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Sun of Mars  作者: うどん
第一章:押忍! メカ・バト部!

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7/21

006:互いに死力を尽くして

 遮蔽物に隠れながら移動。

 耳を澄ませば、破壊音が連続して響いている。

 十中八九が大凧先輩のレインによるものであり……誘ってやがるな。


 隠れたままで攻撃をして来ない俺。

 大凧先輩は痺れを切らして、俺への攻撃を誘っていた。

 俺は此処だ、さっさと攻撃して来い……そういう所だろうな。

 

 音のする方向を見れば、ビルが倒壊したのか。

 煙が上がっており、鳥たちが羽ばたいて行っていた。


「……これでいいか……うし!」


 俺は準備を終える。

 盾の中に隠していたものは全てステージ内に仕込ませた。

 俺はすぐに腰のライフルを掴み、瞬時に展開した。

 そうして、姿勢を低くしスラスターに意識を集中し――跳躍。


「――ッ!」


 ぐんと一気に視界が開く。

 全身に風を浴びながら急激なGに耐える。

 そうして、そのまま空を飛行しながら俺は大凧先輩を探して――あそこだ!


 再び大凧先輩が建物を攻撃した。

 ビルが崩壊しており、砂煙が大きく舞い上がっていた。

 俺はすぐに機体を旋回させて先輩のいる場所を目指す。

 飛行速度を緩めて、地面へと向かっていく。

 そうして、そのまま地面に足をつけて滑るように移動した。

 ギャリギャリとアスファルトの道を駆け抜けて。

 転がる信号の残骸や車を避けていく。

 そうして、そのまま目の前に立ちふさがる残骸をジャンプして避けて――捉えた。


《――来たかァ!!》

「……!」


 大凧先輩のレインの背中を捉えた。

 が、瞬時に大凧先輩は機体を回して此方を向く。

 俺は背筋をぞくりとさせて咄嗟にライフルの銃口を先輩のレインに向けた。


 ターゲットサイトが重なる前に俺は銃弾を放つ。

 ガラガラと弾丸がばらまかれて。

 先輩はそんな俺の攻撃を意に介さすに真っすぐに進んできた。

 そうして、そのまま脚部を俺へと向けて――盾に衝撃が加わる。


《成長しないなァド素人がァ!!》

「ぐぅ!!」

 

 盾が軋む音が聞こえた。

 が、俺は衝撃を感じた瞬間に後方へと飛ぶ。

 牽制代わりに肩部のミニガンがオートで先輩に機体に銃弾を放つ。

 先輩に数発被弾したが、大したダメージに至っていない。

 しかし、牽制としての機能は果たしていた。

 

 サブスラスターを全力で噴かせて後方へと飛び。

 そのまま背中に迫ったビルに――足をつける。


 歯を食いしばって衝撃に耐える。

 そうして、そのまま横へと飛ぶ。

 大凧先輩の機体がすぐ目の前に迫っていた。

 奴は火炎放射器による攻撃を行い。

 俺がいた場所には猛烈な勢いで炎の波が押し寄せる。


《逃げるなァ!!》


 大凧先輩が叫ぶ。

 逃走しながら火炎が当たった場所を見れば。

 コンクリートや鉄筋がズクズクに溶けていた。

 如何にレインの装甲であろうとも、アレを長時間当てられればひとたまりもないだろう。


 大凧先輩は機体を旋回させる。

 そうして、スラスターから甲高い音を奏でさせながら飛んでくる。

 俺は前を見ながら飛行しつつ、何度か後ろを見て確認する。

 まだまだ飛行には慣れない。

 高機動戦なんて持っての他であり――


《俺を失望させるなァァ!!》

「――はぁ!?」


 連続して爆発音のようなものが聞こえた。

 瞬間、大凧先輩の機体が――真横に迫る。


 奴は火炎放射器の銃口を俺へと向かていた。

 かつてないほどの警鐘が心の中で響き。

 俺は反射的に大凧先輩に――接近する。


《――何ィ!?》

「ウォォォォ!!!」


 一瞬の判断だった。

 僅かに大凧先輩の火炎攻撃を受けてしまう。

 肌が焼けついたような鋭い痛みが走る。

 が、俺はそれを無視して大凧先輩に手を伸ばし、奴の両手を掴む。


《このォォ!! 出力では此方が――なッ!?》

「根性ゥゥゥゥゥ!!!」


 俺は必死に力を込める。

 確かにカタログスペックでは劣っていたかもしれない。

 が、今のこいつは厳密には俺の肉体だ。

 俺自身の精神状態によって多少なりとも強化される――筈だ!


