セラフィナの超解釈
フィンが医務室へと運ばれ、オルドリン公爵の寝室に残されたのは、重苦しい沈黙と、深まる謎だけだった。
「…使いものにならんな」
貴族の一人が、吐き捨てるように言った。
「恐怖のあまり卒倒するとは、なんと情けない。あれが本当に賢者なのか?」
「セラフィナ様の思い過ごしだったのでは…」
侮蔑と失望の声が、広間に満ちていく。
騎士団長ヴァレリウスは、表情を変えずにその様子を見つめていた。
しかし、セラフィナは、そんな周囲の声など一切耳に入っていなかった。
彼女は、医務室へ向かう前に衛兵から受け取った羊皮紙――フィンが気を失う直前に口走った、三つの言葉が記されたメモ――を、鬼気迫る表情で見つめていた。
『歌う鳥』
『赤い宝石』
『壁から伸びる影』
(これは、ただのうわ言ではない。彼が見た、『真実』のかけらだ)
彼女は確信していた。だが、意味が分からない。まるで、解読不可能な暗号だ。
「…リアン」
セラフィナの呼びかけに、若い魔道士がはっと顔を上げる。
「オルドリン公爵家の紋章は何でしたか?」
「え…? 紋章、ですか。確か…『竪琴を奏でる鳥』だったかと…」
その言葉に、セラフィナの瞳が鋭く光った。
『歌う鳥』。
一つ目の神託が、繋がった。
彼女はすぐさま立ち上がると、再び公爵の寝室へと引き返した。残された騎士たちが、困惑しながらその後を追う。
戻ってきた事件現場。
セラフィナは、他の目もくれず、部屋の壁に飾られた巨大なタペストリーの前で足を止めた。
そこには、オルドリン公爵家の紋章が見事に刺繍されている。竪琴を奏でる、美しい『歌う鳥』の紋章が。
「これか…」騎士の一人が呟く。
セラフィナは、タペストリーに近づき、その鳥の意匠を指でなぞった。
そして、鳥の目の部分に嵌め込まれていた、指の爪ほどの大きさの『赤い宝石』を、じっと見つめた。
「歌う鳥…。赤い宝石…。二つは繋がった。だとしたら、最後の一つは…」
『壁から伸びる影』。
彼女は、タペストリーの裏の『壁』を、拳でこんこんと叩いていく。鈍い音が響くだけで、何の変哲もない石壁にしか思えない。
「セラフィナ様、いくらなんでもそれは…」
騎士が戸惑いの声を上げた、その時だった。
セラフィナの指が、鳥の刺繍の真裏にあたる壁の一点を、強く押し込んだ。
ゴゴゴ…。
わずかな音と共に、壁の一部が沈み込み、タペストリーの裏に、人が一人やっと通れるほどの隠し通路の入り口が姿を現した。
その奥からは、カビ臭い、冷たい空気が流れ出してくる。
「…隠し通路…! まさか、こんな場所に…!」
「犯人は、ここを通って…!」
騎士たちが驚愕の声を上げる。完全だと思われた密室は、これで破られた。
リアンが、信じられないという顔でセラフィナに問う。
「セラフィナ様…なぜ、この場所が…?」
セラフィナは、暗い通路の奥を見つめながら、静かに答えた。
「私が見つけたのではありません。…賢者殿が、示してくださったのです」
彼女の脳裏には、フィンのあの常軌を逸した姿が浮かんでいた。
(彼は、あの場に立った一瞬で、この部屋の構造、紋章の意匠、そして、この隠し通路の存在まで、全てを“視て”いたというのか…)
その人智を超えた洞察力に、セラフィナは改めて戦慄した。
フィンの言葉は、うわ言などではない。
それは、凡人には理解できない、あまりにも高次元のヒント…「神託」なのだと。
彼女は、まだ見ぬ犯人への怒りと、そして、灰色の賢者への揺るぎない確信を胸に、暗い通路の奥を睨み据えた。
「追跡します。賢者殿が示してくださった、この道を」
その声には、もはや一片の迷いもなかった。
ミステリー感をもっとだしたい。。。
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