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出航

作者: 秋田 茂

希望に満ち溢れた出航

そうなると思っていた当初

しかしそうはいかなかった今日と

失われた日々に焦燥


重々しく抜錨

不安げな船頭

甲板で黙祷

されど祈りは絶叫




風は強く吹き荒れて

それに帆掛け船は揺れ

目指すべき目標すら見失って

見上げた空には北斗星


暗い絶海に凍え

だだっ広い未来に怯え

孤独な不安の人いきれ

待ち望むのは夜更け




船の残骸にしがみつき漂流し続け早数ヶ月

未だ訪れぬ夜更けはこの絶海には程遠い

諦めの煌めきすら放ち出す我が身は

より強く輝く月光に焼かれ焦げる


そうやって腐ってはやがて息を吹き返し

浮いては沈みを繰り返す宛ら血の池地獄の罪人

昏倒と泥酔を繰り返す日々の果てに

ヨイトマケは千鳥足で帰路に着く旅路




そうだ僕はこんな所で終わるわけにはいかない

へべれけも 浮浪者も 生活保護受給者も

大黒柱も シングルマザーも 三代目の店主も

どいつも僕とおんなじような枷を背負って生きてる

それなのに僕はどいつにもおんなじような背を向けて

諦める理由は恥を晒したくないから

ならばその諦めを恥じることすらも恥ずべきだから

ならばその恥を晒すだけ晒してそれを誇ってやればいい





僕が前を向き決意をし早数ヶ月

未だ訪れぬ夜更けならばこの僕から見に行こう

諦めの煌めきはもうとっくに沈んだ

陽光よりも強い「私」の希望で身を焦がせ





波に揺られて目を覚ますとそこは浜辺

いつかの望んだ朝日に照らされている浜辺

振り返るとかつての港は見えそうもない彼方

「何だ? 何事だ?」とゾロゾロと集まる野次馬


世界がこんな時だって言うからこその

今から叫ぶ僕のこの歌を聞け

ここの歌う阿呆も そこの見る阿呆も

僕の心中を吐露するこの独白を




恵まれない年だ 気の毒な子どもだ

うるせぇよ、今年だからこそ巡り合えた人達

それぞれが抱える それぞれの痛み苦しみ それを乗り越えた 我々を讃えたい



出航、難破、迷走、漂流、再起、着港、野次馬、そして独唱




旅を失い 手にした希望 行き着いたのは浜辺 それはきっと夜明け

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