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臆病でもいい、堅実に育って欲しい

大失敗。コピペミスで第六話が全編この話の前に挿入されていました。

現在は七話のみの状態です。

話の筋は変わりませんが申し訳ありませんでした。

 昼食の後、再び迷宮第三層に転送陣で舞い戻ったレイルは何度か同じ様に先輩探索者に引率されて探索をしているチームとすれ違ったりしながらも、休憩を挟みつつ二十回程の戦闘をこなした。

 最初の内はまだ同時に襲い掛かって来るツインインプの動きに対応するのに手間取っていたが、常に最初の一手は同時攻撃であることに気づいてからは、ヘレナが複数の敵を相手にする要領。

 なるべく敵を盾で擬似的に二手に分け、攻撃をいなしながら一体に集中し初撃で一体倒す戦法を徐々に、本当にゆっくりとではあるが自分の物にして行った。


 そしてまたもう一組のツインインプと遭遇する。

 レイル達に気づき駆け出す怪物達を、自分を頂点にした三角形になる位置を取りながら盾を構え、剣を持つ手を思い切り引く。

 ツインインプ達の動きに完全に対応したレイルの眼ははっきりと飛び掛る二匹を視認し、左手側の一匹を思い切り盾で殴り飛ばし、その勢いを利用して痛烈な突きを無防備に飛び掛り隙だらけな片割れに放つ。

 全身青く、手足がガリガリにやせ細った乳児のような身体の胴体をすっかり使い慣れた剣が貫く。


「ギギッ!」


 一声上げて即座に死に至る怪物。レイルは慎重に周囲を探りながら剣の血を払うと現れた結晶石を拾い上げる。

 その姿を見て、ヘレナは満足げに頷く。


「形になってきたじゃない。ただ、盾を攻撃にも使うのは敵の体格と重さにも気をつけてね。後、事前に出現する怪物の情報を集めておいて、小さいけれど重量のある相手には使わないようにする事。見た目に惑わされずにその手段を使える相手かどうか見極めるの」

「はい。ヘレナさんのラウンドバックラーなら中型の怪物の頭を抑えるくらいは出来ますか?」

「ん。そうね、見た目のままの相手だったらできるわ。四足型モンスターの噛み付きを横合いからガツンとやってやったり程度なら。貴方のスモールシールドのサイズだとちょっと難しいわね。その分小型の敵をあしらうのは貴方のみたいな方が楽なんだけど」


 レイルのスモールシールドは手首を中心に上腕の半分ほどを守る程度のサイズで、ヘレナのラウンドシールドはそれよりも倍近く大きい。

 確かにコレは使用法にも多少の差が出ても仕方ないだろう。

 そんな短いやり取りの後、しばらくしてセレナが足を止めた。


「どうしたんですか?」

「ん……いや、なんでもないわ。進みましょう。ただし、慎重にね」


 レイルの問いかけを受け流すヘレナの声色におかしな所はなかった。

 しかし今まで一度も理由なしに急に足を止める事がなかったヘレナが足を止めたことに違和感を覚えるレイル。

 行く手に恐らく何かがある、そう感じながら彼は足を進める。そしてしばらく進んだ先で感じた違和感。

 微かにレイルの耳に届くのはツインインプの鳴き声だ、だがそれに違和感を感じたようだ。

 しばらくその場で耳を澄ませてから、レイルはヘレナに問いかける。


「あの、ヘレナさん。もしかしてこの先に二組以上の敵が居ます?」

「そうみたいね」

「さっき足を止めたのはそれですか。さてどうするかなぁ。ヘレナさんならどうします?」


 何気なくといった風にヘレナに声を掛けるレイル。だが帰ってきた答えは彼の期待していたような物にはならなかった。


「自分で考えなさい。私は指導はするし命の危険がありそうな時は助けるけど、貴方とチームを組んでるわけじゃない。進むか、引くか。一番大事な判断を他人に求めてるようだと単独探索者にはなれないわよ」


 突き放したような言葉に一瞬レイルの顔は色を失うが、盾を持つ手を顔の前まで持っていき、トントンと額を叩き口を開く。


「そうですよね。自分で決めなきゃ……」


 そういってから深呼吸をしてからこつこつと数回踵で音を鳴らすと、セレナの背後に向かって歩き始めながら言った。


「戻って別の道を行きましょう。今の僕はようやく一組の相手をするのに慣れてきた所。複数のツインインプの群れを相手に出来るとは思いません」


 セレナは黙ってその後に続く。

それから通路の分岐がある所まで戻り、改めて探索をし、戦闘回数が再び二十を超えてから数えなくなってしばらくしてから転送陣へと戻り、外に出た。

 そして地上に戻ったところでようやくヘレナはレイルに引き返したときの動機を聞いた。

 ヘレナの眼を見ながらレイルは答えた。


「ヘレナさんの助けなしでは勝てないと判断しました。そして、それを頼みに進むようではここを攻略した後生き残れない。そう思ったから引き返しました」


 ヘレナはその答えを聞き、何も言わずにレイルの頭を撫でた。

 その日はその後換金所で結晶石を大銅貨三枚に換えて別れたのだった。


 こうして第三層まで進んだレイルだったが、残りの八日間で初級迷宮を攻略しきることは出来無かった。

 初日に言明されたとおり、一月の後は六日に一度しかヘレナはレイルと迷宮探索を共にすることなく、多くの時間をレイルは一人で訓練することになるのだった。

 ただ、それでも指導は義務であるからか、ヘレナは休日をレイルと合わせその日は相変わらず剣と盾の使い方を教えている。

 そして、次の階層に進む時は前もってヘレナに申し出て、探索に同行する日に潜る事。

 また、もし階層が進んだらまた数日の間は集中的にレイルと迷宮探索を共にすることを約束した。

 レイルはいまだ初級迷宮すら踏破できず、一人前と認められたわけではなかったが、それでも一人で歩けるひよこ程度にはなったと認められたのだった。

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