第６回─運命の試練
ヴィガは宮殿の前に到着した。この宮殿の扉は大きくて壮大で、深い青藍色をしていた。
扉には古くて神秘的な文字が刻まれており、微かに冷たい光を放っていた。その扉は静かに佇んでいるように見えたが、目に見えない圧迫感が漂っており、冷たさが心に迫ってくる。まるで宮殿全体が、遠い昔の悲しい物語を静かに語りかけているかのようだった。扉の周囲の空気は凍りついたかのようで、冷たさが身に染みた。
ヴィガは深呼吸をし、その冷たい扉に手を置いた。
扉を押し開けようとした瞬間、突然扉が自動で開き、強力な引力が彼を一気に引き込んだ。体のバランスを失い、まるで無限の闇に飲み込まれていくようだった。
「そ、それで彼はどうなったの？」
少女はここまで話を聞くと、我慢できずに質問した。その声には焦りと不安が込められていた。
おじいさんは静かに首を振り、その目には言葉にできないほどの重みが宿っていた。
「彼がその宮殿に足を踏み入れた瞬間、彼の運命は大きく揺れ動いた……」
少女は眉をひそめ、何かを考え込んでいる様子だった。そして小さな声で尋ねた。
「彼の運命……どうして変わったの？」
おじいさんは唇を引き結び、意味深なまなざしで少女を見つめた後、こう言った。
「いくつかの力は、私たちには予測も制御もできないものだ。その宮殿の中の闇は、一つの試練であり、運命の呼びかけでもある。宮殿に入る者は誰でも、自分自身の試練に直面しなければならない。例外はない。」
おじいさんの言葉には、何かしら捉えどころのない深い意味が込められており、少女の心に不安が広がった。
少女はおじいさんを見つめ、不安そうな目をして尋ねた。
「じゃあ……もし彼が試練を乗り越えられなかったら？彼はあそこで囚われてしまうの？」
おじいさんはそっとホットミルクを置き、その目はさらに深くなった。
ゆっくりと彼は言った。「試練の結果がどうなるかは誰にも分からない。試練は人それぞれ違う。時には、彼らの心の奥深くに潜む恐怖や疑念と向き合わなければならない。試練を乗り越えられなかったなら……おそらく、彼らは永遠に闇の中で迷い続けることになるだろう。」
少女はその言葉を聞いて、息を飲んだ。手に持っていたホットミルクも軽く震え、少し溢れ出た。
「それで……ヴィガは？彼は成功できるの？彼は……絶対にレリスを見つけることができるよね？」
おじいさんは少女を見つめ、その目には優しさと共に微かな哀しみが浮かんでいた。彼は静かに答えた。
「ヴィガには強い決意と勇気がある。それが彼の最も大切な武器だ。しかし時には、勇気だけでは足りない……彼は、自分自身の内面にある最も深い恐怖に立ち向かわなければならない。それができなければ、レリスを救うことはできないだろう。」
少女はその言葉にしばらく黙り込んだ。彼女はうつむいて、カップを強く握りしめ、今聞いた言葉を一生懸命に理解しようとしていた。
「光の中でさえ、闇は存在する……」おじいさんの低くゆっくりとした声が、彼女の思考を中断した。
少女は慌てて顔を上げ、不安そうな目でおじいさんを見つめた。
「おじいさん……それで、レリスはどうなったの？彼女は無事なの？」
おじいさんは穏やかなまなざしで少女を見つめ、意味深な言葉を口にした。
「レリスの運命はヴィガと密接に結びついている。彼らの旅はまだ終わっていない。そして、この宮殿も決して単純な場所ではない。一歩一歩が選択であり、試練なのだ。」
少女は焦りの色を浮かべながら尋ねた。
「じゃあ、彼らは無事に戻ってこれるの？」
おじいさんは微笑みながらも、目に考え込むような表情を浮かべた。
「それは、彼らがこの闇にどう向き合うか次第だ……」
その時、窓の外から「パチュッ、パチュッ」と鳥の鳴き声が響いてきた。高く鋭い音が、嵐の夜の中で不気味なほど鮮明に響き渡った。
少女は驚いて窓の外に目を向けたが、雨で曇ったガラス越しに、夜空を横切る黒い影をぼんやりとしか見ることができなかった。
おじいさんは窓の外を眺めながら、静かに説明した。
「それは朝鳥だよ。夜明け前の闇の中でいつも鳴く。もうすぐ夜明けだということを教えてくれるんだ。」
少女はその鳥の鳴き声を聞きながら、まだ心の中に残る疑問を抱えつつも、少しだけ安堵したように見えた。
彼女は小さな声で尋ねた。
「もうすぐ朝が来るの？」
おじいさんは優しい目で少女を見つめながら、静かに頷いた。
「そうだよ。もうすぐ朝が来る。君も少し休んだほうがいいよ。明日には、また新しい物語が待っているからね。」
少女は名残惜しそうにテーブルの上の蝋燭を見つめ、もう一度窓の外をちらりと見てから、ゆっくりと頷いた。そして静かに答えた。
「分かりました……ありがとう、おじいさん。」
彼女はカップを手に取り、そっと部屋に向かって歩き出した。心の中にはまだ、ヴィガとレリスの運命への思いが残っていた。
窓の外では嵐が少しずつ静まっていき、朝鳥の鳴き声が夜の中で響き続けていた。そして、夜が徐々に薄れ始め、新しい一日が訪れようとしていた。
