表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
些細なお話  作者: towa
1/1

婚約破棄を人前でするのって勇気があるのかバカなのか

ささやかなお話を短編でお届け


 とあるパーティーで私は

「ベリアル、私は貴方と婚約を破棄します。理由は、私を蔑ろにしていたからよ」

 壇上で男に寄りかかり私に婚約破棄を伝えるのは婚約者のキャロラインだ。

 彼女は侯爵の娘であり、家格からは王族との婚姻も可能だが彼女は王妃としての素質がなかった為に侯爵である私の家との婚約となった。

 彼女と婚約を結んだのは1年前の私が21歳の時だ、学園でも主席で卒業した俺は親父である宰相の元で仕事をしていた。本当は留学に行きたかったのだが兄が留学中なために自分は行けなかった。兄が戻ったら自分も行くつもりだった。しかし、俺を留めておきたい王家から馬鹿な女キャロラインとの婚約を勧められたのだった。つまり私にとっても我が家にとっても、この婚約は不快でしかなかった。


「質問をいいですか?」

「う……何よ」



 本日は、第1王子主催の夜会だ。王子を推す貴族達が集まりお喋りや軽食を楽しんでいる。私は王子の尻拭いの業務をこなし会場へと向かい。そこで自分の婚約者と他の男とのダンスをしばらく眺めていた。そして、私に気づくと突然婚約破棄を告げたのだった。


 

「私の婚約者殿は本日、他の用事があるからと私のエスコートを断りました。それなのに何故ここに?しかも隣には両親や兄弟、親戚でもない男性と一緒なのですか?蔑ろにされているのは私なのでは?私の行動よりも自分の行動を振り返ってください」


 

「うっ……そうやって」

「か……彼女は、君との事で悩んでいた。私はその相談にのっていたのだ」


 婚約者は男の腕の中で嘘泣きをしている。

「ほう、相談ね……先程から見てましたが、私の婚約者の腰を抱き入場仲良くダンスを3回踊る仲ですね。そうですか……もし不貞がわかればキャロライン嬢の有責となりますが?」


「キャロ……大丈夫だから」

「アンドレ……」



「名を呼び合う仲なのですね?わかりました。しっかりと調べてから御二方のご両親と相談します」


「………………」

「………………」


「ちなみに私は彼女とは身体の関係がないので、その腹の子の父は私ではないですから」


「ベリアル……あなた調べて……」

「くっ……ベリアル」


「当たり前でしょう?やっとの思いで捻出した時間を貴方は毎回断るのですから……。怪しいと思うのが普通です」


「で、そちらの貴方……貴方にも婚約者殿には何と説明を?」


「……だ……大丈夫だ。彼女は俺に惚れ込んでいるからキャロの事も認めてくれる」


「本当にそうですか?第1王子アザゼル様」

「だ……大丈夫だ。あの女は私しか貰い手がいない。だからアイツを王妃にしてやるんだから恋人を作るくらいいいだろう」



「いいわけないでしょ」


 

 突如現れたのは辺境の地を治める男の一人娘のセレスティナだった。ピンク色の髪に空色の瞳、狩りを嗜むも日焼けをしない白い肌。

 時折戦場にも参戦するため身体は引き締まり出る所は出るナイスバディの女性だ。性格は明朗闊達である。


「だか……セレス……お前は、俺に惚れ込んでいるだろう?だからなキャロを……」

「私が惚れ込んでいる?妄想癖をお待ちですか殿下?」

 

「くっ、何故お前はここにいるんだ。今日は……」

「えぇ、殿下からエスコートを断られたので……1人で来ました。それで隣の女性は何故に殿下の色を纏うのですか。まさかプレゼントではないでしょうね。彼女の生地は王家御用達の物かと……私には石ころ1つくださらないのに……悲しいですわ」


「セレス……違うんだよ……」

「そちらの方は、彼女が妊娠していると……つまり私の婚約者と彼女は性行為をしていたのですか?妊娠がわかると言うことは昨日今日ではないのですよね」

「セレス違うんだ……」

「殿下は彼女と添い遂げたいのですか」


 

 突如第1王子の隣にいる女は声をあげる


「ゼルは私の方が良いと。あなたは戦場や狩猟ばかりで……」

 

