もう一人の姉は押しが強い
お読み頂き有難う御座います。
やっとこさ相手役が出てきましたね。
「ちょっと、ホノリア!」
「えっ、誰」
「誰ですってえええ!? アンタ、この高貴なる偉大なお姉様を忘れたって言うの!? ツルツル脳みそ過ぎるでしょ!」
こっわ! え、姉って……イサ姉様ではないわよね。髪の色が違うもの。そしてこんなに凶暴ではないし。まさか髪の毛染めてキャラチェンしてた……なんて、ないわね。目の色も赤いし違うもの。……体型も違うし。しかし、この人、多分一番少女らしい体型だわ。
……イサ姉様でないと言うことは、あの原作基準の夢の三年前の熱波で死ぬ、ハルミナ姉様か……! まだ生きてたのね。
昨日、無糖のお粥騒動が起こってから、やっとこさ外に……まあ、廊下だけど散歩に出ることが出来たのよ。ダイエットよ。
しかし、室内でも暑いなあ。夜は死ぬ程寒いのに。
「ご、ごめんなさい、ハルミナ姉様……。ボーッとしてたわ」
「今度ボーッとしたら、砂の中に埋めて永遠にボーッとさせてやるからね!」
「ひええ……」
何なのこの子供! 偉そう過ぎ口悪過ぎで怖過ぎるんだけど!
「それより、明日星詠みが来るから、おやつの食べ過ぎで寝込んでバッくれるんじゃないわよ」
「そ、それは……気を付けます」
お、おおう。星詠み来るんだ。やったね! 探す手間が省けた! 役立つと良いなあ!
「なあによ、やけに素直で気持ち悪」
うわ、ガン付けられたわ……。この人本当に皇女なのかってガラの悪さ……。
いえ、ホノリアも大概品が無かったけどさあ。
……しかし、ハルミナ姉様へは反抗心が湧いてこないな。元々のホノリアとは仲が……そんなに悪くなかったのかしら。
「まあ、鶏ガラみたいに痩せ細らされたイサ姉様に差し入れした所は褒めてやるわ。ワタクシからだと生意気にも遠慮するから」
「そ、そうなんですか……」
まだ10歳くらいなのに口悪いツンデレなのか……。濃いなあ、ハルミナ姉様。
いえ、私も充分濃いけど。
「ん?」
何か……中庭の方向が騒々しいわね。
バサンバサンギヤギヤ……。
変な鳥っぽい鳴き声と羽音が……。うう、背が届かなくて窓から景色が見えないわ。
「グリフォン籠ね!」
「え、何ですかそれ」
「お前無知蒙昧ね! グリフォンが下げる籠じゃないの!」
いや知らないわよ何だよ。そのファンタジーなの。
「ホノリア姫様、火蜥蜴車の空版ですわ」
「ふ、ふーん……そうなの。ほへー」
知らねえわよ!!
そう素直に言いたいのに、何で素直にお願い教えてコメントが出てこない!
「見に行くわよ、ホノリア」
「し、しかしハルミナ姫様」
「侍女の分際でアタクシに指図なの!? お黙り! このコロコロを転がしておくと邪魔なのよ! グダグダいうと横倒しにして転がして連れて行くわよ!」
「ひ、ヒイイ……」
また横……。
いやどうでもいいけど、ハルミナ姉様怖いな!
しかも足が速い! よくこんな布の靴で走れるな! 滅茶苦茶足汗が酷くて滑る! 顔汗も酷いけど!
「ぶええ、ふほえ……」
「まだ丸いわね」
「ぜひひ、ゼエゼエ……」
ゼエゼエしか出て来ないわ……。
こんなに走って……侍女がいないわ。撒いてしまったみたい。
中庭、初めて来たのかしら。あまり記憶に無いのよね。
「くるるぅ……」
「びゃっ!?」
「ビビる必要無いわよ、ホノリア」
で、デカいなグリフォン……。かなり怖いわ。
籠も大きいし……。あれ、誰か入ってるな……。ん? ふたり?
「お、皇女様方……」
「見せなさい! 何よ、此奴らは。汚いじゃないの!」
「……」
「!!」
な、中に居たのは……金髪と黒髪の子供ふたり……。どっちも痩せてるな。ぐったりしてる……。
く、黒髪!?
あっ、このギラギラした金色の目! ま、間違いない!
な、何故勇者も一緒なの!?
薄汚れてるけど金髪の方は知らないわ……。こっちは、暗めの青い瞳ね。
「星詠みはひとりよね? どっちがどうなの?」
「そ、それが……」
「まあいいわ。来てしまったのだもの。取り敢えずホノリア、面倒見てやりましょう」
「へえっ!?」
「こんなに弱ってるのだから当然でしょ! まあ、アタクシは優しいから選ばせてやるわ。ちゃんと世話するのよ!」
せ、世話を申し付けられてしまった上に……。
でも、コレはチャンスかも。
星詠みと仲良くなり、私を危機の未来から救うチャンス到来かも!
「そちらの、金髪の方で……」
「あら、意外ね。そっちの色味はまあまあだけど、顔は小汚いわよ」
「い、いえ」
それに、もしかしたら。
口は悪いけど、ハルミナ姉様が性悪女好き勇者を叩き直してくれるかもしれないもの!
ええ、私には無理でしか無いわ! 私はロースペック横四皇女! 非力なの! 他力本願よ!
よりよき未来の為に!
細々と変わりつつありますね。