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星願の夢見  作者: 無光
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第5回:青い巨鳥



 夜が更け、外から突然、強い風と雨の音が聞こえてきた。風は猛烈で、大波が小屋の壁を叩きつけていた。


 少女は夜中に目を覚まし、心臓が不安に鼓動しているのを感じた。


 彼女はそっと部屋の扉を開け、テーブルの窓辺に歩み寄り、外の景色を見つめた。雨水が窓ガラスを伝い、彼女の視界をぼんやりと曇らせた。


 心の中にレイリスへの不安が浮かび上がり、暗闇に閉じ込められた少女もまた、この嵐に巻き込まれているのではないかと思った。


 その時、老爺さんの部屋の扉がそっと開き、燭火の微かな光が廊下に長い影を落とした。


 老爺さんは少女が眠れないことに気づき、静かに部屋から出てきて、窓辺に立つ彼女の背中を見つめながら、優しく尋ねた。「まだ心配しているのかい?」


 少女は微かに頷いたが、振り返ることなく、依然として外の嵐を見つめていた。


 老爺さんは微笑みながら、テーブルのそばに行き、燭火を灯し、少女のために温かいミルクを用意した。それをそっとテーブルに置き、優しく声をかけた。


「こんな荒れた天気の時は、心も乱れやすい。でも、暖かいミルクを飲んで、話を続けようか。どうだい?」


 少女はようやく振り返り、テーブルに置かれた湯気の立つミルクを見つめた。


 老爺さんの言葉の中にある優しさを感じ、彼女の不安は少しずつ燭火とミルクの香りに溶け込んでいくように感じた。


 彼女は椅子に腰掛け、両手でカップを包み込み、その温かさに少し心を落ち着かせた。


 「うん……わかった。」少女は小さく応え、瞳にはわずかな期待が宿っていた。


 老爺さんはその様子を見て、微笑みながら頷いた。「それじゃあ、続けるとしよう。」


 光が徐々に消え去ると、ヴィガは自分がもうあの古代の神殿にはいないことに気づいた。彼が立っていたのは、月の光が一切差し込まない異なる場所だった。


 その空間は無限の暗闇に覆われ、圧倒的な重苦しい空気が漂っていた。呼吸さえも次第に重く感じられる。


 そこには自然の光源が一切なく、唯一微かな光を放っていたのは、暗闇の中を素早く動き回るキノコの小人たちと、奇妙な生物たちだった。


 キノコの小人たちは柔らかな青白い光を放ち、まるで夜空に散らばる星々のように、ヴィガの進むべき道を示していた。


 ヴィガはレイリスの気配がこの暗闇の国にあることを感じ、心の中に決意がみなぎっていた。


 しかし、彼はすぐにこの暗闇がただの闇ではないことを悟った。闇は彼の光を奪おうとし、彼の持つ星の輝きをも飲み込もうとしていた。


 ヴィガは理解した。この暗闇は彼の力を弱め、レイリスを見つけるのを困難にするだろう。しかし、彼は動じなかった。彼は目を閉じ、全ての力を集中させ、自らの中にある星の光をさらに広げた。


 再び目を開いた時、星の光が周囲の闇を少しずつ押し戻していた。光はまだ弱々しかったが、彼が進むべき道を照らすには十分だった。


 星の光に導かれ、ヴィガはこの暗闇の国を歩み続けた。彼が一歩進むごとに、周囲の光景が徐々に現れ始めた。そこには、暗闇の中に潜むさまざまな生物たちの姿があった。


 その生物たちは形も大きさも様々で、宙を舞う小さな精霊のようなものや、光の輪をまとった花のようなもの、さらにはクラゲのように浮かぶものまでいた。


 それらの微かな光が、まるでこの国の神秘を語りかけるかのように、暗闇の中でゆっくりと輝いていた。


 ヴィガの足取りは次第にしっかりとしたものとなり、彼の心の中にある力が彼を前へと導いていた。


 彼はわかっていた。レイリスはすぐ目の前にいる、と。そして、彼が進む先には、暗闇の中にぼんやりと浮かび上がる巨大な宮殿の輪郭が見えてきた。


 その宮殿は、暗闇の中でひときわ神秘的な雰囲気を放っていた。どれほどの暗闇に包まれていても、その輪郭ははっきりと浮かび上がり、まるでヴィガの到来を待ち続けていたかのようだった。


 宮殿の外観は独特で、全体が幽かな青紫色に染まり、壁には複雑な紋様が彫り込まれ、微かな光を放っていた。それは、古の力が今もその場所に宿っていることを示しているようだった。


 高くそびえる塔の頂は、闇の中に溶け込んで見えない。宮殿の各層には、まるで星々が灯されたような奇妙な提灯が吊るされ、そこから漏れ出すわずかな光が、暗闇に包まれたこの要塞を照らしていた。


 ヴィガがその宮殿を仰ぎ見ていたとき、突然、宮殿の屋根の上にいる巨大な鳥の姿が目に入った。


 その鳥は、深い青色の羽を持ち、尾羽はまるで流れる星河のように輝いていた。彼は大きな琥珀色の目でヴィガをじっと見つめていた。


 その視線を受けた瞬間、ヴィガは鳥から発せられる圧倒的な威圧感を感じ、思わず息を呑んだ。


 ヴィガが前へ進もうとしたその時、巨大な鳥は頭を低くし、その目にはまるで人間のような知性が宿っているかのようだった。彼は口を開き、低く響き渡る声で語り始めた。その声は静かだが、遠くまで届くようだった。


 「若き旅人よ、なぜここに来たのだ?お前は知っているか、ここは闇の深淵。星の光を持つ者にとっては立ち入ってはならない場所だ。。」


 ヴィガは驚いて足を止め、巨鳥の目をじっと見返した。彼はしばらく黙って考えた後、思い切ってレイリスの居場所について尋ねることにした。


 「私はレイリスを探しに来たんだ。彼女はこの闇の中に囚われている。彼女を見つけるためなら、どんな危険が待っていようとも、必ず探し出す。」


 巨鳥は細めた目でヴィガの決意を見極めるようにしばらく黙っていた。そして、彼はゆっくりと翼を広げ、羽の間から淡い光がこぼれ出た。


 「そうか......では、お前がどこまで行けるか見届けよう。ここは一歩進むごとに試練が待ち受ける場所だ。お前の星の光が、果たしてどこまで道を照らせるか、見てみよう。」


ヴィガは巨鳥を見上げて尋ねた。「ここはどこだ?」


 巨鳥は深いため息をつき、低く答えた。「永夜の国だ。」


 それだけ言うと、巨鳥は黙り込み、ただ静かにヴィガを見つめた。まるで、彼の次の行動を待っているかのようだった。


 ヴィガは巨鳥の言葉を受け、深く息を吸い込んでから、強い決意を胸に宮殿の大門へと進み始めた。彼が一歩踏み出すごとに、彼の光は徐々に周囲の暗闇を押し返し、道が現れていく。


 闇は依然として静寂に包まれていたが、ヴィガの足音に合わせて、光が少しずつ広がっていった。この神秘的な国は、彼の到来を微かに感じ取り、彼がこの地に隠された秘密を解き明かすのを待っているようだった。



 



物語は続きます。


神秘的な巨鳥、発光する生物、キノコの小人たち。


永夜の国とは一体どんな場所なのでしょうか?


第六回をお楽しみに!


再度のご愛読、感謝いたします。




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