「殿下は、その女性に愛書で呼ばれているのですね。私は2年たっても『殿下』と呼んでいるのに……それに私が好き好んで戦場に立っていると……」

「いや……違う。キャロ黙れ」

「なんでよ、あの女よりも私の身体の方が良いと……」

 

「殿下、私はあなたと体の関係があったのですか?殿下の隣の女性は、彼に婚約者がいるとわかっていたのに性行為をしていたんですか?それとも彼が殿下だとは知らなかったのかしら?それなら噂通りのお嬢さんだこと」


 パーティ会場は静まり返り4人のやり取りだけが響いている。

 いや1人の男は黙って3人の会話を聞いているだけだった。


「あの私は家に戻って良いですか……無駄な時間でした。こんな事に時間を使うなら睡眠に当てたいのですが」


 突如、突拍子もないことを言う男ベリアル。


「え?貴方は帰るの?」

「ええ、貴方はまだいるのですか?」


「まぁ、確かに此処にいてもね」

「なら一緒に会場を出ますか?」

「ちなみに彼女は?」

「あぁ、私の元婚約者ですね。彼女は侯爵なので家格としては」王族との婚姻も可能でしょう。何より王族の子を宿しているのであれば尚更。貴方は……どうしたいのですか?」

「私と殿下は政略的な理由がほとんですわ。浮気をし結婚前に子を成しているだなんて私は御免ですわ」

「なら、互いに両親に報告ですね」

「えぇ、その前に」


 第1王子とキャロラインの前に跪き挨拶をするセレスティアは。

「殿下、今までお世話になりました。婚約者であった為に出奔していた私の私兵も引き上げますのでご理解を」

「待て待て、セレス、お前の私兵が王都からいなくなったら……」

「あら、殿下。そちらの女性に頼めば良いじゃない。それにこの会場にいる方達はお二人の事を認めているのでしょう。誰も苦言を呈さずに3度も踊る姿を見て拍手を送ってましたものね。この事は両親にも伝えますので。護衛などで困った際は殿下の新しい伴侶の家に頼んでくださいまし。それでは皆様失礼しますわ」




 帰りの馬車の中


「久しぶりだなティア」

「アルもね、随分と忙しかったのね。隈が酷いわ」

「少し眠っても?」

「どうぞ」


 ベリアルはセレスティアの膝に頭を乗せる。

「ん?何してるのよ」

「僕も君も婚約者がいないだろう……でもまだ書類にサインしていないな……。まぁ今は2人きりだから。きっと君の家の影も見逃してくれるだろう」

「そうねウチの影は空気を読むからね」

「頭を撫でてティア」

「人前ではクールな男で通っているのにね」

「君の前でだけだ甘えるのは」



「なぁ、今度は親父たちも許してくれるだろうか」

「そうね、あの時は王家の邪魔が入ったからね」


 2人は互いに婚約者ができるまでは恋人だった。権力実力ともに王家の脅威となりそうな家の息子と娘……2人の婚姻は王家によって邪魔されたのだった。しかし王家の継承者自らがこの大切な婚約の本質を見誤りあり欲に勝てなかったのだ。


 その後、この婚約破棄の夜会は国王に知られる事になり、ベリアルとセレスティアの両親は怒り、王都から全ての私兵を撤退させ、宰相は退職願いを提出し、辺境伯の元へと引っ越したのだった。

 それに加えてて、第1王子とキャロラインの実家には莫大な慰謝料の請求が届くのであった。

 第1王子は継承権を辞退させ、キャロラインの家に婿入りとなった。


 その頃、辺境の地では。


「気持ちいいわね。やはり昼寝は木陰に限るわ」

「そうだね〜」


 セレスティアに腕枕をし、ごろ寝を楽しむ2人。

 

「なあ……ティア」

「ん?」

「結婚しようか?」

「そうね」

「やっと手に入ったよ」



「パパ達も大親友だからアルの家族が引っ越してきて喜んでいるわ」

「そうだね。みんな幸せだね」

感想や評価(下の☆☆☆☆☆)をいただけると今後の気力になります。また、リアクション、ブックマークも大大大歓迎です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