59. 再会
次の日は打って変わっていい天気で、まさに小春日和ともいえる陽気だった。半日で終わった授業に、リャナンは学校の廊下を早々に帰宅するために進む。リトルアとは昨日、気まずく別れたのが嘘のようにいつも通り休み時間にくだらない話をして過ごすことができた。お昼も食堂で、二人で食べたし、寮生活のリトルアからは学校生活を快適に送るための貴重な情報が混じっている。曰く、クリサンセマム学の先生のテストは毎年同じで過去問をもらえそうだとか、誰と誰が揉めて触らぬ神に祟りなしだとか、とにかく彼女の情報は学生には重要事項が盛り込まれている。通学生のリャナンは何度もリトルアの情報に助けてもらった。そして、リトルアの情報によれば、認定庁からクルティーがやってくるということだが、リャナンにもリトルアにもあまり関係ないことなので、その話題は長くは続かなかった。
リャナンが玄関までたどり着くと、
「リャナンさん」
と、後ろから声がかけられる。リャナンが驚いて振り返るとそこには昨日もあったカール=ゼストが手を振りながら小走りで近づいてくる。その態度にリャナンは驚きその場に固まる。
「よかった。追いついた。こんにちは、リャナンさん。今日はもう終わりですか?」
にこやかに話しかけてくるカールにつられてリャナンも生真面目に「今日の授業は午前中だけなので」などと答えた。
「そんなに硬くならなくても良いですよ。帰るところならちょうど良かった。お時間あります?僕も今
日は、ここに報告で仕事が終わりなんです」
畳み掛けるように言われてリャナンもすっかりカールのペースに乗っている。
「時間は大丈夫ですけど。何かありましたか?」
カールが自分に用事などデメルングになにかあったのかと勘ぐってしまう。
「深刻な話じゃないんです。ただちょっとリャナンさんとお話してみたいなと思って。昨日のこともあるし」
昨日のことと言われて途中で帰った自分の行動を思い出す。考えれば非常に失礼なことだった。
「昨日は申し訳ありませんでした」
自分の非に思い至りリャナンは慌てて謝罪をする。
「別にリャナンさんが謝ることではないですよ。最近めっきり日が落ちるのが早くなってしまいましたからね。暗くなりきる前に帰れましたか?」
「ギリギリ大丈夫でした。ご心配ありがとうございます」
立ち話へと発展しそうになり、リャナンは会話をしながら続きを話す場所を考える。
「カール様、立ち話もなんですし、移動しませんか?」
通学生の大半が貴族で、昼食は食べずに学校を出るためリャナンが帰宅する頃には玄関に人通りがなくなるとはいえ、学校内で部外者と長く話すことは得策ではない。
「ああそうだね、ごめん。どこか手頃な場所あるかな?」
カールに聞かれてリャナンはとっさに思いついた店に案内することにする。リャナンが先立って歩き、その間は、特に会話もなく歩くだけだ。学校の隣のリャナンがいつも朝ごはんを買うお店に連れだって入った。昼から夕方は喫茶店も兼ねているし、学生が勉強することも想定されているので、静かな雰囲気で会話する分にはもってこいの場所である。