愛しい女性と添い遂げたい、真実の愛を見つけたんだ!って殿下、それってただの浮気ですわよね? 王族なら不貞を働いても許されるとでも?婚約破棄と言われましてもねえ。
「ミーシャ・ユーランド、お前との婚約破棄をここに宣言する! 男爵令嬢リーリア・ウェルダンをいじめた罪により……」
「殿下、私はその方をいじめたりなんかしておりませんわ」
私は眉を顰め、断罪の内容を否定します。
リーリアというご令嬢が長い栗色の髪を揺らし、殿下の後ろに隠れてこちらを見ていますが……。
ほぼ話したこともない方でしたわ。身分が侯爵令嬢の私とは違いすぎましたもの。
「嘘をつくな、リーリアがそう証言しているのだ。間違いない!」
「……私、実際、お妃教育がはじまってから、ほぼ王宮を出てませんし、招かれたお茶会でもその方とお会いしたことがありませんもの、お茶会リストを照らし合わせてもらえればわかりますわ」
「私、ミーシャ様にその髪型が似合っていないと……舞踏会で」
「髪飾りが取れかけていますわとお話したことはありましたけど、私の近くにオレイル男爵がおられたはずですから聞いてみてください」
私は記憶力だけはよかったので、お話したことは一言一句たがわず覚えていました。
私がそのままを発言すると、おろおろしだすリーリアさん。
「私、ミーシャ様に王宮で水をかけられましたわ……」
「お庭でバラに水やりをしているときに、あなたが通りかかったことなら……でも少しだけ水がかかっただけですし、謝罪はしましたわ。近くに庭師のロイさんがいらしたので聞いてみてくださいまし」
その時のこともそのまま発言を再現しましたら、ふうっとリーリア様の目が閉じて倒れられました。
気絶? その割にタイミングが……。
「リーリアどうした! 大丈夫か!」
「……証言を信じるのなら、証人を連れてきてください」
「お前、やはり恐ろしい女だ! 氷の令嬢といわれるはずだ!」
殿下が叫びますが、ふう……この光景も記憶に残ると思ったらとても嫌でしたわ。
私は婚約破棄されてよかったのかもしれませんわねと思います。
結局この後、男爵と庭師の証言から、私はリーリアさんをいじめていないということはわかりました。
しかし殿下は私がいじめたと聞かず、なら婚約破棄を受け入れます。でも罪は受け入れません。いじめてませんからと私は言いましたわ。
私はパラパラと本を捲りながら、ああ、どうしてこういやなことばかり起きるのでしょうとため息をつきます。
「ミーシャや、次の縁談が……」
「もう男はこりごりですわ」
私は愛し合っているという殿下とリーリアさんの婚約を聞いて、まあ似た者同士でお似合いですわねなどと思っていました。
お父様の縁談があるというのももうしばらくいいですと首を振ります。
「ならこの帳簿の間違いを……」
「15ページ目と30ページ目のここが間違ってます」
私は見たものを覚えるという能力がありまして、それがあれば勉強などほぼしなくて良い成績が取れました。それがあだとなりあの殿下の婚約者に選ばれたのは災難だったと今更ながら思います。
「おお、すまないな、お前が男であれば跡取りに……」
「別に跡取りは弟がいますしいいですわよ」
私はしかしなあ、あの光景を思い出すたびに腹が立つと思います。
いじめていないのにいじめているといわれることは冤罪です。
私は王宮にいたときに見聞きした情報から、王家に不利になるようなものを抜き出し、匿名で陛下に送ることにしました。殿下関連をとくにびっしりと書いてね……。筆跡はごまかしましたわよ。
そして……。
「殿下が廃嫡になり、あのリーリアという娘が修道院に送られるそうだ。しかし殿下が横領などと……」
「王家のお金をちょろまかすのはさすがに王太子でも処断されるとは、さすがに陛下ですわ」
婚約破棄は私から言い出したので、仕方ないと陛下は受け入れられましたが、さすがに不正に目をつむるわけにはいかなかったようですわね。
私はほかに送り付けた王族の不正はどうなりますかねえとにやっと笑ったのです。
でも陛下から手紙が来て、あれはお前だな、今回はそれは言わないで置くと書いてあったので、自分より上には上がいるものだと思い知ったのでありました。
あ、それから新しい婚約者は第二王子と陛下からご指名されましたわ……さすがに受けないわけにもいかないですし、第二王子とは仲良くしてましたから、受けましたわ。
しかし7歳年下とは……18歳と11歳では先が長いですが、まあ……あのバカ殿下より陛下ににていらっしゃるし、将来を期待いたしましょう。
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