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53. 衝動

「なんでそんな顔するの?」


ルトナーが心底わからないという顔をする。


「自分でもわかりません」


リャナンが素直に答えると、ルトナーが、


「君と友達になれてよかったなぁ。って今、思ったよ」

今度はリャナンの方が、意味がわからないという顔をルトナーに向けた。


「私は自分が嫌いです。すぐ感情的になるのに外に出すことはよっぽどにならないとできないし、その

時にはとんでもない言い方をすることもあるし、普段は代わりに友達が怒ってくれることさえあります。でも、怒ってくれた友達に怒らせた相手のフォローとか入れちゃっていい子ぶってみたりとかしちゃうんです。自分がもう一人いたら絶対自分とは友達にはなりません」


一息に言い切ってからリャナンは、またやってしまったと後悔する。まさに今自分で言ったことを図らずともルトナーの前で実践してしまった形になった。


「でも、人に寄り添えるし、気も使えるじゃない。さっき僕がゼスト家との謁見の話をした時、敢えて

そこには触れないでいてくれたでしょう」


自己嫌悪を見せるリャナンにルトナーはやさしく語りかけた。


「それはルトナー様の仕事に口出す権利なんかないですよ。それは陛下だからじゃなくて、父の仕事も母の仕事でも幼馴染の仕事でも同じです」


まださっきの暴走が尾を引いているリャナンは目の前に置かれたお茶を一口飲んでから、ゆっくりと口を開く。こういう時は慎重に言葉を選ばなければ恥の上塗りになりかねない。

数秒前とは打って変わって慎重に話しだしたリャナンにルトナーは、


「そういう価値観も大切だよね。僕なんか今は他人の仕事にアラを見つけて追求することばかりが仕事になってしまっているけどね。さて、ゼスト家の謁見内容だけど聞いてくれる?」


「私で良ければ。っていうかそんなこと簡単に話してしまっても良いのですか?」


リャナンは自分が敢えて触れなかったことにいきなり話が戻って動揺するが、先ほどの暴走したときよりは幾分頭が回るようになっている。


「正式な申し込みだったから議事録も残ってるし聴かれて困るような話ではなかったけど、僕が腹立たしいから誰かに聞いてもらいたいの」


怒っている時の擬音がムカムカとかではなくプンスカというようなモノの方が似合いそうなルトナーの様子にリャナンは呆気にとられながらも少し身を乗り出すことで話を聞く意思を見せる。それを正しく感じ取ったルトナーは


「今日来たのはこの前更迭したストラス=ゼストの長男アルミン=ゼスト。父親の更迭で空位になったゼスト家の議員の席を自分に渡せと言ってきた」


簡潔に事実だけを述べるルトナーにリャナンは何が問題だかわからないという顔をする。親の後を継ぐのは至極真っ当な気がする。


「なんで、更迭をした男の影響を議会に残さなければいけないんだ。本人の資質以前にありえ得ない」


怒り方がどこか可愛らしいが、本人はいたって真面目に怒っている。リャナンは口を挟むことができずに、ただ黙ってルトナーの話を聞いていた。


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