冥界神ハデス、復活。
冥界神が復活する話です。
「冥界神様が封印されている孤島が判明しただと」
教団員から教祖に吉報が届いた。
「直ちに信者達と共に孤島に向かうぞ」
「此処が封印の孤島か。封印場所は何処だ」
「中央にある大穴です」
「信者達を先に向かわせろ」
信者達を先頭に大穴に向かった。
「信者達よ。この大穴が冥界神ハデス様が封印されている場所だ。大穴に入るのだ」
しかし、信者達は入ろうとはしない。
業を煮やした教祖達は信者達に対して魔法を放ち、大穴に落とした。
信者達を生け贄にした。
「ゴォォォォ」
大穴に轟音が響いて、冥界神が現れた。
「冥界神ハデス様が復活なされた。皆の者、教団の勝利だ」
教祖が歓喜の声を上げた。
しかし、歓喜の声は絶望の声に変わる。
冥界神ハデスが教祖を含めた教団員の命を奪い始めたのだ。
「こんな馬鹿な、冥」
教祖の最後の言葉は途中で終わった。
やがて、一人を除いた全員の命が奪われた。
ヤゴチエは鳥化魔法で難を逃れた。
「まだ足りぬ。世界樹と神龍を喰らわねば、飢えは満たされぬ」
世界樹と神龍に対する憎悪の叫び声が響いた。
(危なかった。しかし、転移魔法を使える教団員を皆殺しにして、自ら孤島を出られなくするとはな。冥界神は想像以上の馬鹿だな。冥界神をこのまま放置しておくわけにはいかない。危険だが世界樹の女に接触するか)
「あなたは両替商の越後屋」
私の目の前に越後屋が姿を現した。
「俺を知っているのか。初対面のはずだが」
越後屋は初対面だと惚けた。
「忘れたとは言わせないわよ。昔、私を盗賊と勘違いして役人に捕縛させようとしたのに」
《スキル万能(変身)発動》
私はあの時の姿に変身した。
「あの時の小娘はあんただったのか。姿が違うんだから気付かなくても仕方ないだろ。それに、あんたが俺と同じ立場なら役人に知らせると思うけど」
越後屋が正論を言った。
「そ、それは」
反論出来ない。
「そんなことより、大変な事が起こったんだ。冥界神が復活した」
越後屋が爆弾宣言をした。
「冥界神が復活。あなたがどうして知っているのよ」
越後屋を問い詰めた。
「俺が属していた教団の馬鹿共が信者を生け贄に復活させたのさ。そして、教団員も俺以外は冥界神に殺された」
越後屋が事情を説明した。
「あなた、自分だけ逃げたの」
越後屋を非難した。
「俺だって助けられるなら、助けてやったさ」
越後屋が言い訳をした。
(世界樹の幼女よ、冥界)
(バハムート、この薄情者。冷血漢。空中神殿に捕まった時、よくも見捨ててくれたわね)
突然、バハムートから念話が入ったが、私の非難の激しさに切れてしまった。
「バハムートの奴。覚えていなさいよ」
「神龍からの念話か」
越後屋が私の呟きを聞いて、尋ねてきた。
「そうよ」
不貞腐れた口調で答えると、とんでもない言葉が返ってきた。
「冥界神の目的は世界樹と神龍への復讐だ」
無視出来ない内容だった。
「私をどうして」
聞き返した。
「あんたじゃなくて冥界神を封印した昔の世界樹の方だ。しかし、今の世界樹はあんただ。つまり、とばっちりだな」
平然と言い返された。
(冗談じゃない。とばっちりで復讐されるなんて。それに何故、そこまで教えてくれるんだろう)
「越後屋、何故、そこまで教えてくれるの」
越後屋に質問した。
「ルバイラを蘇生させた罪滅ぼしさ。あいつが赤ん坊を誘拐して人質に使うような卑劣な男とは思わなかったのでな。仲間に引き込もうとした。あの赤ん坊とあんたには返しきれない借りが出来た。あの時はすまなかった。謝罪する。それと俺はもう越後屋じゃない。本名のヤゴチエと呼んでくれ」
ヤゴチエが謝罪してきた。
(意外と良い人かも。顔は悪人みたいだけど)
「直ぐに冥界神を討伐しないと」
冥界神の討伐を決意した。
「慌てる事はない。冥界神は封印の孤島から出られない。スキルや魔法が使えないんだ。死者をアンデッドに変え、使役する事しか出来ない。結界を張って閉じ込めれば封印しているのと同じだ。もしかしたら、そのまま力尽きるかもしれない」
ヤゴチエが貴重な情報を教えてくれた。
「それじゃ、その孤島に案内してくれる」
「良いぜ」
《スキル万能(高速飛行)発動》
〈鳥化魔法バードチェンジ〉
私とヤゴチエは封印の孤島に向かった。
「鳥化魔法だっけ。面白い魔法よね。鳥に変化するなんて。術式を教えてよ」
私は暇なので話しかけた。
「あれは俺だけの固有魔法だ。他の者には使えない。他にも人化魔法、獣化魔法、龍化魔法の固有魔法が使える。実は、俺はキメラなんだ。とあるマッドサイエンティストによって造られた」
「ゴメンナサイ。悪い事を聞いたわ」
「気にするな。もう昔の事だ」
「どうして教団の連中は殺されたの」
話しを逸らす為、別の事を聞いてみた。
「冥界神は馬鹿だから簡単に操れると考えていたらしい。しかし、冥界神が想像以上の馬鹿だったから殺された」
「ずいぶん辛辣なのね。自分の崇拝している神に対して」
「冗談言うな。俺は邪神なんか崇拝していない」
「それじゃ、あなたは無神論者なの」
「崇拝している神はいる」
「誰なの」
「秘密だ」
「ケチ。教えてくれても良いじゃない」
「世界樹だよ」
「世界樹って。冗談でしょう」
「本当だ。俺は農園を営んでいる。植物の神の世界樹を崇拝するのは、当たり前だろう」
「どうして農園を営んでいるの」
「それも秘密だ」
「秘密が多いわね。教えてよ」
「親のいない子供達に農業を学ばせる為だ」
「親のいない子供達って。どういう事」
「あいつらは盗みや食い逃げで生きている。そんな生活はいつか悲劇を生む。そうならない為だ」
「意外と優しいのね」
「無駄口は終わりだ。封印の孤島が見えてきた」
「どの島」
「あの大穴のある島だ」
《スキル万能(超視覚)発動》
(何なの。あの不気味な魔物)
異形の魔物が憎悪の叫び声を上げていた。
《スキル万能(大結界)発動》
孤島を結界が覆い、冥界神を閉じ込めた。
「それじゃな」
「色々、ありがとう。さようなら。また会えるかな」
「縁があったらな」
ヤゴチエと別れて、屋敷に転移した。
あの後。バハムートから念話が入ったので、冥界神を結界に閉じ込めた事を伝えた。
次回は暗黒神が復活する話の予定です。




