第9回─光
それらの現象が崩壊し始めた後、彼女は自分が静寂に包まれた暗闇の中を漂っているのを感じた。周囲には何もなく、ただ無限の暗闇が彼女を包み込んでいた。その触れられない孤独の中で、彼女は過去の断片を思い出し始めた。
彼女はヴィガを思い出した。彼らが初めて出会った時の光景が、彼女の心に鮮やかに蘇った。彼の優しい眼差しと確かな微笑みが、一瞬にして彼女の心に戻ってきた。彼らは共に数々の旅を経験し、いくつもの困難や危険を乗り越え、晴れの日も雨の日も共に過ごしてきた。そして最後に、彼女は二人が茂密な森の中で迷子になったことを思い出した。すべてが次第に静寂に戻り、その時彼女は無力で、そして孤独を強く感じていた……。
彼女の記憶の断片はその森の中で途切れ、それ以上の情景を思い出すことはできなかった。
その時、彼女の心は突然引き裂かれるような痛みを感じ、周囲の暗闇がまるで彼女全体を飲み込もうとしているかのようだった。その無限の虚空の中で、すべての光が消え失せ、彼女は自分が完全に消されてしまいそうな感覚に襲われた。
「ヴィガ、助けて、私はここにいる!」
彼女は心の中で必死に叫んだ。その声は抑えきれない恐怖と愛情を帯び、魂の奥底から迸り出た。彼女は、その声がこの深い闇を突き抜け、虚空の中を漂っている自分に届くことを切望していた。
暗闇に呑まれそうになったその瞬間、彼女は聞き覚えのある声を耳にした。その声は最初、かすかで不確かだったが、時間が経つにつれて次第に鮮明になっていった。そう、あれは彼だ、間違いない!
彼女の心の中の絶望は、まるで優しい手で撫でられるかのように、その声によって救われた。
「私たちが初めて出会ったあの夜を思い出して、心の光を信じて!そうすれば、私は君を見つけられる!」
彼の声は、力強くも優しい響きで、虚空の暗闇を突き抜け、彼女の心の奥底にまっすぐ届いた。
レイリスはその言葉を聞いたとき、脳裏にあの大雨の夜が浮かび上がった。あの時、彼女は雨の中で無力に立ち尽くし、まるで方向を見失った孤舟のようだった。彼は星の国から人間界に現れ、まるで一筋の光が雨の幕を貫いて彼女を絶望から救い出したかのようだった。彼は彼女のそばに歩み寄り、優しく手を差し出し、彼女の手のひらにそっと自分の手を重ねた。その瞬間、彼女の心に計り知れない温かさと安らぎが広がった。
「あの光は、君が信じる力によって、どんどん強くなっていくよ。」
あの時の少年は優しくそう言い、彼の瞳には無限の確信と希望が込められていた。
「もし君の心がブラックホールに引き込まれそうになったら、その光を信じてごらん。そうすれば、ブラックホールは消えるんだ。」
彼女は当時の微かな光を思い出した。それは彼女が最も弱く、最も無力だった時、まるで灯火のように彼女を導いてくれた光だった。その光はとてもか弱く、今にも闇に飲み込まれそうだったが、まさにその光が彼女に希望を取り戻させ、暗闇の中でも追い求める光があることを信じさせてくれたのだった。
レイリスが全力で信じようとしたとき、彼女の心の中にはかすかだが確かな力が湧き上がってきた。彼女は目を閉じ、その記憶にすべての意識を集中させた。あの少年が言っていた言葉が、何度も彼女の耳元で響いた。
「その光は、君が信じる力によって、どんどん強くなっていくよ。」
その瞬間、彼女の目の前に小さな光の点が現れた。それはまるで小さな珠のように。
その光はあまりにもかすかで、今にも闇に呑み込まれてしまいそうだった。しかし、その無限の闇の中で、光点はしぶとく輝いていた。まるで虚無と戦っているかのように。
レイリスはその光点を見つめ、驚きと希望に満たされた。彼女はその光点が、彼女の心の信念に応じて次第に明るくなっていくのを感じた。かすかな瞬きから、次第に輝きを増していき、まるで闇の中で孤独に、それでも力強く燃え続ける小さな灯火のようだった。
「そうだ、これでいい……」
彼女は心の中でそうつぶやき、その瞳には揺るぎない決意が宿っていた。彼女は、あの光が自分の信念によってどんどん輝きを増し、暗闇から抜け出すための道標になると信じていた。
光の点が次第に明るさを増すにつれ、レイリスの心には温かさと力が満ちていった。その光は、彼女の心の奥底にあった恐れや絶望を一つずつ、少しずつ取り除いていくようだった。彼女は感じた。その光は単なる光ではなく、ヴィガへの信頼であり、彼女の心の奥底にある最も純粋な希望と愛の象徴であると。
光はますます明るくなり、小さな珠のような光から、輝く星へと変わっていった。それは彼女の目の前を照らし、暗闇が次第に後退していった。かつて彼女を呑み込もうとしていた影も、その光の中で跡形もなく消えていった。
その時――
光はさらに輝きを増し、温かさと希望に満ちたあらゆる色彩を放ち、まるで暗闇の世界全体を完全に追い払おうとしているかのようだった。その光の中には、命と愛の波動が込められており、無数の星が彼女の目の前で一斉に輝き、彼女を無限の光輝の中へと包み込んでいった。
突然、その眩い光の中から、一双の手がゆっくりと伸びてきた。その手には、彼女が無数の困難に直面した時、何度も優しく握ってくれた、あの懐かしい温もりと感触があった。
レイリスは思わず手を伸ばし、その震える手でその手を握りしめた。その温かさは彼女の心を徐々に落ち着かせ、懐かしく、そして安心感に満たされた。
彼女がその手を握りしめると、光の中にあった輪郭が次第に鮮明になっていった。ヴィガの姿が徐々に光の中から現れ、彼の瞳には焦りと喜びが満ちており、その視線はレイリスにしっかりと注がれていた。
「良くやったよ、レイリス。ついに君を見つけたんだ!」
彼は優しく言い、その目には無限の愛と温かさが込められていた。