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23. 波紋の収束

ストラスの動揺した様子を見てもルトナーは最早、何の感情も浮かんでこなかった。この男は今、自分が切り捨てるべき人間だ。そこに同情すら浮かばない。

ここまで来たら引き返すことはできない。お互いに退路はもうないのだ。静かにルトナーは口を開く。


「現職のフランツェンに自身の罪は問わないという条件で告発を促したところ、フランツェンになるために君に賄賂を払ったと証言したものが相当数集まった。さらにその内の幾人かは辞意を表したので承諾した」


淀みなく告げられる言葉にストラスの顔色は蒼白になるが、それを押し隠すように凶悪な笑顔を貼り付け


「陛下。それは私のことよりもフランツェンのことを信じるということですかな?」


ストラスの一言に周りの貴族達が弾かれたように「それはあんまりだ」と同調の声を漏らす。その声に後押しされるようにストラスは続けた。


「私共は先王の時代から王に最も近いものとして日々仕えてまいりました。その私を信じていただけないとは事によっては大変な事態を引き起こしますよ?」


ストラスは言葉を重ねるにつれ、媚びる口調に脅迫を織り交ぜる。ルトナーはいい加減うっとおしくなってきた。この後に及んで、ストラスはまだ自分が重要人物で、言い逃れができると思っているのか。


「信用していないのはお互い様だろう。君は僕の選んだ花を信用していないから先程のような物言いになったのだから。それと証言だけでここまで言っていると思われるのは心外だ。できれば決定的な証拠を出す前に引いて欲しかったが、仕方が無いようだ」


ルトナーは言いながら、近衛兵に一冊のノートを持ってこさせる。運ばれてきた物を認めたストラスの顔色がますます悪くなり蒼白を通り越して土気色になった。


「君の家の家宰は善良な人間なようだね。帳簿の提出を求めたら素直に応じてくれた」


ルトナーの言葉にストラスは優秀とは言い難いが従順で使い勝手の良かった家宰の顔を思い浮かべた。家宰本人に主人を裏切った自覚は未だにないのだろう。ストラス自身王家の手が及ぶなどと考えもせず、裏帳簿などというものを作らずにいたのだから。つまりあの中には賄賂の決定的証拠が書かれていることになる。妙に冷静な自分に笑いがこみ上げてくる。人間追い詰められると意思とは関係なく笑えるものらしい。


「何がおかしい?」


一段下がったルトナーの不審気な声も耳の中を素通りする。


「色々なことが」


ストラスが、精一杯の強がりを言うとルトナーは何も言わなかった。部屋の中に自分の笑い声だけが響く。

やがて、ストラスの声も力をなくし部屋の中に沈黙が訪れた。この沈黙を破ったのはルトナーで、


「先王から仕えていた君に今更言うことではないだろうが、国王認定は王と精霊の契約だ。それに介入していたことさらに私腹を肥やしていたことは立派な国家反逆罪だ。精霊の加護は個人の利益のために在るのではない。処分は追って知らせる。それまで、自宅で謹慎していたまえ」


静かに全て言い終えてからストラスを近衛兵に連行させる。ストラスを牢に繋がなかったのはルトナーの最後の温情だということに、ストラス自身が気がついていた。そんな温情もルトナーの余裕故だと思うとストラスは腹立たしかったが、もはや抵抗するすべもない一発逆転の妙案は欠片すらも浮かんでこなかった。それは他の貴族も同じで、おとなしく連行されていくストラスを誰もが黙って見送るしかなかった。

 扉が閉まりストラスの姿が見えなくなっても残された貴族たちは身じろぎもせずルトナーの様子を伺うことしか出来ずにいた。沈黙が部屋を満たし、部屋にいる全員が居心地が悪い中、ルトナーは厳しい表情のままこの日の会議の終了を告げ、一番初めに部屋を後にした。


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