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28. 作業前

リャナンとリトルアが連れ立って午後の作業が行われる作業場に入れば、既に部屋にいた生徒が扉の音に反応して一斉に扉の方を見る。そこまでならば人間の反射反応でいつものことだが、今日は再び目を戻す者が少ない。結果的に部屋のなかにいる生徒たちとまともに目を合わせることになってしまい、リャナンが困惑して不自然に目をそらそうとするが、どこを見ても誰かしらと目を合わせることになってしまい結局は自分のつま先を見て歩く羽目になった。

二人は学年ごとに割り振られた作業に基づいて四人で一つの机を使ううちの隣り合った二つに座る。


「今日は何人くるのかなぁ?」


リトルアが席に座ると同時に呟く。


「いつも通りじゃない」


リャナンがなんの感慨もなさそうに返すとそれに反応したリトルアは、


「貴族様や名家様は何を考えて大学に通ってるんだろうね」


と、怒った口調で捲し立てる。それとは対照的にリャナンは平坦な口調で言う。


「フランツェンにならなくても大学を卒業したってだけで家の価値が上がるらしいし」


この国には、元平民で貴族との婚姻関係によって力を付けている家があり、それらを名家と呼んで貴族とも平民とも区別をつけていた。しかし、元は平民であるため、名家という名前とは裏腹に成り上がりの印象が強い。


「せめて与えられた仕事位ちゃんとやって欲しいよね」


怒りが収まらないリトルアの愚痴に、


「でもさ、今回の三年生の仕事は、イモの皮むきでしょ。包丁も持ったこと無い様なのが集まったって邪魔なだけじゃない」


リャナンはあっさりとひどいことを言い放つ。しかし言い得ているので、リトルアもこれ以上怒りを露わにしているのも変なので、黙るしか無い。そんな時に扉の開く音がして、二人が反射的に扉の方を見ると、クラスメイト数人が部屋に入ってくるのが見えた。そのうちの男性二人がリャナンとリトルアの向かいの席に「お疲れ」などと挨拶をリャナン達にしながら座った。


「相変わらず集まり悪いな」


リャナンの向かいに座ったグレンが作業室を見渡しながら言う。グレンの青い目と短く刈り込まれた茶色の髪がよく動く。


「まあ貴族様達が来るわけないし」


グレンの呟きに答えたのはグレンと同じ茶色の髪と緑の目を持つクラークだった。そんな二人のやりとりを聞きながらリャナンはやっぱり誰でも思うことは同じだと思った。特殊作業の度に来ない生徒たちを見ていると押し付けられた感どうしても拭えない。



「そんな中でもちゃんと来るリャナンは偉いよね」


グレンの矛先が自分にむいたことにリャナンはちょっと驚いた。


「どうして?別に私が来ない理由はないと思うけど」


驚きをそのまま言葉にすれば、クラークは


「だって国王認定取れたらあとは卒業まで安泰じゃない。テキトーにやっていても大丈夫でしょ」


とあっさりと言う。


「そんなずるいことはできないよ。大学で与えられた作業はきちんとやらないと」


至極当然と言う風にリャナンが反論すればそれを聞いた三人は、口々に「真面目だよね~」と言ってリャナンを労った。そんな会話をしていると、一年生が木箱を持って入ってくる中身は考えるもなく宇宙芋だ。教師も一緒に入ってきて今日の作業の開始を告げた。


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