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星願の夢見  作者: 無光
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第4回─蛍光の小人



 黄昏時分、老爺さんはゆっくりと目を開け、夜の冷気が徐々に降りてきたことを感じた。


 彼は立ち上がり、横にあった少し厚手のコートを手に取り、棚から薄い茶色のコートをもう一着取り出し、それを女の子に差し出した。


 「ほら、これを着なさい。夜は冷えるからね。」老爺さんは微笑んでそう言った。


 女の子はそのコートを受け取ると、しっかりした生地の感触を感じながら、疑問の表情を浮かべて老爺さんを見つめた。「おじいさん、どこに行くの?」


 老爺さんは答えず、ただ微笑んで「さあ、始まるよ。行こうか」と言った。


 その後、老爺さんは玄関に向かうことなく、壁に立てかけてあった杖を手に取り、女の子を連れてキッチンの後ろにある小さな木の扉へと向かった。


 女の子は疑問に思いながらも、老爺さんの後ろをぴったりとついていった。


 老爺さんは古びた木の扉を開け、その先に広がる光景に女の子は息を呑んだ。


 黄昏の陽光が海面を照らし、穏やかな波が砂浜に打ち寄せ、きらめく水面は金色と橙色の温かな光を反射し、まるで世界全体が輝く薄いベールに包まれているようだった。


 遠くの地平線は深紅と紫のグラデーションに染まり、海と空が溶け合うその場所は夢のように広がり、果てしなく続いているように見えた。


 小屋はこの美しい景色の中に佇み、まるで時の流れから取り残された古い守り手のようだった。夕陽に照らされたその古びた壁は、年輪を刻んだように落ち着いた雰囲気を醸し出していた。


 周りの木々や草花も、この温かな光に包まれ、柔らかな光彩を放っていた。この景色はあまりにも美しく、まるで一幅の絵画のようで、誰もがこの光景に心を奪われてしまうだろう。


 女の子は小屋の前に立ち、思わず小屋を振り返り、その光景を見て心の中に言葉にできない温かさと安心感が広がった。


 彼女がこれまで見たことのない美しい光景が、まるで天地のすべてがこの土地の物語を静かに語りかけているように感じられた。


 老爺さんは微笑みながら言った。「レイリスもこの景色が大好きだったんじゃ。」


 女の子は疑問そうに尋ねた。「彼女もここに来たことがあるの?」


 老爺さんは静かに頷き、「ああ、彼女も来たんじゃ。」と答えた。女の子がさらに質問しようとしたが、老爺さんは微笑んで優しく言った。「さあ、出発しようか。」


 二人は小道を歩き、ついに大きくて神秘的な洞窟の入り口にたどり着いた。


 洞窟の入り口の周りには、光る苔が一面に広がり、穏やかな光を放ちながら、彼らの進入を促しているようだった。


 「ここは……?」女の子は小さな声でつぶやき、驚きと少しの不安が入り混じった表情で洞窟を見つめた。


 老爺さんは微笑んで頷き、彼女に従うように示し、洞窟の中へと入っていった。


 二人が洞窟の奥へ進むにつれ、女の子は驚きの目を見開いた。洞窟の内部はまったく別の世界が広がっていた。


 この場所には、不思議な光を放つ植物があちこちに生えていて、まるでそれぞれが命を持っているかのように感じられた。特別な生物たちが彼らの周りを軽やかに飛び跳ね、まるで彼らを歓迎しているかのようだった。


 それらの生物や植物はただ一つの光を放つだけでなく、青、緑、紫など、まるで夜空のように色とりどりの光を輝かせていた。


 その時、突然、淡い青い光を放つ小さなキノコの妖精が彼らの目の前に現れた。


 その妖精は、二つの大きな黒い目を持ち、口はなく、すばしっこく彼らの前を横切った。


 「それは何?」と女の子は驚いて尋ねた。


 老爺さんは説明した。「あれはキノコの妖精で、永夜の国にいるすべての生物が光を持つ存在なんじゃよ。彼らの光は、この世界を照らし、生き物たちが闇の中でお互いを見ることができるようにしておるんじゃ。」


 女の子はその話を聞いて、驚きと敬意が入り混じった感情を抱きながら、その光を放つ妖精たちを目で追いかけ、この奇妙で美しい世界のすべての細部を目に焼き付けようとしていた。


