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52. 衝撃

扉の前に立ったルトナーを見てリャナンは一度席を立とうとするが、ルトナーに身振りでそのままで良いと表されて結局中途半端に椅子から立ち上がっただけで再び腰掛けた。リャナンが腰の定まらない動きをしているうちにルトナーはリャナンの向かいの椅子に座る。ルトナーが入ってきたのと同時にローンは「では私はこれで」とリャナンに言い置いてメイドがルトナーの前にお茶を置くがルトナーはメイドには一瞥もくれないことにリャナンはやっぱり驚いた。


「せっかく約束守って来てくれたのに急な来客が来てしまって」


座って早々話し始めるルトナーに


「いえ。陛下もお忙しいのは重々承知しておりますから」


とよそ行きの言葉でリャナンが応じれば、ルトナーは途端に顔を歪ませた。


「言葉遣い、普通でいいから。それと規定の仕事は終わってたんだよ。ただ急に謁見の申し込みがゼス

ト家から入っただけで」


「普通で、と言われましても、国王陛下に対しての普通はこれだと思うのですが」


リャナンは敢えて自分への言い分のみ答える。ゼスト家、すなわち今日も学校にこなかったアリアラの家からの謁見の申し込みの話はゴシップとして大いに興味をそそられたが、国王の仕事内容に首を突っ込むことは自重する。


「友達としては普通じゃないじゃないか」


ルトナーのすねた口調の返事にリャナンは呆気にとられてしまった。本当に目の前のこの人は国王陛下で自分より年上の男の人なのだろうか。


「ずいぶんと友達というカテゴリーを気にしますけど何かこだわりなんですか?」


だいぶ失礼だと思いつつもあまりのルトナーのこだわりにリャナンは疑問を素直に口に出してしまう。すると今度はルトナーの顔はみるみる赤くなって、それをごまかすように机に頬杖を付いて目線を窓の外に向けると、


「だって初めてだったんだ」


とボソリと呟く。その様子にリャナンは発言の意味が理解できないと黙って続きを待つ。


「友達っていうカテゴリーの人間が周りにいるのも、国王だの皇太子っていうことを相手が知らないで喧嘩したりとか仲直りしたりとかそういうの」


ぼそぼそと話を続けるルトナーにリャナンは衝撃を受ける。今まで、国王というのはいつでも人に囲まれているという勝手なイメージがありだからこそなぜ自分との友人という関係に固執するのかがさっぱりわからなかったのだ。呆然として何も言わないリャナンを見てルトナーは、


「こういう話って普通はしないもの?もしかして呆れた?」


早口で質問をする。


「普通…。は人それぞれなのでなんとも言えませんが、呆れたんじゃなくて、驚いた、が正しいです。陛下は、いや、ルトナー様はいつでも人に囲まれているイメージがありましたから」


リャナンが正直に言えば、


「人に囲まれてたって周りはほとんど敵みたいなものだし、気が抜けない。子供の時は抜け出すことしか考えてなかった。逃げられないって分かってからはつけこまれない様にする努力をした。今は、相手をねじ伏せることしか考えてないかな」


淡々と言うルトナーに何故かリャナンの方が辛くなり無意識に胸を抑える。顔を引き締めないと泣き出しそうだ。


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