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47. 雑談

リャナンは勧められるまま椅子に座る。そんなリャナンの向かい側にルトナーも腰掛けた。まるで見ていたかのようなちょうど良いタイミングで、メイドがティーセットを持ってきた。ルトナーはメイドの動きなど全く気にしていないようですっかり話をする体制になっているが、どうしても他人に世話をしてもらうことに慣れないリャナンはついメイドの動きを目で追ってしまう。メイドの顔に至ると、それはさっきもリャナンの衣装に対しても世話をしてくれた女性だった。リャナンが気づいたことにメイドも気がついた様で、ニッコリと微笑み会釈する。つられてリャナンも、


「何度もありがとうございます」


と挨拶した。


「お気になさらず。仕事ですから」


と、メイドは先ほどとは全く違う雰囲気で答えてセッティングを終えると「失礼します」と退室する。早速入れてもらったお茶に口をつけるとふわりとバラの香りが広がった。その香りに思わず目を細めていると、


「いつのまにウチのメイドと仲良くなったの?」


ルトナーが不思議そうに聞く。


「仲良くなったというか、お礼言っただけですよ」

なんてことのないようにリャナンが言うと、「お礼?」とルトナーはさらに疑問が深まった声を出した。


「ええ。そういえば、最初は、命令ですから。みたいな返しをされましたけど、城ではお礼を言わないのがルールなんですか?」


疑問を持つことが不思議だと言わんばかりにリャナンはやはり疑問の声を出す。


「ルールってことはないけど仕事にお礼はいわないかなぁ」


今度は考えるように言うルトナーに、リャナンは


「仕事してる人にお礼を言わなくていいっていうのは違う気がしますが。私事ですが、実家で接客して

て、やっぱりお礼言われると嬉しいですけどね。まあ、だからって何も言わない人に対して一言ぐらい言っていけ。なんて思いませんけど」


と一息に話すと、ルトナーはさらに、難しい顔をして考え込む。


「そんなに考え込むことなんですか?一言口から出すだけなのに」


苦笑いで、リャナンがさらに問えば、


「改まって言うのって、なんか気恥かしくなりそう。しかも考えてみたら彼らを個人で捉えたことないんだよね。制服着てたらうちのメイドみたいな。」


ルトナーの発言に少なからずリャナンは驚いた。


「陛下がメイドの顔を把握してないって、服だけ着た成りすましが、何かとんでもないことやらかしたらどうするんですか?」


「別に僕が顔を覚えてないだけで宰相のローンとかは全員覚えてるから問題無いでしょ。メイド同士も顔なじみだし、不審者が紛れ込んでも捕まえることは容易いよ」


あっさり答えたルトナーにリャナンはそれ以上何も言えなかった。メイドの顔を覚えるのは元々国王の領分ではないのだろうと思い直す。この城で、彼女たちはそれぞれの個ではなくメイドという集合体なのだろう。


「そういえば陛下。何かお話があったのでは?」


わざわざ呼ばれたからには何か用事があったのだろうと思いリャナンは話題を変えた。


私は、買い物した時にお礼を言う派です。

高校の時なんでわざわざお礼言うのみたいな疑問を友人に持たれて以来、自分が少数派だったことを知りました。

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