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理不尽だけど何とか思い出すわよ

お読み頂き有難う御座います。

ホノリアはベトベト汗びっしょりで目覚めました。

「はっ、夢!」

「ホノリア姫様、どうなさいましたか?」


 ん? 此処何処?

 ホノリアって、私? 何この寝間着。ヒラヒラなのにゴワゴワしてる。関節曲げにくくて寝難いな。

 でも……デザインはお姫様みたいな寝間着……。やだ、私ったらプリンセス?

 じゃあそれらしく喋るべき? うう、自我が……ホノリアになりたくないと囁くのに……。


「……夢見る私も美しいわね」

「さ、左様でございますね」


 ……しまった、お姫様キャラと違ったかな。つい口ずさんだ戯言に侍女が引いてるのが分かるわ。此処は何処私はホノリア? 貴方は誰? 

 あー、地味に記憶が混濁してきてなーんか分かってきたかも? でも、ホノリアはヤダー。

 いや、まだワンチャンある? あの漫画の他の姉妹である皇女が生きてるパターンかも! ……さっきホノリア姫って呼ばれたけど、似た名前の空耳かも!


「かっ……、鏡を持って来て」

「此方に……」

「ギャッフン」


 リアルにギャフン出たよ。我が口からな!

 しかしこの……褐色の福々しい顔に、白墨のような巻き髪で、頬っぺたに埋もれ気味なオレンジなアイズ!

 ……目覚めてもホノリアじゃんよ! 酷い! 酷すぎる! 其の辺の゙、普通の量産型日本人女子として目覚めたかったのに!

 ……でもちょっと……記憶にある私より若い? ……いや、さっきの夢並に腕は肉々しいし手は丸いな。しかしどこもかしこも丸いから、リアル年齢が分からない。色々どうしよう……。


「姫様、汗ばんでいらっしゃいますのでお着替えを致しましょう」

「寝汗塗れの姫様もお美しいですわ」


 この侍女も頭おかしいのか太鼓持ち全開なのか、言ってる事意味不明ね。寝汗塗れの肉々しい体が美しい訳あるか。

 汗まみれで美しいのは、選ばれし推しのみよ。平伏すわよ。

 あれ、でも侍女は気にせずサクサク私の体を拭っていく……。

 という事は。さっきの戯言で合っとるんかい。解釈一致で何よりよ。

 言っといてなんだけど、嫌。


 でも、……ホノリアって、私が混ざらなくても? 其処まで暴君じゃないのかしら。

 侍女も別に怯えてヒイィーお助けーって感じじゃないわよね。

 まさか、怯えてもあんな自然体? それなら侍女ったらプロすぎるわ。


「キャーッ、廊下にクロテカムシ!?」

「早く駆除なさい!」

「ヒィー!」


 ……うん、アレが本気の怯え声だわ。さっきは滅茶苦茶ナチュラル。私への対応は、ノーマルなお勤め声だったのね。

 しかし、何だろクロテカムシって。嫌な名前だわ。前世のあの虫じゃ有りませんように。あの虫と今回も今後もずーっと御縁が有りませんように。


「姫様、お耳汚しを……。今、虫除け弾を撒きましたので」

「そ、そう……」


 ちらっと見えたのは、多分ホウ酸な気配がするお団子……? この世界にも似たようなのが有るのね。ああ思い出さないでおこう、本当にやだな……。それこそテレビでしか聞いたこと無い爆音が聞こえたけど知りたくないわ。廊下壊れないの?


