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幸運で不運な灰色賢者  作者: いちた
第二章 王宮の影と、最初の“神託”

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セラフィナの超解釈


フィンが医務室へと運ばれ、オルドリン公爵の寝室に残されたのは、重苦しい沈黙と、深まる謎だけだった。


「…使いものにならんな」


貴族の一人が、吐き捨てるように言った。

「恐怖のあまり卒倒するとは、なんと情けない。あれが本当に賢者なのか?」

「セラフィナ様の思い過ごしだったのでは…」



侮蔑と失望の声が、広間に満ちていく。

騎士団長ヴァレリウスは、表情を変えずにその様子を見つめていた。

しかし、セラフィナは、そんな周囲の声など一切耳に入っていなかった。



彼女は、医務室へ向かう前に衛兵から受け取った羊皮紙――フィンが気を失う直前に口走った、三つの言葉が記されたメモ――を、鬼気迫る表情で見つめていた。


『歌う鳥』


『赤い宝石』


『壁から伸びる影』



(これは、ただのうわ言ではない。彼が見た、『真実』のかけらだ)


彼女は確信していた。だが、意味が分からない。まるで、解読不可能な暗号だ。


「…リアン」


セラフィナの呼びかけに、若い魔道士がはっと顔を上げる。


「オルドリン公爵家の紋章は何でしたか?」


「え…? 紋章、ですか。確か…『竪琴を奏でる鳥』だったかと…」


その言葉に、セラフィナの瞳が鋭く光った。

『歌う鳥』。

一つ目の神託が、繋がった。


彼女はすぐさま立ち上がると、再び公爵の寝室へと引き返した。残された騎士たちが、困惑しながらその後を追う。



戻ってきた事件現場。

セラフィナは、他の目もくれず、部屋の壁に飾られた巨大なタペストリーの前で足を止めた。

そこには、オルドリン公爵家の紋章が見事に刺繍されている。竪琴を奏でる、美しい『歌う鳥』の紋章が。


「これか…」騎士の一人が呟く。


セラフィナは、タペストリーに近づき、その鳥の意匠を指でなぞった。

そして、鳥の目の部分に嵌め込まれていた、指の爪ほどの大きさの『赤い宝石ルビー』を、じっと見つめた。


「歌う鳥…。赤い宝石…。二つは繋がった。だとしたら、最後の一つは…」

『壁から伸びる影』。



彼女は、タペストリーの裏の『壁』を、拳でこんこんと叩いていく。鈍い音が響くだけで、何の変哲もない石壁にしか思えない。



「セラフィナ様、いくらなんでもそれは…」

騎士が戸惑いの声を上げた、その時だった。


セラフィナの指が、鳥の刺繍の真裏にあたる壁の一点を、強く押し込んだ。



ゴゴゴ…。



わずかな音と共に、壁の一部が沈み込み、タペストリーの裏に、人が一人やっと通れるほどの隠し通路の入り口が姿を現した。

その奥からは、カビ臭い、冷たい空気が流れ出してくる。



「…隠し通路…! まさか、こんな場所に…!」

「犯人は、ここを通って…!」



騎士たちが驚愕の声を上げる。完全だと思われた密室は、これで破られた。


リアンが、信じられないという顔でセラフィナに問う。

「セラフィナ様…なぜ、この場所が…?」



セラフィナは、暗い通路の奥を見つめながら、静かに答えた。


「私が見つけたのではありません。…賢者殿が、示してくださったのです」


彼女の脳裏には、フィンのあの常軌を逸した姿が浮かんでいた。


(彼は、あの場に立った一瞬で、この部屋の構造、紋章の意匠、そして、この隠し通路の存在まで、全てを“視て”いたというのか…)



その人智を超えた洞察力に、セラフィナは改めて戦慄した。

フィンの言葉は、うわ言などではない。



それは、凡人には理解できない、あまりにも高次元のヒント…「神託」なのだと。



彼女は、まだ見ぬ犯人への怒りと、そして、灰色の賢者への揺るぎない確信を胸に、暗い通路の奥を睨み据えた。


「追跡します。賢者殿が示してくださった、この道を」


その声には、もはや一片の迷いもなかった。

ミステリー感をもっとだしたい。。。


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