星詠みは意外と近くにやってきた
お読み頂き有難う御座います。
「しかし、勇者と花柄と星詠みは何処に居るのかしら」
そもそも、勇者の村? 街? 市町村? を知らんのよ。何処出身なのかしら、彼奴等。
出来るだけ気軽に行動出来るよう、なるべく近くの城下町に住んでて欲しいわ。若しくは視察に行けそうなメジャーな都市。後で地理の本が必要ね。勉強に目覚めたくはないけど、スマホも無いしアナログしかない。ロースペックでも詰め込むしか無いわ。
やっと戻ってきた侍女に悲鳴を上げられて……どうも箪笥を漁ってた姿が余計に異常に見えたらしいわ。
何処に入ってたのか、ゴワつく寝間着(今度はピンク)にまた着替えさせられてベッドへ逆戻りよ。医者も来たし。あら、未だ若そうね。
「お可哀想な姫様」
「お食事は甘々粥に致しましょうね、ホノリア姫様」
即座にコールタールみたいな真っ黒けのお粥来たけど、何だこれ。しかも胸焼けする甘さの匂いが……。私の知ってるお粥じゃない。スイーツじゃん。
「平熱ですが、7歳という御歳でこの肉付き! 姫様は肥りすぎです。暫く野菜と肉と無糖のお粥にしてください!! 」
若いけど滅茶苦茶キレた医者に、侍女が怒られていたわ。
へえ、私って7歳だったのか。それにしては肉が……。うう、悲しい。でも、若いから代謝がいいかも……。多分……頑張れば……。コレばかりは他力本願無理よねえ。
「ですが、姫様……」
「それで良いわ。最近動き辛いの。お医者様の仰る食事を取ってきて」
取り敢えず縦に伸びて痩せないと! 取り敢えず明日から!
「全く……ガリガリの皇女がいると思えば、こんな……」
「ガリガリ?」
「お前さんの姉さんだろ、知らんのか」
侍女が居なくなったら急にタメ口になったわね。
うーむ、私って医者に嫌われている気配。そもそも誰に好かれてるのか状況把握出来てない……。ホノリア、そういうの気にしなさそうよね……。
「姉様はガリガリなの?」
「会った事が無いのか」
「無いと思うわ」
多分。
記憶に無いのよね……。自分ファーストのホノリアだもの、忘れている可能性が高いわ。
ガリガリ……。そういや、夢でも漫画でも痩せてたな、イサ姉様。こんな幼少期から気の毒全開か。酷いな。
「ホノリア姫様、食後の甘味にドドアマフルーツを」
「それ、イサ姉様にやって頂戴」
「はい?」
うっ、何言ってんだ病気が悪化!? みたいな目で見ないで欲しいわ。
やはり、いきなり善人ムーブは幼児といえど態とらしいか!
「私は今よりも美しくなる為に痩せるの。引き立て役のイサ姉様がコロッと死んでは困るわ」
「何とお優しい」
「ホホホ! 当然よ!」
侍女には褒め称えられたけど、……うっ、医者に睨まれている……。
コイツ性根が腐ってやがるって、滅茶苦茶目が語ってるわ……。
「其処の医者も、姉様の診察に行きなさい。精々私の為に役立つようにそこそこ元気にするのよ!」
「何て皇女だ……」
……っ、心が痛む割にスラスラと悪口が……。
矢張りこのボディは悪者系仕様なのね……。正常に補正したいなあ。出来るかなあ。
医者が去って行って……取り敢えず背中にエールを送るわ。イサ姉様を宜しく保護して頂戴! 多分仲良くは出来ないだろうから……。うう、仲良し姉妹エンドだと国の平和っぽいのに……。無いでしょうねえ。
「……ねえ、話題の星詠みって居たかしら」
取り敢えず、侍女に聞いてみるか。
情報媒体って、本くらいよねえ。新聞とか有るのかなこの国。あー、何度も言うけどパパッと調べたい。
「最近話題の星詠みで御座いますか? そう言えば、アッタノカ村という辺境に、最年少で星詠みに選ばれた者が居たと……」
「……居たのね」
「はい?」
「本当にそんな者が居るとは……」
そもそも星詠みって何なのかしら。ファンタジー世界みたいだし、メルヘンな感じで星と物理的に会話出来るのかしら。
何が出来るのかサッパリ判らんわね。どういう職業? なのかしら。
「姫様、お加減がお悪いのですから、おやすみくださいませ」
「ええ……。その星詠みとやら、見てみたいわ」
「来週、都に呼び寄せられるそうですのでお体を治しませんと」
タイムリーだわ!
よし! そこそこイケメンだといいなあ!
勇者は顔だけ良かったから……。あの漫画で憧れた気持ちはホノリアになって消え失せたし。
折角好きな漫画に転生したんだもの。そこそこ生き延びたいわよ……。
まだ悪い事してないもの。しないようにして、ロイヤル人生謳歌したいわ……。
いつの間にか、窓の外には夕闇が迫っている。
赤く照らされる砂と、煌めく砂を撒き散らしたようにチラチラと輝く星々。
……いい人だと良いなあ、星詠み。利用したいけど、いい人過ぎるのも良心が痛むからそこそこいい人がいいなあ。
名前位、調べておかないとね。
年齢が判りましたね。