表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸運で不運な灰色賢者  作者: いちた
第二章 王宮の影と、最初の“神託”

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/44

盤上の支配者


評議会の混乱は、最終的に騎士団長ヴァレリウスの一声によって収められた。


「…侍従長の精神は混乱しているようだ。ひとまず牢に入れ、改めて聴取する。セラフィナ殿、君の功績は認めよう。隠し通路を発見し、侍従長の関与を暴いた。だが、決め手に欠けるのもまた事実。引き続き、賢者殿と共に捜査を許可する」


その裁定は、セラフィナを罰するでもなく、かといって完全に認めるでもない、あまりに巧みで公平なものだった。フィンは、その冷静な声の裏に潜む、底知れない何かを感じていた。


自室に戻ったセラフィナは、一人、苦悩に沈んでいた。

(証言が、消えた…。私の目の前で。あんなことが、ありえるというのか…)


侍従長の豹変。それは、彼女が信じる論理と理性の世界を根底から覆す出来事だった。

(賢者殿の周りでは、世界の常識が歪められる。彼は一体、何者…?)


疑念ではない。彼女のフィンへの信仰は揺らいでいない。

しかし、その信仰の対象が、自分の理解を遥かに超えた存在であるという事実に、彼女は一種の恐怖を感じていた。



その時、部屋の扉がノックされた。



「セラフィナ様、騎士団長閣下がお見えです」


「…少し、よろしいかな」


入ってきたヴァレリウスは、いつものように穏やかな、しかし威厳のある表情をしていた。彼は、思い詰めた様子のセラフィナを見ると、父親のような優しい声で言った。



「思いつめているようだな、セラフィナ殿。君の焦りは分かる。だが、事を急いては真実を見誤る」


「しかし、団長! 私は確かに、この目と耳で…!」


「ああ、分かっている」


ヴァレリウスは、彼女の言葉を遮るように、一枚の古い羊皮紙をテーブルの上に広げた。


「君の報告を聞き、気になって調べてみた。オルドリン公爵が、その最期の日々、王宮書庫の奥深くで、ある古代の紋章について調べていたらしい」


広げられた羊皮紙には、複雑な模様が描かれている。それは、フィンの口走った「神託」とは、全く関係のないものに見えた。



「これは…?」


「分からん。だが、公爵ほどの人物が、死の直前まで執着していたものだ。あるいは、今回の事件と何か繋がりがあるやもしれん」



ヴァレリウスは、それだけを言うと、セラフィナの肩をポンと叩いた。


「真実の探求とは、時に回り道も必要だということだ。…期待しているぞ」


彼はそれだけを残し、部屋を去っていった。


セラフィナは、残された羊皮紙を食い入るように見つめた。

(騎士団長が、私のために…? いや…)

彼女の脳裏で、何かが閃く。

(…これも、賢者殿の計画の内…!)



彼女は、勝手に、そして完璧に勘違いした。



(私が行き詰まることを見越し、賢者殿が、何らかの手段で騎士団長を動かし、このヒントを私に与えてくださったのだ! そうに違いない!)



(この紋章が、きっと次の神託に繋がる鍵なんだ!)



セラフィナの部屋からでた、ヴァレリウスは一人、静かに息をついた。その指が、まるで祈るように、首から下げた古びたロケットペンダントにそっと触れる。

(…リリア。君が愛したこの世界は、あまりにも狂気に満ちている…)

彼の脳裏に、今は亡き妻子の笑顔がよぎる。その一瞬だけ、彼の瞳に宿る冷徹な光が、深い悲しみの色に揺らいだ。

しかし、それも束の間。彼はすぐに表情を引き締め、次の行動へ歩みを始めた



一方その頃、医務室のベッドの上で、フィンは静かに目を覚ましていた。


あの評議会の後、彼は精神的な疲労から、再び眠ってしまっていたのだ。


(…疲れた。もう、なにもかも嫌だ…)


彼は、静かにベッドから抜け出すと、窓の外を見つめた。高い城壁。厳重な警備。どうやっても、ここからは逃げられない。



(…かえりたーい…)



その呟きは、誰の耳にも届くことなく、夜の闇に消えていった。

彼はまだ知らない。

彼のあずかり知らぬところで、彼の「手柄」とされるものが、また一つ増えてしまったことを。



そして、その全てが、ヴァレリウスという恐るべき支配者の掌の上で、巧妙に踊らされているだけだということを。

本日も読んで頂きありがとうございます。。

見てもらえることでもはや震えてきます。。



この物語の続きを読んでみたい!」「応援したい!」と思っていただけたら、ぜひ画面下の**【ブックマーク登録】と【評価】**で応援をお願いします!それがモチベーションになりますうぅぅ( ; ; )

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