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Sun of Mars  作者: うどん
第一章:押忍! メカ・バト部!

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8/21

007:メカ・バト部は財政難!

「いでで……現実に戻っても痛みが残ってるって……まぁ怪我は見えねぇけど」


 背中を摩りながら、俺は旧校舎内の廊下を歩いていく。

 床板を踏めばぎいぎいと音が鳴っていて。

 今にも床が抜けそうで正直怖かった。


 ……聞いた話によると、旧校舎は経年劣化で使われなくなったらしいけど……こんな所に部室があるのか?


 何だか妙な話だ。

 普通は使われていない建物じゃなく。

 新しい方で空いている部屋を部室として提供するんじゃないのか。

 そもそも、危険だから使わなくなったのに、何でメカ・バト部は……うーん。


 狐に化かされているような気分だったが。

 ゴリ先輩にはお世話になったから行かない訳にはいかない。

 約束は約束であり、あの大凧先輩も律儀に約束を守ってくれた。

 先ほど連絡が来て、あの兄弟への謝罪を済ませたとあった。

 写真付きであり互いに誤解が解けたのか。

 件の弟さんも写真の中でばっちりメイクして写っていた……まぁよし!


「……にしても、メカ・バト部の部員かぁ……ゴリ先輩みたいに、とんでもねぇのかなぁ?」


 俺は少しだけ不安に思いながらも足を進めて行く。

 すると、長い廊下の先でようやく1-5の札が見えた。

 俺は指で此処だと確認してから、深呼吸をする……よし。


 俺は意を決して扉をノックする。

 が、返事は返ってこなかった……あれ?


