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24. 執務室 1

部屋を出るとルトナーは廊下を早足で歩く。

その後ろから宰相のローンが追いかけてくる気配がしたが、振り向くことなく執務室へと向かう。ローンも心得たもので特に話しかけてくることもなくただ黙って後ろを付いてくる。


「今日は特に特別な用事は無いだろう?何かあったら呼ぶから下がっていてくれ」


執務室の扉の前でルトナーはローンの方を見ることなく告げるとさっさと一人で部屋に入ろうとする。


「わかりました。後でお茶をお持ち致します。本日はお疲れ様でした」


そんなルトナーにローンは労いの言葉を述べて、執務室に背を向け、たった今歩いてきた廊下を、戻っていった。それを見送らずに執務室に入ると、会議用に着ていた白いフロッグコートを脱ぎ、机の端に置く。そして、窓際の自分の椅子に沈み込むように座り深く息を吐き出し、そのまま目を閉じれば雨が窓をたたく音だけがルトナーの頭の中を支配した。

 考えなければいけないことは沢山ある。ストラス=ゼストの後任議員のこととか、ベッタリと癒着している他の議員の攻撃の躱し方など先手を打っておきたいこところである。

さらに今日のうちに片付けておかなければいけない仕事も目の前の机に積まれている。

それでもルトナーは先程のストラスとのやりとりを思い出して自己嫌悪に陥る。


(もっと確実に事を運ばないと)


かなり感情的にストラスとの攻防が始まってしまったことは大問題だと思っている。国王が感情で議員を更迭したなどという感情を持たせるのは非常にまずい。ストラスとのやり取りを思い返しているとそのまま背もたれに沿って腰が沈んでいく。それでも目を開くことなく考え続けいると、扉をノックする音が響いた。椅子に座り直し入室を許可する。もし宰相が何らかの用事で部屋を訪ねてきたのだとしたら、だらしのない格好でいたら絶対に怒られる。ところが扉を開けたのはメイドで、お茶のセットを持っていた。


「失礼いたします」


と言いながら入ってくるメイドに安心して、ルトナーはまた椅子に沈み込む。そのまますぐ隣にいるメイドの存在すら頭からはじき出して再び思考の海に沈み込む。もう外の雨の音すら耳に入ってくることは無かった。

 どのくらいそうしていたのか、ふと我に帰ったルトナーの前にはまだ暖かいお茶が用意されていて、メイドの姿はもうなかった。流石にいつまでも考えに浸っている訳にもいかない。用意されたお茶を口に含み積まれていた書類の一番上を手に取る。

目の前の仕事に集中するといつもの感覚が戻ってきたようで、積まれていた書類は、小一時間ほどで半分の高さになっていた。

 一昨日と昨日の仕事量に比べると格段に量が減っていることから、どうやら議員連中は、国王認定を決めたことによりで妨害工作を諦めたらしい。この調子で進めていれば夕方には仕事は全部終わるし、今日の昼食は自室で摂る位なら時間的の余裕もありそうだ。ルトナーが終わった仕事量と残った仕事量を見比べて満足気に思っていると再び扉をノックする音が響いた。基本的にこの部屋に来るのは先程のようにお茶を運ぶメイドか、仕事を運ぶ書記官か宰相位なものである。お茶は先程運ばれてきたことから、なにか追加の仕事かと訝しがりながら入出を許可すると開かれた扉の向こうに立っていたのは議員の一人である、アルタイ家当主・ジェン=アルタイであった。

予想外の人物の登場にルトナーは目を見開いて驚いたが、瞬くまにそれを自分の中に押し込め、重ねて部屋に入ってくるように命じた。


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