 そのまま俺たちは回転する。

 ミニガンが勝手に起動して大凧先輩に攻撃を仕掛けるが。

 先輩の硬い装甲を貫く事は出来ない。

 目の前で激しい火花が散る中で、視界がぐるぐると回っていく。

 

 大凧先輩は必死に俺を引き離そうとし。

 俺はそれでも必死になって奴の両腕を掴み――悪寒が走る。


 

 一瞬だ。

 

 一瞬感じた冷たい感触。

 

 それを感じ取った瞬間に俺は――手を離す。


 

 瞬間、大凧先輩の謎の背中の武装が展開される。

 激しいスパーク音が聞こえた。

 が、先輩の機体が先に進み俺の機体は離された。

 だからこそ、何が起きたのかはハッキリ見えなかった。


 俺はそのまま機体の姿勢を制御し。

 地面へと不安定な姿勢で着地し滑っていく。

 何とか停止し大凧先輩を見れば、建物の中へと入って行った……今のは……。


 スパーク音が確かに聞こえた。

 視界の端で強い光が出ていたのも記憶している。

 離れる間際に見えたのは、あの背中の何かが展開される瞬間だった。

 確実にアレは何かの武装で、俺が肉薄していた状態で使用したのなら……接近戦用。それも切り札のようなものか?


 一撃必殺級であるのなら、接近戦を挑むのは自殺行為に等しいかもしれない……そうか、先輩が言っていた言葉の意味はこれか。


『お前が大凧に勝てる方法はこれだけだが……場合によっては試合を早く終わらせる結果になるかもしれん。お前の敗北でな』

『それって、どういう……』

「……確かに、危険だな」


 一撃必殺の武装を隠し持っていた敵。

 そんな相手に肉弾戦を挑もうとしている俺……馬鹿にもほどがあるな。


 俺は冷汗を掻きながらも、武装を構えて周りを警戒する。

 今度は俺の方が、大凧先輩からの奇襲を警戒する事になった。

 が、この展開も計算の内だ。


 そんな事を考えていれば、大凧先輩の声が聞こえて来た。


《ははは! 流石に舐め過ぎていたようだな。以前と比べて、多少は戦えるようにはなったらしい……だが、この俺を倒せるレベルでは無い》

「それはどうかな!!」


 俺は先輩を挑発するように言葉を返す。

 すると、先輩が通信機越しににやりと笑ったような気がした。


 先輩を警戒しながらレーダーを使い――背後から反応があった。


「……!」


 俺はすぐに後方へと銃口を向ける。

 間髪入れずに銃弾を放てば――何もいない。


 銃弾は建物の壁に撃ち込まれただけだった。

 もう一度レーダーを使って――今度は右か!


