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2. 出会い

リャナンが振り返るとそこには身なりのいい男性が一人立っていた。


(見たことない人だな。)


年齢はリャナンと同じ年くらいで学生に見えるが、全校生徒が百六十人しかいない学校で新年度が始まって一か月足らずとはいえ、見たことない学生がいるとは考えにくい。ここは、部外者は立ち入り禁止だ。注意するのも学生の義務と、男性に話しかけようとしたとき、男性が先にリャナンに声をかけた。


「おはようございます。君はここの学生だよね?」


ゆったりとしているのにどこか逆らえない声に思わず


「そうですけど」


と、普通の返事を返してしまう。


(違う。こんなことが言いたいんじゃなくて…!)


たった一言で相手のペースに乗せられたことを少々悔しく思いながら、質問の言葉を出そうとすると、


「よかった。畑に人はいるのに学生が全然いないんだもん」


とさらにマイペースに話を続けられてしまう。


「彼らは畑守り達ですよ。それよりもここは部外者の人は立ち入り禁止です」


言外になぜここにいるのだ。と告げ、この場を離れようとする。忠告はしたし、知らない人にはかかわらない。なぜならば面倒くさいから。仕方がないので、だいぶ早いが教室に向かうことにする。


「ああ。そっか。うん、それは大丈夫。ちゃんと許可を取ってあるから。それよりも畑守りって何?彼らは部外者じゃないの?」


こんなに朝早くから見学者というのも不思議だし、そもそも見学者は畑までは入ってこられないはずである。この学校の一番の財産は花である。それがある畑は正規の見学者でも入って来られないはずだった。


(貴族だから…、か)


男性の身なりからして明らかに貴族である。貴族の前ではルールなどないも同然だった。リャナンは少し眉を顰めながらも、


「畑守りっていうのは、貴族が子供のために雇っているその名の通り畑を管理して花を咲かせるのが仕事です。多くはこの学校の卒業生で、フランツェンになれなかった人です。本来は学生以外を立ち入らせることは禁止ですけど学校内に貴族のやることに反対できる人はいないですし、雇用創出っていう側面を出されると強く反対もできないですしね」


彼らがどんなに優良品種を作ってもそれらはすべて、本来の畑の持ち主である貴族が品種の登録者となる。正直報われない仕事だとリャナンは思っている。しかし今のリャナンに一番近い未来でもある。多少の刺を含ませながら、リャナンは言うと無意識に下を向く。地面に映る男性の影が近づいたのを見て、リャナンは無理やり顔を上げると、男性は微笑みながら、


「申し遅れました。僕はローン=ニエルです。できたら君の畑を案内して欲しいのだけど」


そう言って差し出された手をなぜかリャナンは拒むことができなかった。ニエル家と言えば四家ある貴族のうちの一つで半年前に即位したばかりの若い国王陛下とも縁戚関係にある由緒正しい家柄の人間だ。できれば貴族となんか関わりたくはない。しかし、思考に反してリャナンは、


「リャナン=エルスターと申します。私でよければ、授業が始まるまでならご案内致します」


と答えていた。


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