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7. 議会

 部屋の中にはすでに、初老の男性四人が椅子に座って談笑をしていた。ルトナーの入室を認めると、立ち上がり皆一様に頭を下げた。

それに答えることもせずルトナーは真っ直ぐに一番奥に置いてあるひときわ豪華な装飾のされた椅子に腰を下ろす。国王が席に着いたのを見て他の四人もそれぞれの席に着く。

最後にルトナーと一緒に部屋に入った、宰相のローンが国王の後ろの少し離れたところに置いてある椅子に着くと、部屋の中の全ての席が埋まる。


「今日の議題は…」


「陛下。今日は、レダ地方から王都へ至る道の整備の案件が上がってきておりますぞ」


真っ先に声をかけた男はアルタイ家の代表、ジェン=アルタイ。

ルトナーの言葉を遮ることなど不敬以外の何物でもないのだが、気にする素振りすら見せない。こんなことは即位してから数えきれない程あり、今更怒る気にもならないルトナーは無言で続きを待つ。


「レダ地方は我がアルタイ家の領地。わたくしめにお任せ頂ければ完璧に整備して御覧に入れますよ」

かなり芝居がかった言い様に、ルトナーは内心ウンザリしながらも


「ではそのように」


とだけ答えた。

その他にも色々な議題が持ち上がったがそれら全てが議員達の連携により国王のみが局外者として進められて行く。


(これが私欲のためじゃなかったらむしろ褒められるべき議員達なんだけど)


着々と片づけられていく議題を大して興味の無いように見せかけながらも内容を取りこぼさないように覚えていく。あとで信頼できる手勢にどのように議員達が私腹を肥やしているのかを、調査させるためだ。議題が出尽くしたころ、


「時に陛下。即位されてから半年が経ちましたし、そろそろ国王認定の方もしていただかないと」


声をかけてきたのはストラス=ゼスト。四人の議員達の中でも一番の年長者である彼は、たっぷりと脂肪のついた腹回りをさすりながらルトナーに持ちかける。


「ああ。そうだね。そろそろフランツェンや、大学生の畑を回ってみようかと思っていたところなんだ。」


ルトナーは突然の向けられた矛先に動じることなく最大限の威厳を保ちながら答える。今朝すでに大学の畑に行ったことはもちろん明かさない。ルトナーの言葉を聞いたストラスは多少慌てたように早口に捲し立てた。


「いやいや。ご多忙な陛下に全ての花を見ていただく必要はありません。私どもが国王認定にふさわしい


と思える花を見つけてきますので、陛下にはその中から選んでいただくのがよろしいかと」


(これが予備選考か。彼女の話が本当なら裏で金銭が絡んでいるはず)


予想通りの返答に内心苦笑いをするルトナーだが、それを表には出さず、


「いや。何しろ普段の案件事項は優秀な議員達が十分に働いてくれているからね。自分の責任くらいは果

たさないと、精霊達に申し訳ないと思って」


極上の笑みを張り付けてストラスの要求を躱す。


「しかし陛下。フランツェンは大学生まで含めると四百名程度居りますし、花の咲く時期も決まっていることを思うとすべての畑の視察は現実的ではないかと思いますが」


きっぱりと言い切ったストラスにルトナーがさらに説得を試みようとしたとき、後ろでローン宰相が椅子から立ち上がり、


「陛下がなさると言っているのですからこれ以上の議論は不要かとおもいますが」


とストラスを窘めた。


「しかし…」


猶も言いつのろうとしたストラスにローンは、

「どうしても出来ない様だったらまたその時に新たな方法を考えれば良いではないですか。全ての議題も

出尽くしましたし今朝の会議はここまでに致しましょう。いいですね陛下?」


さっさとまとめに入ったローンにルトナーは


「ああ。皆もご苦労だった」


と頷いて議会の閉会を告げた。


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