 瞬時に銃口を向けて発砲――が、やはり誰もいない。


「何でだ!?」

《ふふふ、お前はまだまだだ。レーダーを頼っての戦闘であれば、こんな目くらましにさえ騙される――ほら、此処だぞ!!》

「このォ!!」


 レーダーに反応があった。

 そちらに向いて――いない。


 混乱しながら舌を鳴らす。

 すると、殺気のようなものを感じた。

 俺は咄嗟に横へと飛ぶ。

 瞬間、頭上から何かが勢いよく飛来し――激しい閃光が走る。


 バチバチと激しい電流が駆け巡る。

 大地を伝わり、足を通して機体に流れ込んできた。

 が、ダメージはそれほどない。

 体を痺れさせながら、俺は向きを変えて銃口を先輩のレインに向ける。

 今度は狙いをつけようとして――目の前に青い光が迫る。


「――ッ!?」

《遅いッ!!》


 先輩は片手で俺のライフルを弾き飛ばす。

 手から武器が離れてくるくると舞う。

 そうして、先輩の隠された武器が展開されていて――鋏のようになったそれが俺の機体を掴んだ。


「――まず!?」

《死に晒せェェ!!》


 怖気が走る。

 逃れようとした瞬間――視界が弾けた。


「――アアアアァァァァァ!!!!?」


 バチバチと耳元で激しい電流の音が鳴り響く。

 口を大きく開けながら、全身を焼け焦がすほどの熱に耐える。

 リアルの肉体であれば皮膚は焼けただれて、穴と言う穴からあらゆるものをぶちまけていた。

 そう感じる程の痛みと熱であり――盾で鋏を強く打ち付けた。


《なんだとッ!?》

「――ぐうぅぅぅ!!!」


 ガンガンと鋏を叩けば、一瞬だけ拘束が緩む。

 その瞬間、身を屈めて回し蹴りをがら空きの胴に打ち込んだ。

 先輩のレインは後方へと吹き飛び。

 俺は片膝をつきながら、片手で胸の当たりを抑えた……いでぇぇ。


 意識がバチバチとまだ弾けているようだ。

 一瞬でも気を抜けば意識が飛びそうで。

 全身が鉛のように重く、体が思う様に動かせない。

 今の攻撃だけで、かなりのダメージを受けたのは確かだ……が、生きてる。


 重くとも機体は動かせる。

 朦朧としているが意識はまだある。

 戦える状態であり、すぐに立ち上がった。

 見れば、先輩のレインは自らの武器の電撃鋏を見つめていた。


《……お前、何故、生きている?》

「……どういう、意味、っすかねぇ?」

《……まぁいい。次で――詰みだ》


 先輩は隠していた筈の武装を展開する。

 背中から二つの鋏が広がり、激しいスパーク音を奏でていた。

 両手には火炎放射器であり、接近すればあの鋏が待っている。

 中々に理に適った戦闘スタイルで――俺は笑う。


「ピンチを、チャンスに――逆境を、乗り越えるッ!!」

《あぁ? 何を言って――何だッ!?》


 先輩が何かを言おうとした。

 が、俺はそれを遮るように――爆弾を起爆した。


 二か所のポイントを爆破した。

 瞬間、大凧先輩の近くにあったビルが奴に向かって倒れる。

 大凧先輩は咄嗟に後方――ではなく、此方に向かってきた。

 

 先輩の火炎放射器が火を吹く。

 俺は盾を構えてそれに耐える。

 耐えて、耐えて、耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて――上に飛ぶ。


《なにィ!》

「――今だ!!」


 俺は仕掛けたものを起動する。

 瞬間、俺が立っていた場所に埋まっていた――凍結剤が噴出した。


 先輩は驚いていた。

 が、流石は玄人であり、あの時のような驚異的な加速でその場から逃れた。


 先輩は地面を滑っていき――姿勢が乱れた。


《――くぅ!?》


 凍結剤とは、読んで字の如く触れたものを一時的に凍結状態にするものだ。

 レインのような巨大なメカであろうとも、瞬時に凍らせてしまう優れもので。

 大凧先輩は一瞬であったが、確実にアレで動きは鈍っていた。


 考えたさ。

 素人なりにどうすれば勝てるかを。

 演技は苦手であり、誘導何て苦手だ。

 でも、俺は苦手を克服し――此処へと先輩を連れて来たッ!!


 傷だらけであり、一歩間違えれば死んでいたが――それでも、成功だ。

 

 大凧先輩の動きがかくついている。

 俺はそれを見て一気に先輩に接近する。

 先輩がする事はコアの出力を上げる事による熱量の増加だ。

 それにより強制的に凍結状態から脱する事だ。

 だが、それをすれば一瞬であろうともシステムの変更で――隙が生まれるッ!!


《――!》

「そこだァ!!!」


 俺は先輩へと接近し――盾を振り回し、背中の武装をへし折る。


「――くそッ!!」

《やるなァァ!!!》


 俺が狙ったのはコックピッドだった。

 が、あの一瞬で先輩は機体を大きく下げて来た。

 避けられないからと機体そのものを下げたのだ。

 タイミングがずれていれば、俺が攻撃の軌道を修正していたが。

 先輩の戦闘に関する勘は凄かった。

 それでも、切り札だけは破壊してやった。


 しかし、その僅かな隙に先輩の機体の熱量が上がり――俺はその場から離れる。


 一瞬で火炎放射を向けて攻撃してきた。

 炎の波が辺り一帯に広がっていった。

 何とか盾で受けたが……もう、ダメだな。


 盾の表面はずくずくに溶けていた。

 耐熱コーティングは剥がされて、中の骨組みが露になっている。

 おまけに大きな亀裂が走っていて、一瞬であろうとも火炎攻撃には耐えられないと分かる。

 ライフルを失い、盾は死にかけで。

 肩のミニガンはオートで無ければ使う事すら出来ない。

 が、あの電撃攻撃によってオートでの攻撃も出来なくなっていた。

 

 ピンチであり、絶体絶命で――燃えて来る!


