第10回─古代の魔鏡
レイリスの目がついに開いたとき、彼女は目の前の光が徐々に薄れていくのを感じた。彼女は見知らぬがどこか懐かしい場所に立っていた。周りには巨大な宮殿があり、壁には微弱な星の光が瞬いていて、まるで夜空の反映のようだった。
彼女は下を向くと、目の前にヴィガが立っている姿が映った。彼の輪郭ははっきりしており、剛毅で優雅な印象を与えていた。その瞳は星のように深く、無限の優しさが光っていた。銀髪は微光の中で優雅に輝き、星の光のように魅惑的で、彼のほのかに輝く肌を引き立てていた。その時、彼の顔には疲れの色が見えたが、心を安らげるのは、無意識のうちに浮かんだ微笑みだった。それは、過去の雨の夜に見た男の子のように、希望と支援を伝えていた。
「ここは……どこなの?」と、レイリスは階段を降りながら低い声で尋ね、迷っている様子だった。
ヴィガはすぐには答えず、静かに宮殿の奥を指さした。彼女はその視線を追って、空中に浮かぶ割れた鏡を見つけた。鏡の破片は散らばり、鏡面にはいくつかの星の光が残っていて、消えてしまいそうだった。
「ここは宮殿だ。」ヴィガはついに言葉を発し、温かみと複雑な感情を込めた声で言った。「君の体はここで眠っていて、そして私は……」彼は静かにため息をついた。まるで終わりのない悪夢から解放されたかのようだった。
「私が君を見つけたとき、君はすでに深い眠りに落ちていて、宮殿全体がまるで時間に凍結されているようだった……」ヴィガは低く言い、言葉には言いようのない悲しみが込められていた。「私はあらゆる方法で君を目覚めさせようとしたが、どうすることもできなかった。あの鏡が現れるまで。」
「鏡?」レイリスは眉をひそめ、疑問を投げかけた。
ヴィガは頷き、そしてその空中に浮かぶ壊れた鏡を指さし、話を続けた。「それは古代の魔法の鏡で、宮殿の運命を握っていると言われている。鏡は私に、君は単に眠り込んでいるのではなく、強大な力によって魂が封印されていると告げた。私が触れ、君を呼びかけた瞬間、その力が私を阻んだ。その力は、私が想像している以上に強力だった。」
「その時……私に呪いをかけた。君の前に本当の姿を見せることはできないと言われた。さもないと、君は永遠に目を覚まさなくなる。」
レイリスは少し震え、驚愕の表情を浮かべた。「それなら、夢の中のあなたは……」
「それは私ではない。」ヴィガは微かに頭を振り、無力感を含んだ表情を見せた。「私は夢の中の姿で君に近づくことしかできなかった。星の光を通じて、一歩一歩君を目覚めさせようとした。どのステップも慎重に行わなければならず、呪いの制約に逆らってはいけない。そうでなければ……」彼は一瞬言葉を切った。声には深い恐れがにじみ出ていた。「そうでなければ、君は二度と目を覚まさない。」
彼女の心には無数の疑問が湧き上がった。その時、割れた鏡が微かにかすかな音を立てた。最後の星の光が鏡から消え去ると、全ての鏡は完全に崩れ、無数の塵となって空気中に消えていった。
「今、鏡の呪いは解けた。私もようやく本当の光で君を見つけることができる。」ヴィガはゆっくりと手を伸ばし、指先から柔らかな星の光が放たれ、宮殿内の隅々を照らした。
「ありがとう、私のために……ここから出ましょう。ヴィガ……」と彼女は涙を浮かべながら優しく彼の手を取り、宮殿の大門へと歩き出そうとした。
「残念ながら、私たちの挑戦はまだ始まったばかりだ。」ヴィガは宮殿の別の端を見上げた。そこには、空間が歪んで見え、黒い扉がぼんやりと浮かんでいた。
「これは夜の女王が設けた最初の試練だ。」彼の声は低く、堅実だった。「私たちは彼女の七つの試練を通過しなければ、この宮殿を本当に出ることはできない。」
彼は静かにため息をつき、続けた。「鏡は私に、夜の女王が私の星の光を奪おうとしていることを教えてくれた。彼女は君を永遠に眠らせようとしている。成功すれば、この世界は無限の暗闇に包まれることになる。」