「いねぇのかなぁ……え、開いてるじゃん」


 軽くスライドして見れば鍵は掛かっていなかった。

 俺はそのまま扉を開けて、真っ暗な部室の中へと入って行く。


 暗い。本当に真っ暗だった。

 恐らくは、遮光カーテンを閉めているんだろう。

 俺は明かりをつける為に、壁のスイッチを押そうとし――首に冷たい感触がした。


「――動くな」

「……! お前は誰――ぅ!」

「動くなと言った。某の質問にのみ答えろ。いいな?」

「……あぁ」


 誰なのかは分からない。

 が、声からして男だと分かった。

 そいつは俺の首元にナイフを当てながらゆっくりと質問をしてきた。


「お前は五十嵐仁か?」

「あぁ、そうだ」

「……お前は小中でモテていたか」

「……え、いや、モテてはねぇけど」

「そうか。なら、お前は童貞か」

「…………え、いや、何の質問」

「――答えろ。死にたいのか?」

「……はい、童貞っす」


 意味不明だった。

 何故に、ナイフを突きつけられながら童貞かどうかを答えないといけないのか。

 俺は心の底から動揺していた。

 が、相手は何故か機嫌を良くしながら最後の質問だと言う。


「これは最も重要な質問だ。もしも、お前が嘘をついたら……分かるな?」

「……何だ。何を聞くってんだよ」

「あぁ質問は簡単だ――お前に彼女はいるのか」

「…………いや、いねぇっすけど。はい」

「――百点だ。五十嵐仁。我らが新しき矛よ」


 背後の何者かはゆっくりと首のナイフを遠ざけた。

 俺は首元を摩りながら背後を振り返る。

 が、そこには誰もいなかった。


 瞬間、天井のライトが一気についた。

 俺は眩しさから片手を顔の前に出す。

 チカチカする視界の中で、教室の中を見れば――いた。


「ようこそ、メカ・バト部へ――歓迎しよう。五十嵐仁」

「……ゴリ先輩……それと」


 中心にて玉座のようなものに座る大男。

 ゴリ先輩であり、彼はにこやかに笑いながら手を叩いていた。

 その横には制服は着ているが、上から真っ黒なコートを羽織った謎の覆面がいる。

 その手には奇妙な形状の短刀が握られていた……アイツか。


「え、えっと……お、おめでとうございます」

「……ど、どうも」

「……女の子と……あれ、お前はもしかして――あの時の?」

「う! や、やっぱり覚えていたんですね……す、すみません! 僕のせいでご迷惑をお掛けして! 本当に!」


 眼鏡を掛けた黒髪おさげの乳のでかい女学生が一人と。

 小柄な体格で、ぼさぼさの黒髪で眼も隠れてしまっている大人しそうな男が一人。

 先輩たちの背後に立っていた二人の中で、小柄な男の事だけは覚えていた。

 入学式の当日に、あの兄弟に絡まれていら男で。

 俺は再会を喜びながら、そいつに近寄って握手を申し出た。


「改めてだな! 俺は五十嵐仁! メカ・バト部の部室にいるって事は、お前も此処の部員だよな? よろしくな!」

「……え、えっと、すごく答え辛い質問だね。にゅ、入部したつもりはないんだけど……ひぃ! う、嘘です! 部員! 部員ですぅ!! 僕の名前は桜間雄吾(さくらまゆうご)ですぅぅ!!」


 桜間はいつの間にか背後に立っていた忍者の殺気で涙目になりながら俺の手を取る。

 ぶんぶんと派手な握手を交わしてから、俺は隣でそわそわしている女子に目を向ける。


「お前も新入部員だろう? 名前、教えてくれよ!」

「え!? あ、うぅ……そ、その……恵子です!! 坂崎恵子(さかざきけいこ)でしゅ!! 一年でしゅぅ!!」

「ははは! 坂崎恵子さんか! 良い名前だな! よろしくな!」


 流石に女子と握手はまずい気がしたのでやめておく。

 坂崎さんは顔を真っ赤にして頭から湯気を出していた。


 新入生が俺を含めて三人。

 あの忍者は先輩だとして、二人で……まぁまぁいるのかなぁ?


「……因みに、先輩の名前は何ですか?」

「ふ、因みにで某の名を聞くか……まぁいい。某は服部一(はっとりはじめ)だ。学年は二年、ゴリ部長の懐刀だ。覚えておけ」

「ほぇぇ懐刀っすかぁ。それはつまり……かなり強いって事っすか?」

「試してみるか。小僧」


 俺は挑戦的な笑みを浮かべる。

 すると、服部先輩も笑みを浮かべて俺を見つめて来る。

 互いに視線で火花を散らせて――誰かが部室の扉をガラガラと開けて入って来た。


「ごめぇぇん! 遅れちゃったぁぁぁ! 駅前のスイーツ店が珍しく混んでてさぁ! オーダーするのに時間が掛かっちゃったよぉ!」

「……え? あ、あれ? まだいたんっすか?」

「……アイツは米俵二色(こめだわらにしき)。俺の右腕であり、この部の副部長だ」

「え!? ふ、副部長! へぇ!」

「あ! 君がゴリ君が言ってた新しい部員さんだね! 僕は米俵二色、三年生だよ! 皆からはおにぎりって呼ばれてるから、良かったら君もそう呼んでね。えっと」

「……あ! 五十嵐仁です! 俺はジンって呼んでください! おにぎり先輩!」

「ジン君だねぇ。分かった! ふふ、早速呼んでくれたねぇ。嬉しいなぁ」


 丸みを帯びたフォルムの先輩だった。

 が、太っているというよりはアレ全てが筋肉のように思える。

 いや、分からねぇけど並々ならぬ力を感じていた。

 先輩は特徴的な坊主頭であり、顔は菩薩のように優しそうだった。

 そんな先輩は両手に多くの荷物を抱えていた。

 二メートルを優に超えている先輩の身の丈ほどある量だ。

 先輩は俺たちに指示を出して、壁にあった机やパイプ椅子を持って来るように言う。

 俺たちは指示通りに動き、先輩が片付けた玉座の位置に机を置いて。

 パイプ椅子を適当に並べて置いた。

 すると、おにぎり先輩がその机の上にどさりと荷物を置く。


「じゃーん! これね! 駅前のスイーツ店のケーキなんだけどさ! すっごくクリームが甘くてなめらかなんだよ! あ、それとこっちの和菓子は隣街で有名な“千頭(センズ)”っていう店の栗饅頭とどら焼きで此処のあんこは味が深くて――」