 俺は笑みを深める。

 そうして、復活した先輩の機体を見つめて――地面に向かってスモークグレネードを放つ。


《同じ手をッ!! 二度もッ!!》


 先輩の声が聞こえた。

 俺は白煙の中で全力で駆ける。

 スラスターも併用し、風となって先輩の周りを翔けた。

 その間も、スモークグレードの残弾が尽きるまで放ち続けた。

 相手はレーダーを使っている。

 煙程度ではレーダーを誤魔化す事は出来ない――だったらッ!


 俺は盾を投げ飛ばす。

 上であり、そのまま肩部のミニガンをパージして――前方に向かって投げた。


《甘いわッ!!》


 先輩の声と共に目の前から炎の波が押し寄せる。

 俺は地面を転がり、間一髪で避けた。

 タイミングが大事だ。

 最後の大詰めであり、これが肝心だ。


 心の中でカウントをする。

 3、2、1――今だッ!!


 姿勢を低くし、レーダーが指し示す場所へ向けて走る。

 瞬間、先輩の慌てる声と共に盾が地面に落ちる音が聞こえた。

 俺は煙の中を駆けて行く。


 走って、走って、走って――後方上部に視線を向けた。


《――なッ!?》

「同じ手は二度も、だったよなァ!!!」


 盾に驚いたふりをする事でその場所に留まっていると俺に知らしめていた。

 が、何度もレーダーを欺く戦術を先輩はしていた。

 だったら、今回もそれを使わない手はない。

 レーダーを欺く戦法のやり方は考えれば分かる事だった。

 レーダーは敵の熱源などを探知して相手の位置を特定するものだ。

 音響によるものもあるだろうが、俺のものは熱源だ。

 つまり、先輩は敢えて熱源反応を高める事で自らの位置をレーダーに捉えさせて。

 そこから瞬時に跳躍し移動して、すぐにスラスターなどの機能を停止するんだ。


 完全停止であり、その間はレーダーは敵の反応を追えない。

 単純だが、やろうとすればかなりの技量を要する。

 看破されれば、攻撃のチャンスを生み出すものだが。

 先輩は俺を素人と侮って何度も使って――俺にチャンスを与えた。


 上を飛ぶ先輩の機体は煙の中から微かに見えている。

 スラスターが完全停止しているのだ。

 復旧させるには数秒を要する。

 その間は回避は出来ない。

 俺はそんな先輩を見つめながら、片手を向けて――ワイヤーを射出する。


 先輩の胴体を狙ったワイヤーは先輩の機体の腕に絡まりアンカーで固定される。

 俺はそれを確認し、ワイヤーを思い切り引っ張る。

 すると、先輩の機体はスラスターによる制御も出来ず――地面を転がる。


 先輩の小さな悲鳴を聞く。

 俺は一気に駆けだして、大きく飛び上がる。

 そうして、先輩の機体に向かって拳を構えた。


《このォ――んがぁ!?》


 先輩が火炎放射器を構えて来た。

 瞬間、俺はサブスラスターで機体を回転させる。

 ワイヤーを思い切り引っ張れば、先輩の機体は一瞬だけ浮いた。

 すると、定めていた狙いは逸れて――俺は一気に距離を詰めれる。


「喰らえェェェ!!!!」

《うぐぁぁぁ!!!?》


 先輩の機体のコックピッドを狙って――拳を叩きつけた。


 甲高い音が鳴り響き、俺の拳の形にコックピッドが変形する。

 先輩のレインはそのまま後方へと軽く吹き飛ぶ。

 先輩の悲鳴と共に、先輩の声が聞こえたが。

 呂律が回っていない――先輩の言った通りだ!


