プロローグ
文章力が全くないですが、どうか温かい目で見ていただけると嬉しいです。
この世には善と悪が存在し、悪を倒す善は英雄と称された。
しかし、そんな善にも明かせない秘密は山ほどある。所詮、善は悪と同じ人間だ。誰であろうが人には心があり、人間という醜い物も常日頃握りしめて生きている。ならば、彼らはただの偽善者に過ぎないのだろうか。
いいや、悪を倒せば誰がなんと言おうと彼らは善であり、英雄だ。ルールを破るものを打破し、従順に従ってきたものだけがこの世を生きることが許される。私は〝彼〟に出会うまではそう思っていた。
〝彼〟は私にこう言った。
「お前らが俺を憎み、社会から阻害するのは正義感でもなんでもない。ルールなどに縛られないで生きている俺らへの嫉妬だ。」
最初はただの負け惜しみだと思っていた。ひたすら自分の辿った道が間違っていなかったと思いたいがために漏れた、救いようのない屁理屈。
だが、悪が善によって倒される度に頭の中を〝彼〟の言葉がよぎる。
その時、ようやく気づいた。〝彼〟によって私は気付かされたと。そして、私はこの時から正義に対しての姿勢が崩れ始めた。
一日前
「仙崎さん、異動の辞令が来てますよ」
「え?」
今朝、出勤をすると同時に後輩からそう告げられた。確認をしてみると自分のデスクの上には辞令と記された1枚のA4用紙が確かに置かれている。
「俺、なんかあかんことしたかな…」
悪事を起こした覚えはないが、上からの命令なので抗議することはもちろんできない。なので大人しく従うほかないのだ。
「ようやく消えてくれるよ」
「でも、ゆうて一年も経ってないよな?」
「あれだけ問題を起こしたんだから当然だろう。正直、迷惑してたから助かる」
部屋の隅っこからこそこそと同僚たちの陰口が聞こえてくるが、そう気にはならない。なぜなら俺に向けてではないからだ。あ、これは多分である。
「おはよう」
しばらくすると一課の村田班長が出勤した。俺はすぐにこの件について班長に言及した。
「班長。これなんだが…」
「…あぁ、お前まだいたのか」
「え?」
村田は仙崎を数秒見つめた末、目を逸らし、
「みんな!お土産買ってきたぞ!」
と宮崎の煎餅を部下に配り始めた。
「村田班長。一つ伝えておきたいことが…」
「お、宮村ぁ。昨日、家族でキャンプに行ったんだってな」
しかし、村田は目を合わすどころか、耳を傾けることさえしない。
え、俺死んだ?
「聞いてください、村田班長」
「…なんだ?」
係長の進路をふさぐように前に出て声をかけると、ようやく反応をしてくれた。
「俺が追いかけている事件なんですけど、この通り異動になってしまったので、後は頼みます」
そう言って事件にまつわる資料を差し出した。すると村田は形相を変え、仙崎を睨むような目で距離を詰めてこう言った。
「お前はそうやって最後まで俺たちに迷惑をかけるんだな」
村田は資料を受け取らずに再び土産を配り始めた。
「…」
みんな泣いてすがってくれると思ったのだが…予想は的を大きく外れ、地球を一周して俺の頭へと着弾した(?)。