「……今日は頭痛がするわ」

「では、此方へ朝食をお運び致します。何時もの鬼盛りクリームパンケーキ20皿で宜しいですか? ジュースはドドアマフルーツ糖蜜混ぜですわ。五杯に致しましょうね」


 聞くだけで甘味ジャリジャリなメニューね、おい。

 日々、どんだけ食べとんのよ。胸焼けとは無縁なのかこのボディ。こんな甘味をブチ込んだら、余計に頭痛するわよ。


「パンケーキ一枚と無糖のお湯にして」

「ひ、姫様が病に!? まさか難病に!?」


 ……朝ごはんを控えめにしろと言っただけなのに、大騒ぎが起こっている。

 どうしたもんかしら。

 バタバタと侍女がどっか行っちゃったわ。向こうの方で大騒ぎな気配が……。


 うーん、着替えたいんだけどなあ。其の辺にクローゼットとか箪笥とか無いかしら。

 コレか。若干アラビアンな飾り付いてるんだけど箪笥は箪笥ね。

 さて、自分の箪笥と言えど家探しかー。滅茶苦茶入ってるな。寝間着は……どれなのかしら。取り敢えずこの蛍光ピンクで覆われた布ではないわね。毛虫みたいなバッジも付いてるわ。これは何処でも着るのやだな。

 ……仕方無い。侍女を寝て待つか。


 良い寝心地のベッドね。寝汗でベトベトしなきゃ最高だったと思うわ。モッフワーってしてる。


 寝てると思い出してきた。あの夢の勇者野郎、推しなのにホノリア目線だと実に悪辣だったわー。

 ……やっぱり、恐らく『油脂バズ』の勇者よね。アニメにもなった、原作漫画だったかしら。


 えーと、第一皇女と婚約した後、村の幼馴染……いや、未亡人を口説いてダブル不倫? いえ、ダブル婚約してやがったのよね。

 挙げ句、操りやすそうな私を口説いて三股か。その後、他の女にもコナ掛けるのよ。四股じゃん。シコじゃ無くてヨンマタじゃん。推しだしとか言ってらんない。寧ろ避けたいわ。腹立つわー。


 この恨みどうやって晴らしてくれようか。


 でもどうしよう。

 協力者が要るわよね。

 其の辺の騎士に勇者討伐命じる程、私には権力ないし。勇者は未だ何もしてない時期だし。

 ……ということは、未だ悪い事をしてない勇者を悪い事をしない勇者に矯正出来る?

 ……無理そうかしら。ロースペックだもんな、私ことホノリア。

 うーん。


 ……。

 自分磨きとかしたくない。手持ちのロイヤル財産以外のチートも無いだろうし。

 私とホノリアの精神と混ざってるのか、本来が怠け者なのか。


 それとも、勇者を見つけて今から性根を叩き直して手懐ける?

 チートもナシ美貌もナシ性格も悪しで? そもそも性根は此方も悪いわ。一緒にひん曲がる未来……嫌だわ。

 推しとはいえ、ポイ棄て要素のある男の為努力……する意味有るかなあ。


 私は選ばねばならない。

 滅茶苦茶めんどい陰キャの上に、好みじゃない男か。

 利用するだけしてポイ捨てしてきやがった、顔だけ男か。

 因みにどっちも庶民。

 ハイスペックイケメンシングル貴族は、何と同年代に居ない。

 暴れ狂う熱波が憎い。そして、どうせなら愛し合いされたい。


 考えなきゃ……。

 うーむ、うーむ……。

 ……まだ愛が生まれる可能性なのは、前者かなあ。


 取り敢えず私ことホノリアの整理してみよう。まだ侍女来ないし。取り敢えず、我が国に皇位継承者が四人居たのよ。

 イサ、ロリアーナ、ハルミナ、ホノリア。

 皇帝陛下である父と妃、そして側女から生まれたのは、全て皇女。一夫多妻制なのよ。女子の場合は一妻多夫制になるのかしら? 此処は勉強しとくべきね……。


 取り敢えず、第二皇女ロリアーナは乳児期、第三皇女ハルミナは三年前の熱波で命を落とした。

 第一皇女と第四皇女である私以外、もう誰も居ない。

 そんな此処は、詰んでる王国……いえトゥーンデル王国。

 そして、更に詰んでる情報追加思い出したー。もう、名前からしてやだー。


 しかも。

 我が国の皇族は、何と水の妖精に呪われているのよ。


 皇族は城を空にしてはならない。

 外交は皇族全員で出向いてはならない。

 もし、皇族が誰も城にいなければ、水瓶は枯渇する。


 何なの? 水の妖精ってストーカーなの? 止めてよね。 愛は付き纏いじゃないのよ。包み込み離れてても育める系がいいのよ。愛は距離では測れないわ。実際遠距離恋愛は嫌だけどさ。


