表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸運で不運な灰色賢者  作者: いちた
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/44

1章 エピローグ 盤上の駒


その夜、騎士団長ヴァレリウスの私室の扉が、控えめにノックされた。



「…入れ」



入ってきたのは、彼の副官を務める若い騎士だった。その目は赤く腫れ、気丈に振る舞ってはいるが,消耗しきっているのが見て取れた。


「団長…本日、『偽りのダンジョン』内の掃討作戦が完了いたしました」



「そうか。…ご苦労だったな」



ヴァレリウスは、執務机から静かに立ち上がると、窓辺に立つ部下の隣に並んだ。

その大きな手が、若い騎士の肩を力強く、しかし優しく叩く。


「…お前の親友も、先遣調査団の一員だったな」


その言葉に、副官の肩が微かに震えた。


「はっ…はい。あいつは、誰よりも勇敢な騎士でした。今回の事件解決の報を聞き、あいつも浮かばれるかと…」

「ああ、もちろんだ。彼の死は、決して無駄ではない。この国を守るための、尊い礎だ」



ヴァレリウスの言葉には、部下を心から労わる温かみがあった。誰もが彼を「父」や「兄」のように慕う理由が、そこにあった。



「今はゆっくり休め。お前が彼の分まで、この国を背負うんだ」

「…! はいッ!」



ヴァレリウスの激励に、若い騎士は涙をこらえながら力強く頷き、敬礼をして部屋を去っていった。


一人になったヴァレリウスは、再び窓辺に立ち、月明かりに照らされた王都を見下ろす。



やがて、音もなく現れた影が、彼の背後で膝をついた。彼の腹心だ。

「…報告を」



ヴァレリウスの声から、先ほどまでの温かみは消え失せ、冬の湖面のような静けさと冷たさだけが残っていた。



「はっ。ご命令通り調査しましたが、先遣調査団三隊の遺体は、一体も発見できませんでした」

「…だろうな」


ヴァレリウスは、表情一つ変えない。


「我らが『同志』たちは、優秀な騎士の魂ほど、儀式の『贄』として有用であることを知っている。無駄にはすまい」


その声には、部下の親友の死に対する哀悼の念など、微塵も感じられなかった。


腹心が続ける。

「儀式は、謎の爆発により失敗。主だった術者たちも…」


「ああ、聞いた。そして、その原因が『灰色の賢者』…日雇いの少年だった、ともな」


ヴァレリウスは忌々しげに、私室に置かれたチェス盤の駒を一つ、指で弾き飛ばした。

「我々の長年の計画を、たった一人で…。ありえん」



「その少年…フィンは、セラフィナ様の強い推薦により、王国の最高顧問に。現在、王宮内で保護されています」


ヴァレリウスは、床に落ちた駒を拾い上げると、盤上の全く違う場所…キングの隣に置いた。


「(最高顧問…か。セラフィナめ、とんだことをしてくれた。最も警戒すべき駒を、よりによって我々の本拠地しろの心臓部に招き入れるとは)」



彼は、セラフィナがフィンを記憶し続けていたことにも、眉一つ動かさない。彼女の血筋に眠る「世界の理」への抵抗力を、彼は既に知っているからだ。



「(だが、好都合でもある。常に監視下に置ける)」

ヴァレリウスは、腹心に命じた。


シャドウに伝えろ。あの少年…フィンを徹底的にマークしろ、と。彼が何者で、あの力の正体が何なのか…根こそぎ探り出すのだ。セラフィナにも気づかれぬよう、慎重にな」



彼は再び、懐から古びたロケットペンダントを取り出した。その中には、今は亡き妻子の笑顔が収められている。


「せいぜい盤上をかき乱してもらおう。…すべては、我が悲願のために」

その呟きは、誰に聞かせるでもなく、夜の闇に静かに消えていった。

エピローグまで描き終わりましたああああ


もしよければブックマークで応援ください。。!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