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26. 執務室 3

ルトナーはジェンと向かい合いながらも全く別のものと対峙している気分になる。彼にはどんな言葉が必要なのだろう?そもそも彼はなぜこんなにもストラス=ゼストの更迭撤回に必死になるのだろうか。二人の間に長い沈黙が落ちる。お互いに次の言葉を探っているようだ。


「ストラス=ゼストの罪は国王の選定に手を出したからではない。国王と精霊の契約に金銭を持ち込み、選定自体を歪め自分自身は不当な利益を得ていたこと。さらにその不当操作により本来ならばフランツェンに成れたかもしれない者が、今現在大学で畑守りとして貴族の畑の面倒を見ているという規則違反が存在していることは畑守り達が大学生時代に力を貸した精霊たちへの侮辱になる。フランツェンの地位を売っていた影響は大きすぎる」


どんなに理解力がなかろうと、意見を行ってくるものには納得するまで言葉を尽くすのが国王の義務、とルトナーは座ったまま足を組み言葉を紡いだ。しかしジェンの反応はルトナーにとって予想外のものだった。


「陛下。精霊達などという目に見えない物に気を使うよりも目の前の人間のことを考えてはくださいませんか?」


ジェンの言葉にルトナーは少なからず動揺をする。ただ、それが相手に伝わっていなかったのが救いではある。


「精霊は目に見えないからどうでも良いと?」


ジェンのセリフを反復すればとてもこの国の人間のセリフとは思えなかった。


「どうでも良いとまでは言っておりません。ただ、精霊を慈しむ様に目の前の人間のことも慈しんでいただければ、今回のストラス氏のことは更迭ではなく、罰金程度で許しても良いのではないかと」


「この国の基盤をつくる精霊と同等の慈しみを議員が受け取ろうとするなんてずいぶんと烏滸がましい言い分だな。決定は覆さない。ストラス=ゼスト氏は今日を持って更迭とする。これで話は終わりだ。分かったら早くこの部屋から出ていってくれたまえ」


もうこれ以上話をする気はないとルトナーは会話を打ち切った。さらに言葉を重ねて説得しようとするジェンに、


「そもそも君は何故、そんなにストラス氏の処分を軽くしようとする?何か弱みでも握られているのか?」


基本的にこの国は貴族同士そんなに仲が良くないほかの家よりも多く利益を得ようと競い合っている様子が随所に見て取れている。そんな状態で他家の醜聞は他の家にとっては美味しい状況のはずだった。それなのに何故アルタイ家のジェンがこんなに熱心にゼスト家の減刑を求めるのか。純粋な疑問として聞いたのだが


「そんなことは決してございませんが、痛くもない腹を探られるのは好きではないのでこれで失礼いたします」


と、ジェンがいきなり踵を返して、部屋を出ていく。それを何も言わずにルトナーは見送った。退室したジェンは力なく廊下を歩きだす。実はルトナーの言葉は当たっていた。貴族同士牽制し、お互いの弱みを握り合っているのが現状なのだ。ストラスが失脚により失うものが何もないとばかりにそれを暴露されたらジェン自身が更迭の憂き目を見ることになりかねない。それは何としても阻止しなくてはとジェンは次の行動を考えながら長い廊下をただ歩いていた。


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