 でもまあ、妖精に抗議してもストーカー行為と粘着性はそのままで。

 つまり、姉様か私が……良き婿を迎えて皇族を増やせねば、此の地から水は消え失せ、国民諸共死ぬ。

 詰んでるー。


 でも、分からない。

 あの夢……原作? やらかしたとはいえ、何で私、市井に追いやられてたの? 我、プリンセスオブロースペックなれどレアキャラぞ? お父様も含めて、王都の水瓶を何故か満たせるウルトラスーパーデラックスレアキャラ三人衆のひとりぞ?

 閉じ込めて産めよエンドなら……残酷だけどまだ分かる。嫌だけど!


 それとも、市井で良さげな庶民好物件をナンパしてこいってことなの?

 漫画じゃないんだから、無理ゲー過ぎやしない? 


 我、蝶よ花よと育てられたロースペックお姫様ぞ? 知らない場所に置いて行かれたら、そこら辺の金魚よりも直ぐ儚く死ねるわ。自信ある。

 でもまさか、そんな事も考えつかない底辺パッパラパーが『あららん可哀想! 鉢に閉じ込められて可哀想な金魚! 川へお逃げ!』的なドヤ顔パッパラパー気分で放逐したのかしら。

 生態系は狂うし金魚も苦しむし最悪よ。


 ……あの勇者と言うより未亡人、やりそうね。花柄脳味噌してたみたいだし。

 花畑じゃなくて、柄ね。何なら花畑柄ね。生態系狂わせる奴だし。


 しかも、アヤツが死なせた旦那ってもうひとりの幼馴染枠? なのよね。勇者と違って陰キャの大金持ち。星詠みの才能が爆発して、大金持ちだとか。

 ふたりで仲間ハズレにして苛めてたらしいのに、急に擦り寄ったとか。

 とんでもないわねアイツラ。


 事故だったって聞くけど……本当に事故かなあ。

 森のグニャグマにふたりで襲われたって聞いたけど……グニャグマって、女の頭部を好むのよね。熊なのに唐竹割りしてくるらしいわ。強すぎる。


 兎に角何故か男のみ襲われて、女は助かった。

 彼が守ってくれたから、らしいけど。

 可笑しいわよね。だって、男女ふたりで襲われるケースって、絶対に女が被害者だもの。

 滅茶苦茶鼻が効くのよ、熊って。しかも偏食グルメなのよ。滅茶苦茶可笑しいじゃない。


 でも、例えば何か裏工作をしていたら? 例えば女は傍にいなかったりして男単独なら……?

 お腹を空かせたグニャグマなら、直ぐ近くの餌(不味い)と遠くの餌(好み)、どちらを狙うかしら。


 お腹空き過ぎてフラフラなら、走り出せないし眼の前の安全に襲える餌を選ぶよね。

 例えば、あの女が星詠みである夫を突き飛ばしたりして、グニャグマの前に生贄に……。そして、遺産丸ごと持ち逃げ……。


 ……有り得るな。

 グニャグマって、熊にしては足遅いのよね。

 ムシャムシャしてる間に、逃げ失せたかも。

 共犯者の勇者の力を借りて、とか。

 益々出来るな。

 個人的に、とっても有罪を突きつけたいわ。


 よし決めた! 不憫繋がりで星詠みにしよう!

 子供の時から幼馴染虐める性根の奴を叩き直してとか、嫌だわ!

 酷い目に遭えば良いと思うの!


嫌がる割に直ぐに同化しましたね。

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