 二人はさらに進んでいき、やがて広い場所にたどり着いた。その場所には、光る植物が星のように散りばめられ、まるで地上に降り立った星々のように輝いていた。


 老爺さんは巨大な岩の上に腰を下ろし、女の子にも彼の隣に座るように促した。



 そして、老爺さんは次の物語を語り始めた。


 「レイリスがあの謎の力に呑まれた時、ヴィガはひどく怯えた。彼は必死に追いかけたが、あの暗闇はすぐにレイリスを包み込み、彼女の姿は闇の中にゆっくりと消えていった。ヴィガは何も考えずに暗闇に向かって駆け出したが、彼の手は何も掴むことができず、ただ彼の呼び声だけが虚ろな森の中で反響していた。」


 「レイリスが姿を消した後、ヴィガは長い間森の中をさまよった。彼は諦めなかった。レイリスがどこかで彼を待っていると信じていた。彼は森の隅々を探し始め、ついに木の根の間に隠された小さな道を見つけたんじゃ。」


 「その道は古代の神殿へと続いていて、ヴィガは無数の蜘蛛の巣をかき分け、慎重に奥へ進んでいった。そして、最深部で彼は、自分の身長の倍以上もある巨大な菱形の淡い青い水晶体を発見した。その水晶体はほのかに光を放っていたが、周囲にはぞっとするような暗い気配が漂っていた……」


 老爺さんは一瞬言葉を切り、女の子を見つめた。「この旅路には数々の危険が伴っていたが、ヴィガは一度も揺るがなかった。彼は分かっていたんじゃ。レイリスはきっと怖がっている、彼女は今、未知の危険な暗黒の世界に囚われているのじゃ。そして、レイリスにとって、ヴィガこそが唯一の頼りであり、彼だけが彼女をその闇から救い出せる存在だったんじゃ。」


 「ヴィガはその責任の重さを感じると同時に、レイリスへの深い関心と守りたいという思いを強く感じていた。彼は心の奥で分かっていたんじゃ。どんなに困難でも、彼は諦めることができないと。なぜなら、レイリスには彼が必要であり、ヴィガにとってもまた、レイリスが必要だったんじゃ。」


 女の子は手を強く握りしめ、目を輝かせながら話を聞いていた。「おじいさん、ヴィガはレイリスを見つけられるの?二人は無事に現実の世界に戻れるの?」


 老爺さんは微かに頷き、深い考えにふけった表情を浮かべながら答えた。「ヴィガの勇気と決意が、彼にとって最大の力となるじゃろう。しかし、これから彼らが直面する試練はまだ多く残っておる。この物語は、まだ始まったばっかりなんじゃ。」


 老爺さんは杖をそっと下ろし、目を閉じ、何かを思い返すように静かに息をついた。


 しばらくして、彼は目をわずかに開けて、穏やかな笑みを浮かべながら女の子を見つめた。「夜も更けてきたな。この物語はここまでにして、明日続きを話そう。今夜はゆっくり休むといい。明日はもっと面白い冒険が待っておるからな。」


 女の子は頷きながらも、物語の続きが気になって仕方なかった。しかし、彼女は老爺さんの言葉が正しいと感じ、彼も疲れているだろうと思った。彼の目元にうっすらと涙の跡が見えた時、彼女の胸にも何か言葉にできない寂しさと空虚感が広がった。まるで、彼女は老爺さんの心の奥底にある感情を感じ取っているかのようだった。


 理由はわからなかったが、彼女は無言で老爺さんに従い、洞窟を後にした。心の中では、まだ永夜の国の神秘が彼女を強く引き寄せていた。


 小屋に戻ると、老爺さんはオレンジ色の油灯を点け、その微かな灯りが窓から外へ漏れ出し、二人の影を映し出した。彼らの姿は、まるで無言の交流と理解を語っているようだった。


 夕食の時、老爺さんは洞窟から持ち帰った発光する野菜を用意し、女の子はその不思議な食材に驚かされた。その野菜はお皿の上で淡い光を放ち、まるで永夜の国からの贈り物のように見えた。


 女の子はその神秘的な食べ物を味わいながら、老爺さんが話すさらに奇妙で魅力的な物語に耳を傾け、心の中で満たされる感覚を覚えた。


 夕食が終わると、小屋の灯りは徐々に消え、外には深い青の夜空が広がり、遠くの星がちらちらと瞬いていた。


 その夜、女の子はレイリスの運命についての思いを胸に抱きながら、期待とともにゆっくりと眠りについた──。



神祕の永夜の国、交わり編まれた布はレイリスにどのように覆いかぶさっているのだろうか?


老爺さんはなぜ永夜の国への入口を知っているのだろうか?


少女の胸に湧き上がる感情は何を意味しているのか?


ヴィガとレイリスの運命は、


今、まさにこの瞬間、さらに輝かしい光を放っている──。



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