表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸運で不運な灰色賢者  作者: いちた
第二章 王宮の影と、最初の“神託”

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/44

2人の賢者


その夜、王宮の一室。


騎士団長ヴァレリウスは、静かに盤上の駒を動かしていた。


黒と白の石が、複雑な模様を織りなす、東方の盤上遊戯「囲碁」。

彼が、思考を整理するために好んで用いる孤独な趣味だった。



彼の前に、影が音もなく滑り出た。ヴァレリウスの腹心であり、王宮内に張り巡らされた諜報網「シャドウ」を束ねる男だ。


「…報告を」

ヴァレリウスは、盤上から目を離さずに言った。


「はっ。本日午後、セラフィナ様が最高顧問フィンの『神託』に基づき、王宮書庫へ。現在、オルドリン公爵の関連資料を調査中です」

「…そうか。私が『助言』した通りの動きだな」

「はっ。すべては閣下のお考えの通りに」



ヴァレリウスは、黒い石を一つ、盤上に置いた。パチリ、と硬質な音が静寂に響く。


「して、肝心の『神託』とやらは。最高顧問は、何と言っていた?」


「はっ。医務室にて、ひどくうなされた後、『古い、木の匂い』『蜘蛛の糸』とだけ…。その後、激しい頭痛を訴え、再び意識が混濁した模様です」


その報告に、ヴァレリウスは初めて盤上から顔を上げた。その瞳には、興味と、そしてわずかな警戒の色が浮かんでいる。



(古い木の匂い…書庫。蜘蛛の糸…陰謀。あまりに直接的すぎる比喩だ。子供の遊びのようだな)



彼は内心で嘲笑する。だが、同時に、底知れない不気味さも感じていた。


(しかし、結果として、セラフィナは書庫へとたどり着いた。私の誘導があったとはいえ、あの少年は、確かに真相への『道筋』を指し示した…)


ヴァレリウスは、自らが「世界から愛された存在」として持つ、世界の理への微かな干渉力を自覚している。


それは、鍛え抜かれた直感や、圧倒的な観察眼として彼の内に顕現していた。


彼は、その力と、自らの知謀のすべてを使って、この巨大な陰謀の盤面をコントロールしてきた自負がある。



しかし、あの少年、フィンは違う。



ヴァレリウスの腹心「影」からの報告を統合すると、ひとつの異常な結論が浮かび上がる。



• 彼の力は、完全に制御されていない。


• 彼の力は、本人の意思とは無関係に、生存本能に直結して発動する。


• そして、彼の力は、未来か過去か、あるいはその両方か、何らかの「情報」を直接読み取っているフシがある。



(私のように、盤面を読み、二手三手先を計算して『最適解』を導き出すのではない。奴は、盤面の外側から、直接『答え』そのものを盗み見ているのか…?)



もしそうだとしたら、それはヴァレリウスが信奉する「知謀」や「戦略」とは、全く異質の力。ルール無用の、反則技だ。


ヴァレリウスは、白い石を手に取り、先ほど自分が打った黒石のすぐ隣に置いた。


それは、相手の勢力を封じ込め、殺しにいく、厳しい一手だった。

「(偶然を操り、未来を盗み見る…か。面白い)」

彼の口元に、初めて、獲物を見つけた捕食者のような、獰猛な笑みが浮かんだ。



「(私と同質の力を持ちながら、その使い方を知らん、赤子同然の存在。あるいは、私とは全く違うルールの下で戦う、未知のプレイヤー…)」


彼は、フィンを「セラフィナに担がれただけの少年」という評価から、**「自分と同じ盤上で戦う資格のある、もう一人の『賢者』」**として、明確にライバル認定した。



それは、この世界でただ一人、ヴァレリウスだけがたどり着いた、最も正しく、そして最も歪んだフィンへの評価だった。



「引き続き、監視を続けろ。あの少年が次に何を『視る』のか…興味深い」

「はっ」

影が闇に消える。



影が闇に消える。

一人残された部屋で、ヴァレリウスは、盤上で始まったばかりの、黒と白の石の殺し合いを、静かに見つめていた。


彼は再び、懐のロケットペンダントを握りしめる。

(見ていてくれ、リリア。お前たちを奪ったこの理不尽な世界を、私は必ず…)

その誓いだけが、彼の心を、復讐という名の闇の中で、燃え上がらせ続けていた。



イケおじが動いてまいりました。。


この物語の続きを読んでみたい!」「応援したい!」と思っていただけたら、ぜひ画面下の**【ブックマーク登録】と【評価】**で応援をお願いします!それがモチベーションになりますうぅぅ( ; ; )

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