第1話:遺命の影──家康、東の空を望む
秀吉の遺言によって設けられた五大老・五奉行の体制。
その中で、徳川家康は、天下人としての政治的実権を一時的に預かることを許された──
あくまで、秀頼が成人するまでの間に限って。
しかし、秀吉の死を迎えたその直後。
毛利輝元や石田三成を中心に、
「これからは五奉行・五大老による合議制で政を執り行うべきだ」
という声が公然と上がるようになった。
「……話が違うではないか」
家康は、評定の場でその言葉を耳にし、内心で怒りを押し殺した。
秀吉との約定が、死とともに無に帰したかのような扱い──それが許せなかった。
EDO『豊臣政権、権力の空白発生。政敵による主導権奪取の動き加速中。』
家康は動いた。 まずは政敵に包囲されぬよう、大名家との縁組を加速。
娘の振姫を前田家に、孫娘を福島家に。
結束の強化とともに、自らの地盤を堅めていった。
EDO『人的ネットワーク拡張率:+28%。戦略的縁組進行中。』
政務の場では、石田三成との間にますます対立の火種が増していた。
「家康殿の動きは、政の安定より己が権威の確立に傾き過ぎております」 と語る三成に対し、家康は涼しい顔で応じる。
「己が命をかけて秀頼様を守ろうとする者がここにおることを、忘れてもらっては困る」
ところがある日、家康は五奉行のうちの一部から呼び出され、詰問を受けた。
「殿、近頃の政務における振る舞い、まことに行き過ぎではござらぬか?」
家康は立ち上がり、重々しい声で応じた。
「誰だ……誰が、我が忠節を疑うような讒言を申したのだ!」
その声音には怒気とともに、深い静けさがあった。
「秀吉公は、我に政治の指揮を任された。
それを否定し、政権から除こうとするその行為こそ──秀吉公の遺言に背くものだ!」
EDO『外部反応検知:同盟諸侯の支持、増加傾向。心理的威圧による戦略的優位形成成功。』
家康は諸将に密かに使者を送り、尾張・駿河・三河より親族や腹心を集めさせた。
江戸城には次第に兵が集まり、武具が並び、まるで戦の支度のような空気が満ち始める。
これを見た五奉行・五大老の面々は恐れを抱いた。
とくに毛利輝元や宇喜多秀家らは、
「ここで家康と争えば天下は再び乱れる」
と判断し、静かに折れた。
EDO『外交圧力成功。主導権確保。』
こうして家康は、正式な戦を起こさぬまま、己の立場を再確認させた。
合議の名の下に進められようとしていた政治は、再び家康の手に収まりつつあった。
「なに、わしは秀頼様の代行であるに過ぎぬ……ただ、泰平を願うだけの老将よ」
その笑みの奥に、誰も読み取れぬ静かな炎が宿っていた──。
EDO『次目標設定提案:豊臣政権再編成。敵対勢力監視強化。』