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45. 園遊会2

 声の方を見るとそこにはシックな白銅色のドレスを身にまとった五十代位の女性が怖い顔をして立っていた。


「そうですけど。何か御用でしょうか?」


相手の雰囲気に圧倒されつつも、ここでの恥は陛下への悪評ヘと繋がりかねないと、リャナンは身構えた。見たことはないが、ここにいるということはフランツェンなのだろう。名前さえ聞ければどんな花を作った人か分かるが、仮にも先輩相手にどちら様ですかとは聞けない。


「失礼。わたくし、エルナ=タウベルトと申します。この機会に、新国王陛下の第一号フランツェンであるアナタに挨拶申し上げておこうと思いまして。」


そう言いつつも、その場で仁王立ちしたままのエルナに押されながらも、


「それはご丁寧にありがとうございます。まだ、学生の身分で、フランツェン見習いではありますが、

このような場で先輩方にお会いできるのを非常に楽しみにしておりました」


と無難に挨拶を返す。リトルアがこの場にいたら、「昨日まですっかり園遊会のこと忘れてたのに」位のことは言われそうだが、今は居ないのでツッコミを入れられることはない。普段のリャナンを知っている人間でここにいるのは、アリアラぐらいなものだが、当のアリアラは一人ぼっち継続中で、先ほどの場所から一歩も動いていないのがリャナンの位置からでも見えた。

 挨拶を返したもののその後会話が続くわけではなくエルナはリャナンに品定めするような目つきで見続けたあと、聞えよがしにため息を一つついた。想定外の行動にリャナンは面食らうが敢えて言い返さない。リャナンの隣に立ったままだった、ルトナーは一気に気色ばんだ。周りは雑談を止めて様子を伺っている。


「花と同じでぱっとしない子ね」


続いた言葉にリャナンは更にびっくりし、何か気の利いたことを返さなくてはと思っても返す言葉が浮かばない。たった今、言われた言葉が頭の中でぐるぐると周り立ちくらみを起こしそうだ。周りの失笑も焦りを加速させる。


「何かデメルングに対して思うところがお有りですか?」


横に立っていた、ルトナーが威圧感たっぷりにエルナに聞き返す。


「文句というか、あの花では庭の主役にはなれませんわ。そんな花を諸外国に輸出する等この国の価値が薄れてしまします!」


エレナはルトナーの威圧感に押されることなくまくし立てる。最初の落ち着いた雰囲気は残っていない。エルナの豹変ぶりにリャナンは会話を諦めてルトナーとのやりとりを見守るしかない。


「主役になれない。ねぇ。ですが、主役だけでは舞台は動きませんよ。優れた脇役がいるから成り立つんです。ここ数年、主役級の花を数輪買って満足される方が多くて売上は減少傾向ですからね、その打開策としての僕なりの答えにピッタリの花を見つけたから認定したんですよ」


最初の威圧感とは真逆に、爽やかに選定理由を語るルトナーにエルナも納得せざるを得なかったのか、よい反論を思いつかず悔しそうに、


「それはずいぶんと深いお考えをおもちだったようで」


と締りなくぼそぼそと言ってその場を立ち去ろうとした。


「あ、それとこちらのリャナン=エルスターさんは非常に聡明な女性ですよ。これを機にそっちの認識も改めてくださいね」


そう言いながらルトナーはリャナンの腰に手を回す。二人の必然的に距離が近くなり、非常に仲が良さそうな関係にも見える。ニヤニヤとこちらを見ていただけの周りが色めき立った。リャナンはルトナーの行動についていけず固まるばかりだ。とてもルトナーの言うような聡明な女性には見えないと自分で思う。


「そうですか。ではリャナン=エルスターさん。あなたがフランツェンとして来ることをお待ちしてお

りますよ」


とって付けたような別れの挨拶にリャナンも


「ありがとうございます。ご期待に添えるように頑張りたいと思います」


とだけ返した。いつの間にかルトナーは手を外し、いつもどおりの距離に戻っていた。エルナが離れたことで周りも談笑に戻りリャナンとルトナーは挨拶に来る人間を捌いたり、勧められたお菓子類を食べたりとそれ以降は平和に園遊会を終えた。


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