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54. 外出

 しばらくして、ひとしきり文句を言って落ち着いたのかルトナーは小休止とばかりに目の前に置かれた自分のお茶に手を付ける。


「ということは、ゼスト家の権限は分家とかに移るということですか?」


議会の運営等は義務教育程度の知識しかないリャナンがどうにか聞く。

フェローニア王国では議員は一部事情を除いて本人が死ぬまで議員を務め、死後は直系の人間、大抵は長男が新たな議員になる。四家の力関係は対等とされそこに年齢や議員歴の長短は反映されない。議会で決定したことは、最終的に国王の承認を以て国政に反映される。

この国に貴族と呼ばれる身分の家はニエル家・ゼスト家・ウエル家・アルタイ家の四家であるが、それぞれの家に議員夫婦とその直系からなる本家と議員の兄弟等の傍家がある。傍家の多くは領地の管理等を行なっていて王都には住んでいない。当然同じ苗字を冠していても本家に一番権力がある。


「まあそうなるかな。すんなり行けば、だけど」


‘すんなり行けば’の部分に敢えて強い口調で言いルトナーの眉間に皺が寄る。

「周りの後押しと称して他の議員達が結託してアルミンを押してきたら対抗するのは大変そうだね」


続けて出た言葉には最早諦めの色が混じっていた。


「国王陛下なのにままならないこともあるんですねぇ」


リャナンがしみじみと呟くと


「ままならないことばかりだよ」


と苦笑いでルトナーが応じる。リャナンは猶も言葉を重ねようとしたが、これ以上は余計な口出しになると思い黙る。ルトナーもこれ以上愚痴るつもりもなく会話は途切れて雨がガラスを叩く音だけが室内に広がっていた。しばらくは無言で、二人ともお茶を飲んだりしていたが、不思議とお互いに無理に会話を探そうとはせず、黙っていても居心地の悪さは感じない。


「さて、せっかく来てくれたのに僕の愚痴ばかりっていうのも悪いから出かけようか」


唐突にルトナーは立ち上がリャナンを促す。促されるままリャナンは立ち上がりルトナーの後をついて部屋を出た。ルトナーは別の場所に控えていたローンを呼びつけて話をつける。ローンは呆れた顔をしたが、すぐに動き出してリャナンの視界から消えていった。ルトナーの後をリャナンが後を追うように歩くと、城の入口に到着する。


「あの。今更ですが、どこに行くんですか?」


本当に今更だと思いながらリャナンは先を歩くルトナーに訪ねた。


「着いてからのお楽しみってことで」


振り返りながらルトナーがそう言うと、城の入口には馬車が横付けされていた。驚きつつも、ルトナーにエスコートされてリャナンは馬車に乗り込む。ルトナーもあとに続いて乗り込むと、狭い空間のせいで今までにないくらい近い距離で向かい合っている状況にリャナンは理由もわからずドキドキした。ルトナーは走り始めた馬車から流れる風景を熱心に見ていた。リャナンもルトナーに倣って外の風景を追う。リャナンは馬車の進行方向と同じ側に座っているため、流れてくる景色を追うだけでも十分楽しい。学校の前を通り過ぎてリャナンの家とは逆方向に進む。この先は官公庁と貴族街がある。いまいち行き先がわからないが一度はぐらかされているので改めて聞く気も起きず黙ったままで馬車に揺られている。


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