《いいか。どんな形であれ、最終的にはお前は拳による肉弾戦で大凧に挑む事になる。だが、拳だけで大凧のレインを鎮める事は現状では不可能だ。だからこそ、お前が狙うのは――コックピッドのみだ》

《コックピッドを狙う? 潰すんすか?》

《いや、違う。コックピッド内の大凧の――“意識を奪うんだ”》


 先輩は言っていた。

 アナザーワールド内のメカ・バト戦では。

 痛覚などはある程度は制限がされていると。

 強い痛みや苦しみはそれだけでストレスとなり。

 最悪の場合、心肺機能を停止させる恐れがあるからと。

 だが、そんな中では振動などに対する制限だけは加えられなかった。

 それは音や振動に関してだけは、メカ・バト戦にて大いに関係するからで。

 そんなものを制限すれば、敵の発見や対処が確実に遅れてしまうからだ。

 だからこそ、進んで制限を加えようとする人間は限りなくゼロに近い。


 

 ――当たっていた。大凧先輩は振動に対して制限を加えていない!


 

 俺はそう認識し、もう一度腕を振るい――叩きつけた。


《あごぁ!? ふ、そぉぉ!!》

「うぁ!?」


 大凧先輩のレインが動く。

 スラスターを全力で噴かせて高機動戦を仕掛けて来た。

 空へと俺たちの機体は舞い上がる。

 高速で飛行する事によって、凄まじいGが発生し機体と疑似的に一体化した俺には強い負荷が掛かる。

 俺は歯を食いしばってそれに耐えながら、拳を振り上げて――先輩のレインが回転する。


《落ちろォォ!!!》

「うあぁぁ!!?」


 大凧先輩は形振り構わなない。

 必死になって派手な動きをして。

 建物へと接近し、壁に俺を押し付けて来た。

 ガリガリと機体の背中で壁を削っていく。

 損傷を知らせるアラートが頭の中で鳴り響き。

 俺は痛みに耐えながら、振りあげた拳を――叩きつける。


《げぼぁ!》


 大凧先輩が吐いた。

 瞬間、機体が大きく揺れて地面へと落下していく。

 俺は寸での所で体勢を変える。

 そうして、大凧先輩のレインを地面にぶつからせる。

 ガリガリと地面を削っていき、俺はその上で大きく足を上げて――叩き込む。


 何度も何度も蹴り続けた。

 ガンガンと音が鳴り響き。

 その度に大凧先輩のうめき声が聞こえていた。


「ウオォォォォォォッ!!!!」

《――舐ぁぁぁめるなァァァ!!!》


 大凧先輩が叫び――閃光が走る。


 

 一瞬だった。

 

 一瞬であり、両手で咄嗟にガードをすれば。

 

 全身に強い衝撃が走って――宙に浮いていた。


 

「――かはぁ!?」

 


 そのまま落下していき、ごろごろと地面を転がっていく。

 トラックの残骸にぶち当たり停止し。

 俺はぐらぐらと揺れる視界の中で大凧先輩のレインを見た……あれ、は?


 見れば、先輩のレインの装甲が剥がれていた。

 下にあった基礎フレームが丸見えであり、外装はゼロだ。

 むき出しの状態はひどく危険であるが。

 アレのパージによる攻撃で俺のワイヤーは切れて。

 俺自身にもかなりのダメージが入った。

 更に機体が重くなっており、一分も動けないかもしれない。


《く、くくく、どう、だ、これ、で、貴様、は……ぅぁ!》


 先輩は笑う。

 立ち上がろうとして――地面に倒れる。


 効いている。

 確実にダメージは入っていた。

 機体ではなくパイロットにであり。

 もうほとんど限界に近い筈だ。


 

 勝てる、勝てるんだ――だったらァ!!


 

「根、性ォォォォォ!!!!」

《な、にぃ!?》


 

 俺は立ち上がる。

 機体全体が激しくスパークし。

 装甲の裂け目からオイルが漏れ出していた。

 視界にはノイズが走っており。

 稼働時間の限界も残り僅かだ。

 それでも気合で立ち上がり、俺は拳を構える。


「――――ッ!!!!!!!」

 

 俺は叫ぶ。

 強く叫びながら、拳を振り上げて――走る。


 大凧先輩はレインを動かそうとしていた。

 が、感覚が狂っているんだろう。

 上手く操作が出来ず、レインはおかしな挙動をしていた。

 俺はそんな先輩に向かって走る。


 

