのページはそうですけど、ちゃんとした話なんですよ!」
「じゃあ説明して見なさいよ」
太朗はコホンと空咳をした後、活弁士の格好に早変わり。笏を持ったまま目を閉じて続けた。
「え〜この物語というのはですね〜、一見どこにでもいる普通の高校生ライトくんが、道端に落ちていた謎のステッキを拾ってしまうところからストーリーが展開されるものでありましてな、そのステッキには特殊な力が備わっており、身近にあるものを巨大化させてしまうものでごさいました。ライトくんはうっかりその能力を使って地面にいるアリを巨大化させてしまいます。さあ大変、そこで空から現れたのはステッキの所有者であるキラランちゃんでございました〜」
太朗は付け髭を取った。
「そっから先は?」
「まだ見てないのでわからないです」
「もうね、その時点でつまらないものだってわかるのよ」
優香は笏を奪う。
「まずね、主人公の八割近くが男子高校生。それも[普通]の。舐めてんの? 飽和状態であることに何の抵抗もなく男子高校生にする理由は何?」
太朗はもう一度付け髭を手に取ったが、優香の笏を喰らった。右手を押さえ、続ける。
「読者は男子高校生が多いんですよ。だから感情移入しやすいってことだと思います」
「そうね、あんな下劣なもの男子高校生しか読まないでしょうね」
太朗は頬をふくらます。
「私はね、この普通の高校生って設定が嫌なの。あのね、こいつら普通とか言ってるくせに、やけに体力があったりやけにモテたりしてるじゃない。全然普通じゃないのよ」
「ま、まあ多少は……」
「普通だったらあんたみたいに顔面偏差値50、成績も平均点ジャスト、平凡な名前にしてみろって話よ!」
「ちくしょー! 平凡な名前で悪かったな!」
太朗は机を叩いた。
「では問題。普通の男子高校生は日頃どんなことを考えているでしょうか。原発が嫌いそうな名前をしている太朗君、答えてみなさい」
突然の優香の問いに太朗は固まる。これは何が正解なのだ。言っちゃっていいのか? 正直に言っちゃっていいのか?
「エ……エロいことです」
「大正解」
いつの間に用意したのか、くす玉が割れていた。
「普通の男子高校生って、勉強よりも運動よりもエロいことが頭の大半を占めているのよ。その前提で話を聞きなさい」
太朗は頷く。
「まずこんな奇乳の……なんて名前だったっけ」
「キラランちゃんです」
「キラランちゃんのね、ことを見てDQNネームの主人公の股間が疼かないはずがないのよ。間違いなくエロいこと考えてます。なんかエロいハプニング起こらないかなーって考えてます。下劣な読者もそれは一緒」
図星でございます。
「でね、必ずといっていいほどエロいハプニングは起こります。しかも何の脈絡もないことが多い。わざわざこのシーンが書きたかったがために数ページも費やすだなんて、出版、印刷業界まで舐めてんのよね」
まあこれまで二百冊以上読んでいた太朗にも思い当たる節はあった。
「ちょっとズレたけど、男子高校生はそういうハプニングが起こったらもう股間が黙ってないわけ。つまりSEXに興じるのが自然の流れなのよ。間違っても『あの女なんか嫌いだ。乳がデカいだけで性格が最悪だから』なんてセリフは出て来ないのよ」
あの優香先生の口からSEXという単語が……太朗は興奮してしまった。
「それなのにSEXもせず恋愛に疎いふりばっかしやがって。一対一ならまだしも、ハーレム状態になっても好意を持たれてることすら気づかない作品だってある。あのジャンプで連載してた18禁漫画とかな」
あれは僕も同意。でも好き。
「どうせならSEXまで書けや根性無しが! 少年漫画と違って規制もないだろに!」
ああ、優香先生熱くなってるなあ。SEXかあ。
太朗は優香のスーツの上からでもわかる巨乳に目を向けた。ラノベ基準だとCカップくらいだけど、実際にはFはありそう。
「何見てんのよ。エロいこと考えてたんじゃないでしょうね」
股間の動揺は隠せなかった。
「ったく、しょうがないわね。軽くSEXしとく? 男女が一つの教室で二人きりといったらSEXするしかないじゃない」
ええええええええええええええええええ