「お、おぉ……すげぇ」

「こ、こんなに……た、食べるんですよね?」

「わぁぁ! 凄い! 全部、人気店のスイーツばっかり! 美味しそう!」

「あ! 分かる!? そうなんだよぉ。本当だったら、予約していないと買えないものもあるんだけど。実は僕、こう見えてもスイーツ同盟っていう会のプラチナ会員なんだぁ! だからね、予約しなくても買えちゃうんだよぉ!」

「えぇぇ!? わ、私なんてシルバーなのに! 先輩ってすごいんですね!」

「え、そ、そうかなぁ……も、もしも欲しいものがあったら言ってね! 僕が買ってくるから! あ、勿論、ジン君とユウゴ君も言ってね!」

「お、オッス!」

「あ、ありがとうございます」


 先輩はどんと胸を叩き鼻息を吹かす。

 そんな先輩にキラキラとした目を向けながらはしゃいでいる坂崎さん。

 が、殺気を感じて見れば、服部先輩とゴリ先輩が歯ぎしりしながらおにぎり先輩を睨んでいた。


「おのれ、おにぎりの分際で……おい、奴の食べるものにからしをぶち込んで来い」

「御意」

「……いや、やめろよ」


 ゴリ先輩が懐から取り出したからし。

 それを受け取った服部先輩の手からそれを奪い取る。

 二人は歯ぎしりしながら俺を睨んできた。


「何故止める!! お前は悔しくないのか!?」

「我慢するな!! 誰だって同じだろう!? 某もそうだ!! 他人がモテる事ほど腹の立つ事はない!!」

「いやねぇよ! どんだけひねくれてんだよ!?」


 二人は血の涙を流さんばかりにおにぎり先輩を睨んでいた……あぁ、何となく分かったかもしれねぇ。


 この二人は恐らく童貞だ。

 俺もそうだが、この二人は相当にこじらせた奴らに違いない。

 モテたいが結果が伴わず、妬みとひがみによって性根がひんまがった。

 哀れな人たちであり、俺は少し同情しそうになった。

 すると、二人がぐるりと首を回して俺をかっぴらいた目で見つめて来た……こ、こえぇ。


「ジン。その目で俺を見るな。間違ってお前の眼球を潰しかねないぞ」

「新入り。某とて間違いは起こす。首から音を奏でる前に、可哀そうなものを見るような目をやめろ」

「お、オッス……やべぇな」

「「あぁ?」」


 俺はからしをポケットに入れる。

 そうして、二人から距離を取って席についた。

 いつの間にか、おにぎり先輩と坂崎さんは仲良く談笑しながらケーキを食べていた。

 桜間の奴も端の方で栗饅頭を頬張っている。

 俺は桜間の隣まで椅子を引き、話しかけた。


「なぁなぁ? 桜間はもしかして、メカ・バトは経験済みなのか?」

「……ま、まぁ、ちょっとだけ……で、でも!! 僕は戦えないから!! 絶対に!! 絶対に!!!」

「お、おぅ。そ、そっか! ま、まぁ……頑張ろうな!」


 桜間は目をかっぴらきながら叫ぶ。

 戦えないとはどういう事なのか。

 理由について聞きたかったが、奴の視線を通して聞くなと言われたような気がした。

 だからこそ、無難に頑張ろうとだけ伝えて俺も近くにあったどら焼きを手に取った。


 包装を剥がして、中身を口に入れる……おぉ、うめぇ!