 走って、走って、走って――飛んだ。


 

 この一発に。

 

 最後の一撃に。

 

 幕を下ろす為に――拳に力を込める。



「――チェストォォォォォ!!!!!!」

《あああぁぁぁぁぁ!!!!!》



 俺はそのまま拳を振り下ろし――コックピッドにぶち込む。


 むき出しのコックピッドに拳がメリメリとめり込む。

 そうして、大凧先輩の悲鳴が響き渡り――ぶつりと消えた。


 瞬間、俺のレインは活動限界を迎えて――――…………




 …………――――目を開ける。


 会場に戻ってきていた。

 周囲を見れば観客はいるが……静かだ。


「……結果は?」


 俺はゆっくりと上を見る。

 すると、そこにはWINNERという文字と――俺のプレイヤーネームであるジンが書かれていた。


「「「う、うぅ」」」

「……お、おぉ」

「「「ウオォォォォォォォォォォ!!!!!」」」

「やったぁぁぁぁぁ!!!!!」


 会場に巻き起こる歓声。

 耳を裂くほどの大歓声であるが。

 俺も嬉しさから絶叫していた。

 両手の拳を高く突きあげて、俺は全身で喜びを表す。


 嬉しくて、嬉しくて――大凧先輩が俺の前に立つ。


「……ジン……俺の負けだ」

「……先輩……ありがとうございました!!!」

「……何故、礼を言う?」

「何故ってそんなの――滅茶苦茶楽しかったからに決まってるじゃないっすか!!!」

「……ほぉ」


 俺は目を輝かせながら大凧先輩に説明する。

 メカ・バトでのちゃんとした試合で。

 互いに死力を尽くして戦ったのだ。

 ボロボロでも、互いに諦めずに戦い続けた。

 最高の試合であり、漫画やアニメでも中々に見れない展開で――


「わ、分かった。もう分かった……ふぅ、お前は変わっているな」

「……? そうっすかねぇ? ……いやぁでも良かったぁ……あ! 約束は守ってくださいね?」

「ふっ、分かっている。お前との奴隷契約は終了」

「――だからぁ! そっちはどうでもいいんですよ! もう一個ですって!」

「……謝罪だったか……本当に変わっているな。自分よりも他人とは……いいだろう。この俺は約束を破らない。今日にでも謝罪に行こう」

「ふぅ、なら安心っすね……因みに、先輩は何をしたんですか?」

「…………は?」


 先輩は目を点にした。

 俺はあの兄弟から、おぞましい事をされて弟の精神が壊れたとだけ聞かされた事を伝えた。

 すると、大凧先輩はあぁと呟く……ん?


「……実はな。俺はこう見えて……裁縫が得意なんだ」

「へぇ! それはすげぇっすね! で、それが何か」

「――女装だ」

「……はぇ?」

「だから、女装をさせたんだ。そいつにな……と言っても、本気で嫌がっている感じはしなかった。ちゃんと報酬も支払った……が、その結果アイツはそっちの気に目覚めて……後は分かるな?」

「………………あぁぁぁ、そういう」


 俺はようやく理解した。

 あの兄弟が語っていたおぞましい事。

 そして、弟さんの精神崩壊の内容。

 それを聞いたからこそ、大凧先輩に謝罪をさせていいものかと悩む。


「……まぁ気にするな。確かに、やらせた俺にも非がある。女性を使えたら良かったがな……その、話し辛かったからな。逃げられるし」

「そ、そのぉ……すみません!」


 俺は先輩に頭を下げる。

 先輩は笑いながら手をひらひらとさせて去っていく。


「……また、俺と戦ってくれ……次は、俺が勝つ」

「――はい!! またバトルしましょう!!」


 俺はニッと笑って拳を握る。

 先輩はそのまま光の粒子となって消えて行った。

 俺は静かに息を吐き、そのまま俺も戻ろうとして――通知が飛んできた。


 メッセージであり、送り主はゴリ先輩だ。

 早速メッセージを開いて――


 

《お前を正式に我が部のメンバーとする。放課後に、旧校舎の一階、1-5教室に来い……歓迎してやろう》

「……つ、遂にかぁ」


 

 俺はメッセージを閉じる。

 そうして、天を仰ぎ見ながら考える……い、行かないといけないよな?

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