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水の華を浄化して

 水の華、海で発生したなら赤潮と言う。

 大量の植物プランクトンが太陽を遮り、水中の動植物たちに甚大な被害を出す。

 対策として、水を機械でろ過したり薬品を混ぜたりしているはず。

 もしやと考え周囲を見渡すと、作業服を着た人が近くを走っていた。

 その人に声をかけ身分証を見せると、作業員さんと一緒に近くの建物に入る。


「ここが池や水中トンネルの機械室になります」

 鍵を開けて入った部屋には機械があった。そこにあるのはろ過器や薬液タンク。

 当たってよかったと、こっそり心の中で思う。

 作業員さんが機械を指差呼称している中、周囲に魔がいるかを探る。


「居る!機械の中に」


――水を清める機械から

  感じ取られる魔を祓え


(ピュリフィ)(ケーション)


 魔法を唱えしばらく待つ。魔の気配は、いまだに感じる。

 魔には段階がある。発生して、ヒトやモノに害を及ぼし、最終的にはとりつく。

 何度か魔法を唱えるものの、魔の気配はずっと感じている。

「………………」

 少しためらいながら、ミサキさんから受け取った機械のボタンを押す。


「どうしたね。アーニー君」

 すぐ近くの床に魔法陣が描かれ、その中からダグさんが現れた。

「池に水の華が咲いて、機械から魔を感じました。今の僕では――」

「わかった。急ごうか」


 ダグさんは僕と同じ魔法で魔を祓った。魔法名の一言だけで。

 そのまま作業員さんに声をかける。

 作業員さんはバインダーをめくり、また指差呼称を始め、紙に何か書き始める。

「よし、なら俺は帰るな」

「……ありがとうございました。ダグさん」

 やや遅れて返事をする僕を、ダグさんは温かい目で僕を見つめる。


「どうしたね、アーニー君」

「実力差を痛感しているところです」

「そうか。なら、大丈夫だな」

「何がですか?」

「アーニー君が、だよ」

「僕が?」

 聞き返すと、ダグさんは優しく話しかけてくれた。

「相手の強さを認めて、自分の弱さを受け入れた人だけが、先に進めるものさ」

「そういうものですかね?」

「ああ。アーニー君は強くなるぞ。俺やピューターさんよりも、な」」

 ダグさんは僕を元気づけると、ポケットから紙を出す。

 ざっと見た感じ、和紙に似ている紙を機械室に広げていく。

 初めて見るそれが気になって、ダグさんに尋ねてみた。

「使い捨ての魔法陣さ。転送魔法がかけてある」

「便利なのがあるんですね」

「こいつの実験って名目で、強引に出てきた。帰ったら、また書類作成だよ」

 ダグさんは、やれやれとお手上げ状態の仕草で僕に話すと、帰っていった。


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