告白を受ける
大学の、少し長い昼休み。
いつものように購買で買った弁当を抱えて歩いていたユウキは、親友であるケイタに突然呼び止められてしまう。
「なあ、話があるんだけど」
いつもは笑っている目が、今日はやけに真っ直ぐであるかのように感じられた。
「ん、どした?」
「ここじゃなんだだから、ちょっと……」
ベンチまで歩いて並んで座ると、ケイタは深く息を吸う。
「ユウキのこと、ずっと好きだったんだ。俺と、付き合ってほしい」
その声は、わずかに震えていた。
冗談ではないとすぐにわかるほどに、その顔は真剣そのものでもあったのだ。
空腹されも忘れてしまうほどの衝撃と、心臓を直接握られたような感覚。
それが、今日最初の告白であった。
返事を求めるような視線に、ユウキは何も言えなかった。
たまたま通りかかった教授に呼び出される形で、話はそこで途切れてしまったのだ。
ケイタは大学の入学式の時に、席が隣同士で意気投合した仲でもあった。
偶然にも同じ専攻で、常に隣にいた存在でもあったのだ。
その容姿はユウキと同じく目立った特徴はないものの、それでも似た者同士としてつるんでいた。
どのようなことでも気楽に話せて、休日もよく一緒に食事や買い物に出かけていた。
しかしそのような想いは、これまでに一度だって感じたことがなかったのであった。
「ケイタ……、まじかよ……」
思考が追いつかないまま、ユウキはバイト先である居酒屋へと向かっていた。
夕方になり、店長と交代で厨房にいる時に、先輩であるシュンが突然言った。
「ユウキ、今いいか?」
「はい。なんですか?」
「少し、聞いてほしいことがあるんだ」
シュンは頼れる兄貴分のような存在があり、体格もユウキより大きかった。
誰にでも優しく、いつでも余裕があったのだ。
しかしそのシュンが、珍しく言葉を探すように口を開いていた。
「俺、お前のことが好きなんだ。ずっと。……男でも、お前ならいい」
持っていた伝票を落としそうになるほど、ユウキは息を呑んでいた。
それが、二度目の告白であった。
返事を聞かれる前に、急な注文が入りその会話は途切れてしまう。
ユウキはそのまま、時間いっぱいまで働いた。
そして帰り道。
自転車を押して歩いていると、近所の曲がり角でサトシと出会った。
「サトシ!久しぶりだな」
「ユウキ、バイト帰りか?」
「そんなとこ。お前も?」
「いや、俺はちょっとコンビニに……。でも、忘れ物したから戻るとこ」
そうサトシはユウキと同じ方を向き、並んで歩く。
二人は家が隣同士で、幼馴染でもあったのだ。
あと少しというところで、突然サトシは立ち止まる。
「ユウキ、ちょっといいか?」
「うん?」
サトシは高身長で、誰の目にも格好良く映る完璧な男でもあった。
しかし昔から不器用で、気持ちを素直に言葉にすることが苦手でもあった。
ユウキは静かに、その言葉を待つ。昔から、そうしていたように。
「ずっと、言えなかった。……お前のことが、好きだ。小学校の時からずっとだ」
今日、三人目の告白であった。
現実味がなく、まるで冗談のように思えてしまう。
「……えっ俺、今日死ぬの?何かのフラグ?」
冗談であるかのような声が、勝手に漏れてしまっていた。
しかし、サトシは笑わなかった。
「死なすかよ。俺は、本気で言ってるんだ」
その目を見た時、ユウキはようやく理解した。
誰も、冗談などで言っているのではないと。
「返事は、いつでもいい。……それじゃ、おやすみ」
そうサトシは、颯爽と駆け出してしまう。
ユウキは呆然と、立ち尽くすことしかできないでいた。
***
その夜、ユウキは自室のベッドに沈み込む。
「俺、誰を選べばいいんだ?いや、そもそも……誰も選ばないほうがいいのか?」
天井を見つめながら、三人との未来を想像してしまう。
もし、ケイタを選んだら。
もし、シュンを選んだら。
もし、サトシを選んだら。
どのような未来が待ち受けているのかと。
「あー、だめだ。ねむい……」
ほどよい疲労と毛布のあたたかさによって、ユウキの思考はゆっくりと溶けていくのであった。




