第9話:西軍、動く──決起の炎、伏見へ
直江状の写しが、密かに大坂の三成のもとへも届けられたその夜──
「これは……火種が燃え上がるぞ」
石田三成は、かすかに笑った。家康が会津討伐に動く。
それは西国諸将にとって、徳川の本拠が手薄になる絶好の機会であった。
早速、三成は各地の有力大名へ密使を走らせる。
毛利輝元、宇喜多秀家、島津義弘、小西行長、長宗我部盛親──
豊臣恩顧の武将たちへ、徳川追討の名のもとに挙兵を促した。
伏見城── 徳川の拠点の一つであり、京の要所にあるその城には、
徳川家臣の鳥居元忠が城代として守備を担っていた。
慶長五年七月。 三成の命により、宇喜多秀家を中心とした西軍の先鋒部隊が、伏見城へ進軍。
「元忠殿、ご武運を──」
城下の人々が避難する中、元忠は静かに城門を閉じ、籠城の準備を整える。
EDOはこの動きを即座に解析し、家康へ緊急通信を送る。
EDO通信記録:西軍主力、伏見へ向け進軍中。三成の軍勢、豊臣家名義の令状を用い、動員中。
西軍の動きは、やがて大坂一帯を覆い尽くす熱となり、各地の街道には挙兵の旗が立ち始めていた。
「豊臣の正統を守るため、家康を討つ──」
その大義のもとに、武士たちは再び槍を取り、甲冑に身を包む。
一方、家康はなおも会津征伐の道中にあったが、
伏見陥落の報は彼の前に強烈な選択を突きつけることになる。




