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11 パイロットと整備士

バタバタとしたご飯を終えて。

コンクリートの床に座って、おじさんと作戦会議を開催した。

議題は、まぁ色々ある。


「まず決めなきゃならねぇのは…」

「今後の身の振り方、ですかね」


まず私達は孤立無援のふたりぼっち。

おじさんは完全に一人だし、私も頼れるツテとか無い。

このままここに居座るのか、放浪するのか…


「嬢ちゃんはどう思うよ」

「私としては…しばらくここに居るのが良いかと思います」

「その心は」

「えと、あてもなく彷徨うのはリスクが大きいかと…」


せっかく拠点になるガレージもあることだし、むやみやたらに動くべきではない、と思うんだけれど。


「確かにリスクもあるし、この自慢のガレージが拠点になるってのは良いな」

「…ここを離れるメリットは、何でしょうか」

「安全だよ」


安全?

所属組織も無い私達を受け入れてくれる場所があると?


「まぁ、比較的ってだけだがな。さっき倒したのを覚えてるか?」

「…はい」


確か…MUSASI(ムサシ)とか言った戦闘特化型の歩兵装甲。

RIA(リア)とは違って、対歩兵装甲を目的としたもの。

何でここに居たかは知らないけど…


「ここはもう、誰かに目を付けられちまってる」

「…」

「俺はあの歩兵装甲がどんなもんだかは知らない。だが少なくとも個人が運用できるもんじゃあない」


頷く。

名前こそふざけてると思うけど、MUSASI(ムサシ)は並の機体じゃない。

どれだけコストがかかってるかは知らないけど、ワンオフ機だとしても相当のコストがかかってるはずだ。

もしも高給取りの傭兵だったとしても、それほどの戦力を派遣するくらいに狙われてるってことになる。


「なるべく早く、ここを離れた方が良さそうですね」

「ああ」


となると、問題はその先。


「あてもなく彷徨っても良いが…」

「出来ることは、傭兵らしい真似…くらいでしょうか?」

「傭兵ねぇ…」


悪くないと思うんだが、と前置きをして。

少し考えるそぶりをしてから、おじさんは後ろを向いた。


「少なくとも、RIA(こいつ)をなんとかしてやらなくちゃな」

「あっ」


装甲はズタボロ。

頭と右腕を失くして、関節部にも問題あり。

ついでに武器はでっかいブレード一本。


「あ、あははははは…」


これで傭兵とかできるわけないよねぇ…

いや、たかがメインカメラと右腕と関節部とブースターと武器と装甲をやられただけだ!

ほぼほぼ瀕死じゃないですかやだぁ!

逆になんで動いてるのさ!?

かがくのちからってすげー!


「そもそも」


我に返る。

おじさんが冷たい、というより複雑な感情をこめて話しかけてきた。


「嬢ちゃんは、傭兵なんかやりたくないだろ?」






「え、っと…」


否定しようとして、言葉に詰まる。

それだけではないとはいえ、この世界の傭兵の仕事はだいたい戦闘だ。

防衛、鎮圧、迎撃。

色々言い方はあるけど、結局のところ同じ場所にたどり着く。

人殺し。

相手が歩兵だろうと歩兵装甲だろうと、誰かを殺すことになる。

殺さないように捕虜に、なんてのは夢物語に等しい。

やらなきゃ死ぬ。

相手が殺す気で来ている以上、どっちかが死ぬまで殺し合わなきゃいけない。

そんなことを、私はやりたいのか?


「…俺は別にいいさ。だが嬢ちゃんを心中させるわけにはいかない」


言われて、また気分が悪くなった。

実際に戦うのは私じゃない。

それなのに、楽観的な思考で傭兵だなんて言ってしまった。

人殺しを忌避する癖に、命の恩人にそれを強要しようとした。

そんな私を知らないで、私の心配までしてくれている。

…いや、今はへこんでる場合じゃないか。


「…利己的ですけど、私には頼りがありません」


この人に、嘘はつきたくない。

感情論もあるけど、論理的に考えるならちゃんと理由がある。


「今の私は、貴方がいないと何もできません。RIA(リア)を動かすことも、銃を扱うことだって出来ません」

「…」

「私は貴方に守って欲しい。…だから、私は貴方をサポートします」


取引、というか何と言うか。

おじさんはRIA(リア)を扱えるけど、直せない。

私はRIA(リア)を扱えないけど、直せる。

私は守ってもらう代わりに、おじさんをサポートする。

おじさんはRIA(リア)を整備してもらう代わりに、私を守る。


「…これなら、心中ではないですよね?」

「………」


…一応、道理は通ってるはずだ。

私は守って欲しい。

おじさんは整備をして欲しい。

利害関係も一致してる。


…ただ、おじさんの返答は渋い声だった。


「俺は、もう長生きする気はねぇんだよ」

「…」

「俺一人生きてても死んでても、誰かが何かをするわけじゃあなかったからな」


苦悩とか、後悔とか。

私はおじさんのことをよく知らない。

けど、その告白からはいろいろな感情が感じられた。


「…あの」


…こういう言い方って、多分相当酷い言い方なんだろうけど。


「おじさんがどう言おうが、私は守って欲しいんです」


案の定というか、おじさんが少し驚いたような顔をした。


「私は歩兵装甲には乗れませんし、銃も扱えません」

「今おじさんが何処かに行っちゃったら、私は野垂れ死ぬのが目に見えてます」


もしくは捕虜とか奴隷とか。

ご飯がもらえるならまだマシかもしれない。


「おじさんが死んじゃったら、私はそのまま死んじゃいます」

「だから、死なないでください」


…自分で言ってても、相当酷いことを言ってると思う。

私の為に生きてくれって言ってるみたいなものだし。

もう色々疲れて死にたいって言ってる人に、自分が死ぬから助けろと言ってる。

我ながらカスもいい所だね…


「…あいよ」


おじさんが両手を上げる。

この世界でも、降参のジェスチャーは変わらないらしい。

いや、両手をフリーにする動作なんだから当たり前か。


「まぁ助けたのは俺だしな。今ここで嬢ちゃん見捨てて死んだら地獄に落ちそうだ」


まぁそもそも人殺しだがな、とからから笑うおじさん。

…笑った方がいいんだろうか?


「…あんまり洒落になってねぇな」


あ、笑わなくて正解だったっぽい。


「…相当酷い言い草ですね、私…」

「そうでもないと思うがな。誰だって死にたくない奴が大半だろ」


それはそうですけども。

…私って嫌われるタイプだな?

要求するくせして相手の心配してるし…


「とうっ」

「ふごッ」


手刀。

そこそこ痛いチョップが脳天に突き刺さった。


「そんじゃ嬢ちゃん、じゃなくて専属整備士さんよ」


おじさんが、ボロボロのRIA(リア)を指さして言った。


「俺のこいつ、直してもらえるか?」

「…はい!」

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