 甘い事には甘い。

 が、後を引くようなくどさはまるで無かった。

 繊細な味でありながら、奥が深く。

 粒あんのしっかりとした食感も合わさって印象に残る味だった。

 ほんの少しの塩味も感じられて、中々に美味なものだった。


「うめぇな! 桜間!」

「う、うん……でも、五十嵐君は良かったの?」

「うぇ? 何がだぁ?」

「い、いや、君も僕と同じように無理矢理入れられたんじゃ……?」


 桜間は恐る恐ると言った感じで質問して来た。

 俺はあぁっと言いながらも、問題ないと伝えた。


「確かに選択肢は無かったかもしれねぇ……けど、俺はメカ・バトでやるべき事があるからな!」

「や、やるべき事……それって、一体?」

「勿論――ヒーローになる事だッ!」

「ひー、ろー?」


 桜間は目をぱちくりとさせていた。

 そんな奴に対して俺は最高のヒーローになりたいからメカ・バトに挑戦する事にしたと言う。


「馬鹿な夢かもしれねぇ。けど、俺は何が何でもヒーローになりてぇんだ」

「……そっか……うん、なれると良いね。僕は、応援するよ」

「おぉ! 本当か!? くぅぅありがとよ!! 嬉しいなぁぁ!!」

「え、え、え? そ、そんなに?」

「だってそうだろう? 今までこんな事話したら、皆ぜってぇに笑うんだからなぁ! ガキっぽいって言われた事もあったぜ? お前だけだよ! 最初に話して、応援するって言ってくれたのはよぉ!」


 俺は嬉しさから涙を流す。

 腕で涙を乱暴に拭ってから、桜間に笑みを向ける。

 が、桜間は視線を逸らして浮かない顔をした……ん?


「どうかしたか? 腹、いてぇのか?」

「……っ。な、何でもないよ! は、ははは」


 桜間は引きつった笑みを向けて来る。

 そうして、他のスイーツを取って食べて行く。

 まるで、今は話しかけないでほしいそう言っているような気がして。

 俺は心配しながらも、スイーツを手に取って食べ進めていった


 

 

 暫く、各々でスイーツを食べていれば。

 ゴリ先輩がゆっくりと立ち上がった。

 全員が視線を向けるとゴリ先輩は拳を握る。


「新入生の歓迎のみで終えるつもりだったが……五十嵐仁の働きにより、あの大凧から勝利を手にする事が出来た。これにより、我が部も正式に天龍寺高校の部活として認められた。これは大きな一歩だろう!」

「……え? じゃ、今までは……?」


 桜間が当然の疑問を口にする。

 すると、おにぎり先輩が申し訳なさそうな顔で説明してくれる。


「今まではね? 部員の数が足りなかったり、そもそも、結果を出せてなかったからね。正式な部活じゃなかったんだよ。僕たちが一年生の時はちゃんと部活として機能はしていたんだけど……色々あって、暫くは非公式で活動していたんだ。騙すような形になってごめんね?」

「あ、いえ、それは良いっすけど……でも、正式な部活に認められたって何でなんすか?」

「ふふふ、それはな。俺と生徒会で決めた賭けに――勝ったからだ」

「「……は?」」


 俺と桜間は間抜けな顔を晒す。

 すると、ゴリ先輩は説明する。

 実は俺が決闘で敗れてすぐ。

 メカ・バト部は天龍寺高校でメカ・バトをしている人間。

 それもかなりの腕を持つ奴を新入生が倒すと宣言していたらしい。

 もし、負けていれば俺たちはアーナスにある高校への転入を強制させられていたらしい……ひ、ひでぇ。


「まぁそんな顔をするな。結果が良ければ過程などどうでもいいのだ……話しを戻すが。メカ・バトの公式戦にも何度か出ていた大凧に勝利した事で。我が部はようやく部活として動ける事になった。具体的にいうのであれば、天龍寺高校の看板を使って、公式の大会に出る事が出来るようになったと言う事だ! ははは!」

