タイトル未定
不慣れなので少しだけ
私は今起きているのか、眠っているのかわからない。
ただ広大な真っ白な空間の中でただ足を進めることを強いられている。
今できるのはおそらく前を見続け、何も考えないことだ。
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まばたきを1回するだけで人は死ぬ。
それはこの世界で一種の教訓のようなものだ。
当たり前のように暮らし、当たり前のように過ごすという無駄のない世界において
突然増加しはじめた連続失踪現象に対しての嘆きから生まれたものである。
この言葉は現象が多発する前から発達段階の子どもの養育の際にも言われていたが
現在その面影はみじんもない。
ものが安全になっていく過程で小さな子どもの危険に対する、意識的な警戒心が薄れたためだ。
その証拠に現在では”放任教育法”というこどもの探求心や好奇心、幼い体には似つかない
無限ともいえる体力にすべての行動権を担わせるということが良いとされるほどだ。
しかし誤解や不快感を与えないようあらかじめ断らせていただきたい。
こうなってしまったのは人の無責任さや当人たちのエゴからではない。
そうならざるを得なかったのだ。
子どもへの危険がなくなっていったというのは先に述べたが
それは子どもに限った話ではない。
技術革新が進み、すべての危険性の棘が丸められていくことで
実質的な理想郷のような世界となっていた世界では本来の物差しが狂ってしまい
親である大人たちの役目は今まで覆われていた消えゆく危険性たちに倣って
”親に対しての不安や負担”という外的な危険性とされ排除されたというわけだ。
受け入れられない人もいるだろうが、あらゆる危険は遠ざけられて心のダメージからも隔離された
現在では当たり前になっているのである。
そんなことよりも、問題となるのはそんな無駄のない時代が進んでいた最中のことだ。
1人の青年が忽然と姿を消したのである。
比較的優等生で善良な子だったと親は言い、ログに照らし合わせてもそれは明らかだった。
危険性のないただ1人の守られるべき人間だったのだ。
それ以上は知らない。
失踪するその現象が少しずつ伝播していく様に落ち着く様子はなく
ただじわじわとその様が浮き彫りになる。流行り病のようだった
まだまだ肌寒いですね。