レイリスはこの話を聞いて、胸が締め付けられるような衝撃を受けた。彼女はヴィガを見つめ、不信に満ちた声で尋ねた。「つまり……彼女は私だけではなく、あなたの星の光も狙っているの?」
ヴィガは重々しく頷いた。「そうだ、夜の女王の狙いは君の魂だけではなく、私の星の光もだ。彼女は、私が星の光を失ったら君は目を覚まさないと知っている。そうすれば、この世界も彼女の暗闇の支配から逃れることはできなくなる。」
「だからこそ、この呪いを設けて、君を夢の中に閉じ込めたんだ。私が夜の女王のルールに従わなければ、君は二度と目を覚まさない。」ヴィガの声には抑えきれない不安と決意がにじんでいた。「でも、私は絶対にこんなことを許さない。」
「ヴィガ、夢の中の出来事は覚えている─」
「私は永夜の国の姫ではないの?……どうして光があるの?」
レイリスの声には混乱が漂い、忘れ去られた自分を探そうとする渇望があった。彼女の記憶は、まるで壊れたパズルのように、徐々にぼんやりとした映像を繋いでいく。彼女がかつて真実だと思っていたことは、すべて闇に隠されているのだろうか?
ヴィガは彼女の手を優しく握り、温かさを感じさせた。「君は永夜の姫だが、同時に光の化身でもある。私は信じている。君の覚醒が変化をもたらし、この世界に再び光をもたらすだろう。」
その時、レイリスはこのような夢のような記憶が交錯する中で、非常に複雑な感情を抱いた。彼女は、自分が何を信じるべきかわからなくなっていた。頭の中に浮かぶ映像は交錯し、境界がぼやけていた。
「ヴィガ……これは一体どういうことなの?」レイリスの声は低く震え、迷いが込められていた。「何を信じればいいのかわからない。」
ヴィガは彼女の手をしっかりと握り、堅くも優しい眼差しで見つめた。「レイリス、これらは全て君の本当の記憶だ。決して消えることはない。たとえ夢の中でも、君の心はこれらの断片を繋ぎ合わせ、君が本当の自分を見つけられるようにと働いているんだ。」
レイリスは少しの間を置き、瞳に一筋の渇望の光を宿した。「あなたは、私が初めて出会った夜、ただ純粋に信じたことで生まれたあの光を覚えている?」
ヴィガは微笑み、温かな光がその瞳に浮かんだ。「決して忘れないよ。あの夜、君が光を求めた気持ちがその光を呼び起こしたんだ。その純粋な信念こそが、君の最大の力なんだよ。」
レイリスは深く息を吸い、心を落ち着かせようとした。「信じなければならないのはわかっているけれど、暗闇の力があまりにも強く、時々恐ろしく感じるの。」
ヴィガは少し身を乗り出し、彼女の瞳を真剣に見つめた。「覚えておいてほしい、光は常に暗闇の中にあるんだ。たとえ無力だと感じても、心に宿る希望が君を導き、困難を越えていける。君は一人じゃない。僕は君と共に、暗闇を乗り越えていくよ。」
レイリスは彼の手から伝わる温もりを感じ、心にあった恐れは次第に堅い決意に変わっていった。彼女はこれまでの出来事を思い返し、その記憶の波が自分の存在の意義を強く実感させた。
「光を探し続けるわ。」彼女は小さな声で言い、不屈の決意を瞳に浮かべた。「これから何があっても、私は決して諦めない。」
ヴィガは微かに口元を緩め、安堵の微笑を浮かべた。「これこそ僕が期待していたレイリスだ。運命に立ち向かう勇敢な姿だ。さあ、夜の女王が課した七つの試練を超えていく準備はいいかい?」彼はレイリスの手を取り、宮殿の奥にある暗い扉を指さした。その扉はまるで潜んだ脅威を囁くように、二人を前へと招いていた。
「もう準備はできているわ。」レイリスは顔を上げ、前方を見据えた。「たとえどんなに困難でも、私の光でこの道を照らしていくわ。」
彼女の決意が増すにつれ、宮殿の星光もさらに明るく輝き出し、二人の未来への道を照らしていた。