「……えっと、それってそんなにすげぇんすか? いまいち、分かんねぇんすけど」

「えっとね。公式戦ってのは、実は誰でも出れるものじゃなくて。ちゃんとした所属だったり、成績が優秀で運営に認められたプレイヤーとか、後はある一定のレベルに達していると判断されたプレイヤーしか出場出来ないんだ。それで、部活として認められた今なら僕たちが出るとすれば、“火星メカ・バト高校選抜”とかかな?」


 おにぎり先輩は高校選抜について軽く教えてくれた。

 火星にある全てのメカ・バト部がある高校が出場し。

 最強のメカ・バト部を決める公式大会で。

 それに優勝すれば、メカ・バト部として認められるだけでなく。

 年齢制限の無い由緒ある大会への出場権を得たり。

 更に上の地球で行われる大きな大会にも火星の代表として出られるらしい。


「す、す――すげぇぇぇぇ!!!」

「「「……!!」」」


 俺はがたりと立ち上がる。

 そうして、あまりの凄さに叫び声をあげた。


 火星だけじゃない。

 地球の大会でも優勝すれば。

 それはつまり――1番強いって事だろ!?


 俺の夢であるヒーローに近い。

 限りなく近い状態であり――あぁ決めたぜ!!


「よっしゃぁぁぁ!!! やってやるぜ!!! 火星でてっぺん取って!! その次は地球だぁぁぁ!!!」

「あ、あわわわ!」

「……そ、そんなに、簡単に出来るかな?」

「ふふふ、ジン君は熱血だねぇ」

「……ふっ、そのくらいのやる気が無ければゴリ先輩の兵にはなれんからな」

「全くだ……ふふ、五十嵐仁。俺はお前に更に期待するぞ。絶対に、俺の信頼を裏切ってくれるなよ」


 皆の声を聞きながらも俺はやる気を漲らせる。

 そうして、早速、服部先輩たちに勝負を挑んだ。

 先輩方もやる気であり――坂崎さんが手を上げる。


「あ、あのぉ」

「……え? どうかしたか?」

「え、いや、そのぉ、言いにくいんですけど……五十嵐さんは、レインの整備って……もう、したんですか?」

「「「……あぁぁぁ」」」

「え、え?」


 先輩方が息を吐くように声を出した。

 俺はどういう事かと先輩方に視線を送る。

 すると、ゴリ先輩はおにぎり先輩に視線で指示を出す。


「えっとね。多分だけど、ゴリ君と戦った時はシミュだったんだよね?」

「え、あ、はい! そうっすね!」

「うん。でね、大凧君と戦った時はギャラリーもいたから実戦モードだったと思うんだけど……ちょっと、僕が言う様にIECEを動かしてくれるかな?」

 「え、あ、はい!」


 俺は先輩の説明通りに指を動かす。

 すると、すぐに俺の使っていたエースが映し出された。

 が、何故かボロボロの状態であり……え? 何だこれ?


「えっとね。すごく言い辛いんだけど……実は、レインが実戦でダメージを負ったらね。その都度、メンテナンスをしたりして修復しないといけないんだ」

「え、あ、あぁぁなるほど……で、もしかして此処に書かれている数字って……」

「……うん、お金だね。修復に掛る費用。武装なんかは抜きにして……全部で五万だね」

「ご、五万って……え、え、え!?」


 一度の戦いで修復に五万も掛かる。

 俺は顔面蒼白になりながら慌てふためく。

 が、おにぎり先輩は大丈夫だと言って親指を立てる。


「実はね! 修復自体は、別の方法で支払いが出来るんだ! プレイヤーたちはチケットって言ってるんだけどね……今回は、僕の持ってるチケットを三枚あげるからね! これで最低限のダメージは修復出来るから!」

