2 整備士、戦場に立つ
眼下には、崩れ落ちた街。
幾百年前には人の営みがあっただろう場所は、崩れ、砕かれていた。
地平線から昇る朝日に照らされて、不思議にも美しいと思えた。
それはそうと死ぬ!
こんな高さから落ちたら確実に死ぬ!
私は一般整備士であってインプラント入れたスーパー歩兵じゃないんだよ!
アイキャントフラァーイ!
「――――!」
顔に何かが思いっきりぶつかる。
痛みを堪えて確認すると、パラシュートが入ったバックパックだった。
あのババアが投げたのか!?
ありがたいけどこれお前のせいだからなクソが!
急いでそれを背負って、パラシュートを展開。
なんとか間に合ったようで、緩やかになった速度で降下していく。
ふぅ、危なかった。
とりあえず死因があんな間抜けな死に方じゃなくてよかった。
マンガのモブの死に方だよあんなの。
いや別に私は主人公張れるような人間じゃないけどさ?
死に方って大事じゃない?
だんだんと地面が近づいてきた。
わーい、じめんら。
生きてるって素晴らしいね。
生きてるだけで丸儲けってね。
ということで、急いでパラシュートを外します。
なんでかって?
撃たれてるからだよ!
私の数百メートル先に、4機のRIAが見えた。
その肩部の色は、オレンジ。
私の所属してる組織の機体は、青で統一されている。
きっと私を歩兵だと思ったんだろうね。
バカじゃねーの!?
こんなSFロボファイトやってる中で一般歩兵が生身でどうしろっつーんだよ!?
パラシュートに穴が開く。
RIA用アサルトライフルの弾なんて食らったら即死。
多少無茶だろうがふよふよ浮いてるボーナスバルーンになるよりマシだ。
着地時の衝撃を減らそうとして、なんとか構えて上手いこと着地。
左腕から変な音がしたけどそんなこと気にしてられない。
そこそこ痛いけどね!
対戦車ライフルレベルの銃弾ぶちこまれるよりは100倍マシだよきっと!
急いでその場を離れる。
幸いここは市街地。
建物に隠れればそう簡単には見つからないはず。
できるだけ戦場になりそうな地点から離れて、頑丈そうなビルの中に逃げ込む。
トラップや先客がいる可能性もあったけど、そこまでは運に見放されなかったみたいだった。
はぁ、死ぬかと思った。
ていうか生きてる方が不思議なくらいだ。
なんであの状態から死なないんだよ。
日頃の行いだね。
お天道様は全てを見てらっしゃる。
冗談はほどほどにして、真面目にどうしようか。
今飛空艦に戻るのは無理。
というか、今外に出ていったらロボファイトの余波で死ぬ。
薬莢とかが頭に降ってきただけでも即死でしょうねー。
RIAって私の5倍くらいはあるから。
ロボファイトこえー。
そしてそのロボ整備してる私すげー。
まぁそんな感じで、今私に出来ることはない。
それに、こっち側の戦力は敵さん側より多い。
確認できている情報だけだけど、敵さんのRIA4機に対してこっちは8機。
順当に戦えばこっちが有利だ。
順当に勝って、私を助けに来てもらわないと困る。
割とマジで困る。
私個人としても、恐らく戦況としても。
ただ何度も言うけど、今の私にできること無いんだよねー。
できることと言えば、できるだけ安全な場所にいるくらい。
それだって下手に動けないから、ただここで待つしかない。
…まぁ、いっか。
考えすぎても仕方がない。
というか考えてると嫌な想像しかできない。
アニメとかだったら私に見たいなモブ兵士が辿る先は分かるね?
凄惨な死ですよ。
そしてこの世界はアニメじゃない。
本当の戦争だ。
凄惨な死なんて名誉なことかもしれないし。
はい妄想終了!
これ以上考えても無駄!
つーか精神衛生上もうこれ以上は良くない!
こういう時は一回寝る!
これ人生の常識ネ。
てことで寝ます!
瓦礫を避けて、できるだけ平らな場所に横になる。
むき出しになったコンクリートはお世辞にも寝心地が良いとは言えないけど、それよりも眠気が強い。
思えば昨日あんまり寝てなかったな。
ていうかここ最近ずーっと働き詰めだった気がする。
メカニックにも休日を!
おやすみ!




