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10 正常性バイアス

泥のように眠った。

夢見は、お世辞にも良いとは言えないかな。

正直二度と見たくないような夢だった。

夢が朧げにしか思い出せないことにこんなに感謝した日は無い。

きっと、碌なものじゃないから。


目を開ける。

いくらでも寝られる体質だと思っていたんだけど、嫌なくらいに眠気が引いていた。

…寝る前の、戦闘を思い出す。

反射的にまた吐きそうになった。


「大丈夫か?」


すぐ後ろからおじさんの声がする。


「慣れろ、とは言えないけどな。それでも嬢ちゃんは気にしなくていいんだよ」


…そう、だよね。


「…すみません、大丈夫です」

「一回吐いてきてもいいぞ」

「じゃあ…お言葉に甘えて」


ハッチを開く。

…うじうじ悩んでても仕方がない。

思い切ってジャンプしてみる。

着地して、………吐いた。








「まだ寝てた方がいいんじゃないか…?」

「胃の中からっぽになったんで平気です…」

「そ、そうか…」


ダイナミック嘔吐を経て、なんとか気分を立て直した私。

…からっぽの胃がキリキリ鳴った。

これ以上嘔吐することはないでしょう。


「そ、それよりこれからのことを考えた方が…」

「…」


おじさんが渋い顔をする。

多分私も同じような顔をしてる。


私達にある武器は、技術不明のプラズマブレード。

それを扱えるのはボロボロのRIA(リア)だけ。

隻腕かつ装甲ボコボコで、頭部センサーは全滅。

サブセンサーの接続も怪しくて、モニターもノイズ混じりの酷いもの。

だが私にとっては…

…いや、普通に無理。

この状態じゃ、勝つどころか逃げることすら難しい。


「そこのガレージは、おじさんが使ってたんですか?」

「元は俺のじゃねぇんだけどな。…替えのパーツも弾丸も無い」

「そうですか…」

「だがずっとここにいても仕方がねぇし…とりあえず行くか」


RIA(リア)を起動して移動。

ホバー移動はともかく、ブースターはもう動かせなさそうだった。

爆発してもいいんだったら2分は吹かせるかな?

減速できません!からの爆殺までがワンセットになるんだろうか。

私はやって欲しくない。


ガレージの前に立つRIA(リア)

どうするのかと思っていたら、シャッターの下部を持って持ち上げた。

…それでいいの…?

とてもエコロジーだけどそれでいいの…?

ガレージの中に入って、ゆっくりシャッターを閉める。

同時に、内部の照明が点いた。


「ようこそお嬢様、我が秘密基地へ」


冗談めかして恭しい口調になるおじさんだけど、私はちょっとわくわくしていた。

こんな時に不謹慎だけど、ガレージの中はまさに秘密基地と言うにふさわしい内装をしていたから。

乱雑に積まれた鉄材に燃料。

適当に脱ぎ散らされた服の横には、幾つか大きな木箱が積まれている。

男のロマンとでも言うべき空間。

これで落ち着けって方がどうかしてるよ。

…私って、生物的には女だよね?

もしや前世は男か?

どっちでもいいしどうでもいいけどさ。

つくづく転生と言うものは御しがたいな!

それはともかくとして。


「いい所ですね」

「だろ?」


ちょっと上ずった声になってしまったのは許してほしい。

興奮気味の私の前で、ハッチを開けておじさんが手招きした。

一緒に降りる。

降りてガレージを見渡して、思わずため息が出てしまった。


「元居たガレージより貧相だろう?」


苦笑しながらおじさんが言うけど、とんでもない。

私の居たのって、空母みたいなものだったから狭苦しくてね…

広いは広いんだけど、どうしても圧迫感とか閉塞感が凄かった。

ここは多分、元々何機か収容できるんじゃないかな?

だからか、RIA(リア)1機だけが立っているガレージは凄く広く見える。

それに、ロマンがある。

命の恩人の秘密基地。

それだけでもう頭がくらくらしてくるよ。


惚けていても仕方が無いので、切り替えておじさんについて行く。

色々見ていたいけど、下手に触ったらまずそうだし。


「嬢ちゃん、これ」

「はい?」


ひょいと投げられたそれを慌てて掴む。

固形の保存食だった。


「大切なお客様のお腹を空かしたままじゃいられないからな」


そういえば、昨日から何にも食べてない。

…意識した瞬間に、そこそこ大きな音がお腹から響いてきた。


「…大切なお客様に、ご飯を投げてよこしてもいいんですかね?」

「…確かに」


してやられたという風に額に手を当てるおじさん。

恥ずかしいやら可笑しいやらで、貰った保存食を口に放った。

…ほんの少しだけ、美味しい。

ちょっと甘めの味が、からっぽのお腹を満たす。


「水もいるだろ?」

「あ、ありがとうござッ!?」


もう一度、放り投げられたボトルを掴む。

ナイスキャッチ私!


「次は外さない」

「まず投げないでくれませんか!?」

「当たらなければ特に問題は…」

「食べ物投げないでくださいよ!」

「たはは」

「振りかぶらないでください!ちょっとホントに待ってくださいよ!」


変なスイッチが入ったのか、おじさんが色々投げてくる。

だいたい食べ物だし、ちょっと速くない!?

でも落とす訳にもいかないので全部取る!

おわーっ!?


「嬢ちゃん次行くぞー」

「次行かないで!?」


それからしばらく弄ばれた。

私は犬じゃないんだよ!?

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