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一日に三回も告白された嘘みたいな俺の話、聞く?  作者: 陽花紫


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2/4

ケイタとの未来

 ユウキが選んだのは、ケイタであった。


 決して、他の二人が嫌いになったわけではない。

 誰の気持ちも、軽いものではないとわかっていた。

 だからこそ、胸の奥が痛むぐらいに悩みぬき、それでも最後に浮かんだのは、いつも隣で笑っていたケイタの横顔であったのだ。


 その日も、昼休みにユウキはケイタを呼び出していた。


 あの日告白を受けたベンチで、ユウキは一人待っていた。

 数分後。汗を軽く拭きながら、ケイタが全力で走ってくる姿が見えた。

「どうした?急に……」

 息を切らして笑うその顔は、いつもの笑顔であるはずだというのに、どこか不安を押し隠しているようにも見えていた。

 ユウキは、唇を噛みしめた。

 言葉が、喉に張り付くような気がした。


「……返事を、言いにきたんだ」


 その言葉に、ケイタは動きを止めた。

 視線が、まっすぐに突き刺さる。

 その瞬間、ユウキは気づいた。この顔も、好きなのだと。


「俺も、ケイタのことが好きだ」


 その想いを声に出した途端、胸の奥がとほどけるように軽くなる。

 ケイタは一瞬目を見開くものの、満面の笑みを浮かべてユウキに向けて抱きついた。

「ぐえっ!」

「ユウキ、本当か?」

「本当だよ、……おい、つぶれる!」

「ありがとう……!ユウキ」

 そう静かに告げられた声に、ユウキは何も言えなくなってしまう。

 幸いにも通りがかる人はおらず、ユウキはしばらくケイタの細い腕に抱かれていた。

 背中に回された手が、じんわりと熱かった。

 鼓動が伝わるほど胸が近いのに、不思議と怖くはなかった。


 ケイタとなら、きっと前に進める。

 笑いながら、ユウキはその腕におずおずと手を回す。

「これからも、よろしく」

「うん。ずっと……」


 あたたかな風が、二人の間を通り抜けていった。


***


 それからの日々は、驚くほど穏やかなものであった。

「ユウキ、昨日の動画見た?」

「見た見た、マジ笑った」

「だよな、俺も三回くらい見直した」

 相変わらず、くだらない話で笑い合う。

 違うのは、歩くときに肩が触れてもお互い離れなくなったこと。

 並んで座った時、互いの膝がこつりと触れても、そのままでいたこと。


「なあ、手……いい?」

 ケイタの指先が、ユウキの指先にそっと触れる。

 その温度に、思わず心臓が跳ねてしまう。

「嫌なら、言えよ……」

「ううん、嫌じゃない」

 握られた手が、思ったよりずっと大きくあたたかく感じられてユウキは思わずにやけてしまう。


「笑ってんじゃん」

「えっ……なんか、幸せだなって」

 ケイタは照れくさそうに視線を逸らしてから、小さく囁いた。

「俺も。……嬉しい」



 ある日の帰り道、二人は些細なことで言い合いをしていた。

 グループワークのメンバー決めで、ケイタが当然のようにユウキと一緒に組もうとしたことが原因でもあった。


「別に、いつも一緒にいなくてもいいだろ?」

「いや、別にそういうつもりじゃなくて……」

「俺だって、別の友達と組みたい時くらいある!」


 言いすぎたと気づいたのは、ケイタの表情が曇った時であった。

「……ごめん。重かったよな」

 そう吐き出された声は、ひどく弱々しいものでもあったのだ。

「違う、そうじゃない……。……俺のほうこそ、ごめん」

 ユウキは慌ててケイタの手を取った。

 ケイタは無理に笑ってみせるものの、しかしその笑みは痛々しいものであった。


「いや、悪いのは俺のほう。ユウキには、無理させたくないんだ。……嫌われたくない」

 その言葉に、思わず胸が締めつけられる。

「ケイタ……」

「俺、……怖いんだ。お前が離れてくのは」

 その弱さに触れた瞬間、ユウキの目には涙が滲んでいた。

「俺は、逃げないよ。ケイタのことが、好きだから」

 言葉が震える前に、ユウキはケイタの身を強く抱きしめていた。


 ケイタは一瞬驚いたように固まったが、ユウキの身を強く抱き返す。


「ありがとう、ユウキ」


 その後、二人は並んで歩いた。

 何も言葉は交わさなくても、その手はしっかりと繋がれていたのであった。


***


 土曜の昼、ケイタの部屋をユウキは訪ねていた。

 授業の課題をやるはずが、気づけばお互い無言になる。

「ユウキ」

「うん?」

 その瞬間、ケイタが静かに頬に向けて手を伸ばしていた。

「……キス、していい?」

 心臓が、やけにうるさく鳴っていた。

 ユウキがこくりと頷くと、ケイタはそっと顔を寄せる。


 触れたその唇は柔らかく、震えていた。

 そう、長く触れたわけではない。しかし、胸の奥にじわりと温もりが広がっていた。

「……好きだよ、ユウキ」

 息を切らした声が、耳元に落ちてくる。

「俺も、好きだ」

 その言葉が、世界で一番甘いものであるかのように感じられた。


 その後も、二人は恋人同士として甘い日々を過ごしていく。


 大学の卒業を迎えたその日、ケイタはユウキの手を取って笑みを浮かべていた。

「これからも、俺はずっとユウキの隣にいる」

「うん。俺も、離さないからな?」

 桜が舞い散る中で二人は、静かにキスをした。


 二人の未来は、まだまだ続く。


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