第七話 留守
かさっ。
かさっ、かさかさっ。
各々が黒い箱から引いた紙でできたくじを開く。
紙のかすれる音が緊張感溢れる(?)
部屋に響いた。
「――あ。ハズレ」
声を上げたのは――刹。
留守に着くのは、刹に決まったようだ。
「うっひゃははははは!やはり
最後に勝つのは俺のようだな!」
「泉、笑いすぎ。皮肉か」
「やったぁーーー!!!ハワイ!!」
「お前もだ聖弥」
佳澄はクールな分ツッコミに忙しい。
数人が盛り上がっていたところだった。
そこに突然。
「――あのー・・・」
神がすーっと手を上げる。
「んー?どした神」
そして申し訳なさそうな顔をすると、
神は小さな声で言った。
「僕、やっぱり刹と一緒に留守番してます」
「・・・・へ?」
神を除いてその場に居た全員が目を丸くした。
「あー・・・なんでまた?」
泉は困ったように自分の頭を掻きはじめた。
「だって、留守番・・・刹一人じゃ大変ですしね」
当たり前のことを笑顔で言う神。その純粋っぽさに
さすがの泉も圧倒されてしまった。
「あのなぁ・・・」
「・・・・バカ言うな。お前は行って来い」
その神の姿勢を見かねた刹は即座に言った。
「でも・・・」
「もうガキじゃねんだよ。子守はいらん」
まるで親子のような会話をする二人。
反抗期(?)の刹は神の優しさを
きっぱり振り払った。
「ったく、せっかくの神の好意
なんだからよ、やんわり受け取れってんだ」
煙草を吸いながら泉が口を挟む。
「クソオヤジはどーせ『旅費が浮く』とか
考えてただけだろが。下心丸出し野朗が」
「そ、そこまで言わんでも・・・
(当たってるけど)」
「まぁ、とにかく!神が気ぃ使って
俺とここに残ることはしなくていい!
クソオヤジ達とグアムでも行ってこい!」
「ハワイだよ・・・」
刹の自身に満ち満ちた訴えに泉が突っ込んだ。
「う、うっせぇ!・・・・じゃ、じゃあ神、
そーいうことだから!」
「そうそう。神がいないと楽しくないって」
「しかしマジで、留守には泉が
残るべきだけどなぁ・・・」
佳澄が冷たい視線を送る。
「え、俺・・・・?も、もうくじで
決めちまったしなぁ〜」
佳澄と聖弥も自分を旅行へ手招きしている。
その事も考えながら神は眉間にしわを
寄せ、腕を組んでしばらく考え込んでいた。
数秒経って。
頑なに施設に残ろうとした神だったが、
とうとう結論を出したようだ。
「――・・・・じゃあ、僕もご一緒します・・・」
その言葉に泉、佳澄、聖弥、そして刹も、
ニッと笑顔を浮かべると、思い思いに
神に抱きついたり、頭をなでたりした。
刹もほくそえんでいると、
泉が自分の方へ歩み寄ってきた。
「んー。じゃあツキが無かった敗者くんには
施設長の仕事メニューを書いたメモをあとで
部屋に置いといてやるからよー。よく読んどけ」
「・・・・どーせ誰もこねぇのに、仕事なんてあんのか?
留守番つったって、飯食って寝るだけだろ」
刹がうっとおしそうな顔で言うと、泉が
人差し指を差し出して軽く左右に振った。
「甘いなぁ!」
「何だよ・・・」
「残念ながら明日は、一年ぶりの
新入居者が現れるのだぁ!」
自慢気に言う泉。刹はあっけにとられて
しばらく黙ったまま口を開けていた。
「分かってんなら、何で旅行に行くの
明日からにしたんだよ・・・・・?」
「ぎくーっ・・・」
分かり易いリアクションを取った泉は、
刹の背後からなにやら黒いオーラ(?)が
出ていると瞬時に理解した。
「め、面倒くさいとかじゃないって〜!
ただ今日当てたから行くのは断然
明日かなーって思って・・・あ、あぁ・・」
「ちょっと黙っとけ、歯、食いしばれ」
「おやめくださ・・・ひぃ、ぎゃーーーーーーー!」
次回からハワイ編すたーと。
お楽しみに。