「い、いいんすか? 五万もする価値のあるものを?」

「ふふ、大丈夫! 実は、このチケット自体は取る事自体はそんなに難しくないんだよ。後で取り方を教えるから、今はそのチケットで機体を直しておこうね!」

「は、はい! 本当にありがとうございます!」


 俺は深々と頭を下げる。

 すると、おにぎり先輩からチケットが送られたと通知が入る。

 俺はホッと胸を撫でおろし――ゴリ先輩の咳払いが聞こえた。


「……兎に角だ。我々の現時点での最終目標は高校選抜となる……が、今のままでは出たとしてもいい結果は出ない。そこでだ!! 高校選抜の間までに少しでも経験を積む為に、様々な大会に出る事に決めた!!」

「「お、おぉぉ」」

「具体的には町内会の大会やショッピングモールでの大会。少し遠出して、街のイベントにも参加する予定だ……が、足りないものがある!!」

「「お、おぉぉ?」」


 ゴリ先輩はカッと目を見開き宣言する。

 何が足りないのかと思って――


「金だッ!!! 我が部は深刻な財政難であるッ!!」

「「あ、ああぁぁ……」」

「機体のメンテナンス費用に、武装やパーツの新調。大会の参加費や交通費に、場合によっては宿泊代などもあるぞ! それら全てを賄えるだけの部費は、当然だが我らには与えられない!! 何故ならば、我々はまだ何も結果を出せていないからだぁ!!」

「「……」」


 嫌な現実だった。

 俺と桜間は天井を見つめていた。

 が、ゴリ先輩は気にする事無く言葉を続ける。


「そこでだ!! お前たちに部長として最初の指令を言い渡す――兎に角、部費を稼いで来いッ!! 手段は一切問わんッ!!」

「「え、ええぇぇぇ!!?」」

「何だ? 不満か? 安心しろ、俺もお前たちと共に稼ぎに出る!! 共に地獄へ行こう!!」

「……う、嘘だよね? 僕たち高校生だよ? それも一年の……この歳で、社会の厳しさを……?」

「……へへ、すげぇや。これが理不尽ってやつなのかよ……でも、やってやるぜ!! 俺には夢があるからな!!」

「……五十嵐君。多分だけど、別の方法もある気が」

「――桜間、不用意な発言はしない方が良い。三途の川を渡りたくはないよな?」

「ひ、ひぃぃぃぃ!!」


 俺は闘志を燃やし、桜間は悲鳴を上げる。

 ふと気になって坂崎さんを見れば……ちょっと嬉しそうだった。


「ば、バイト、だよね……ふ、ふふふ、ちょっと楽しそうだなぁ」

「……あ、因みに坂崎一年は無理をしなくていい」

「え!? で、でも」

「いや、君はマネージャーだからな。肉体労働は我々の仕事だ。君は頭脳と愛嬌でサポートしてくれ」

「は、はい……ぅぅ」


 ゴリ先輩は優しい声で坂崎さんに言った。

 どうやら彼女は選手ではなくマネージャーとして入ったようだった。

 少し残念な気持ちもするが、それでも彼女も俺たちの仲間だ。


「よぉぉし!! バイトを探すぞぉぉ!!」

「――あ、五十嵐。お前には既にぴったりのバイトを見つけてあるぞ」

「え、も、もうですか!? くぅぅぅありがとうございます!!」

「俺も一緒だからな。この後は何か予定はあるか? 無かったら、早速、バイト先に紹介したいんだが」

「あ、無いっす! 行きます! お願いします!」

「うむ。では、歓迎会が終われば、俺について来い」


 先輩はそれだけ言って席につく……バイトかぁ。


 自分の力で金を稼ぐのは初めてだが。

 何れは通る道であり、坂崎さんじゃないけど少し楽しみだった。

 夢を叶える為の具体的な方法が見えて。

 その為にやるべき事も見えている。

 だったら、後はその道を突き進むだけだ。


 やるぞ。やってやるぞ……ふふふ。


「根性だぜぇ。五十嵐仁!」

「……すごいなぁ。ははは」

「……?」


 涙を流しながら笑う桜間。

 俺は首を傾げながら、やはり腹痛だったかと桜間を心配した。

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