真琴、神殿と全面対決する。
神殿と全面対決する話です。
「あの忌々しいドライアドが王樹に進化しただと」
神官長レイメイに由々しき報告が入った。
「それだけではありません。ただでさえ、大神殿の壊滅で信者が減っているのに、あのドライアドを新たな神と崇める者が現れました」
「あのドライアドめ、絶対に許せん」
レイメイが顔を真っ赤にして、叫び声を上げた。
「しかし、相手は既にドライアドではなく、数百年間も存在が確認されなかった王樹です。下手な事は出来ません」
一人の神官がレイメイを宥めた。
「黙れ。貴様は追放だ。今直ぐ神殿から出ていけ」
最早、八つ当たりである。
「そうですか、分かりました。神殿を出ていきます。もう、あなたには付いていけない」
神官はレイメイを冷ややかな眼で見た。そして、退出した。
「陛下、神官レオン殿が謁見を申し出ております」
「レオン殿が謁見だと。珍しいな。あの男なら構わん。お通ししろ」
「分かりました」
「陛下、ご無沙汰しております」
「レオン殿、神官のそなたが謁見とは珍しいな」
「私はもう神官ではありません。あの屑神官長レイメイに神殿を追放されました」
「神殿を追放だと、穏やかではないな。何があった」
「レイメイを宥めただけです。それよりも、お気をつけ下さい。レイメイは王樹様に危害を加えるつもりです」
「マコトに危害を加えるだと。理由は何だ」
「大神殿の壊滅で信者が減っている事と王樹様を新たな神と崇める者が現れた為です」
「あの愚か者。宰相、神殿を監視させろ。少しでも怪しい動きをしたら、神官であろうと捕縛しろ」
国王陛下が命令を下した。
「レオン殿はこれからどうするつもりだ」
「故郷に帰って、治療士にでもなります」
「そうか」
国王陛下が寂しそうに頷いた。
「レオン殿、お待ち下さい。王宮で働いてもらえませんか。最近の不穏な事件はどこかで繋がっているような気がするのです。緊急事態に備えて、レオン殿のような有能な者を探していました」
宰相がレオンに王宮で働くよう提案をした。
「分かりました。私の力がお役に立てるのならば、お引き受けします」
レオンが快諾した。
「皆、神殿には注意してくれ。レイメイ神官長の命令で危害を加える恐れがある」
宰相が訪ねて来て、忠告をした。
「どうして分かったの」
私は質問した。
「元神官のレオンが教えてくれた。彼はマコトの事でレイメイを宥めたら、八つ当たりで神殿を追放された。今は王宮で働いている」
「その人に会ってみたいわね」
「今度、王宮に来た時に紹介してやる。それから、アレサ王女とテレサ王女がお前に会いたがっているから、二人を訪ねてくれ」
「テレサ王女はともかく、アレサ王女は勘弁してくれない」
しばらく雑談して、宰相は王宮に戻った。
(あの屑神官長め。私達に危害を加えるだと。百倍にして、返してやる)
私はレイメイに対して、激しい怒りを感じた。
私は屋敷内に何者かが侵入した事に気づいた。
「ミコト、皆に知らせなさい」
「マコト様はどうされるのですか」
「侵入者を捕縛します」
私は侵入者の捕縛の為、庭に出た。
「お前達、この屋敷に侵入するとは命知らずにも程があるわよ」
「こいつが標的のドライアドだ」
「一人で来るとは愚かな奴よ」
「手間が省けたわ」
侵入者達が好き勝手な戯れ言を吐いている。
「生憎だけど、私は既にドライアドではないの。今は王樹よ。覚えておきなさい」
《スキル植物支配発動》
「あなた達、侵入者を捕縛しなさい」
庭の植物達に侵入者の捕縛を命令した。
「何だ。この弦は」
「体が動かない」
「は、離せ」
樹木から弦が伸び、侵入者達を捕縛した。
「抵抗しても無駄よ。観念しなさい」
「私の可愛いマコトを襲うなんて、万死に値するわ。ラム、この愚か者達を尋問するから手伝いなさい」
「はい。師匠、拷問を手伝います」
「尋問よ」
二人は侵入者を地下の尋問室に連行した。
「ホウマさん、白状しましたか」
「白状したわよ。やっぱり、レイメイの命令だったわ。暗殺専門の神官だそうよ」
「暗殺専門の神官って、そんなのが存在するんですか」
「現に存在しているじゃない。神官の自白ならレイメイを告発できるわよ」
「私も告発に同行します」
「レイメイ神官長。あなたを殺人教唆の疑いで拘束します」
王宮の監察官がレイメイを拘束しようとした。
「ふざけるな。私は神官長だぞ。お前達、こいつらを排除しろ」
レイメイは往生際が悪く、抵抗した。
《スキル拘束発動》
私はレイメイを拘束した。
「貴様はドライアド」
私に気付いて、叫び声を上げた。
「レイメイ神官長、往生際が悪いわよ」
私は冷たい眼差しをレイメイに向けた。
「忌々しいドライアドめ。覚えておれ」
レイメイは連行されていった。
数日後。
「神殿は取り潰すとして、施設の後利用について、皆の意見を聞きたい」
神殿施設の後利用についての会議が開かれた。
何故か、私も参加させられていた。
「陛下、私から提案があります」
仕方ないので、意見を述べる事にした。
「病院にするのはどうですか」
「病院とは何だ」
(ドジった。地球の言葉を使ってしまった)
「病院とは病人や怪我人が治療が受けられる施設の事です」
「治療院の事か」
「そうです。ただし、誰でも支払える低料金で治療と薬の購入が出来る事が第一条件です」
「待って下さい。低料金にした場合、赤字になる可能性があります。赤字金額の負担はどうするのです」
財務担当の重臣が反論してきた。
「勿論、王宮に負担してもらいます」
「そんな余分な予算はありません」
「神官達から没収した財産があるじゃないですか」
「あれは緊急事態の場合に備えての予備費です」
「あれだけの財産を全て予備費にするのは効率が悪くありませんか」
私は突っ込みを入れた。
「そ、それは」
「どうしました。私の意見が間違っていますか」
重臣は無言になった。
「他に反論のある人はいますか」
誰も反論しなかった。
「決まりですね。後は責任者ですが、推薦したい人がいます。元神官のレオン様です」
私はレオンさんを責任者に推薦した。
「レオン殿か。確かに彼なら適任だ」
国王陛下も賛成してくれた。
「レオン殿を呼べ」
「陛下、私をお呼びだとか」
(この人がレオンさん。なかなかのイケメンね)
「レオン殿、神殿の後利用について話しがある。治療院にする事が決定した。レオン殿に責任者をしてもらいたい」
「私がですか」
「そうだ。マコトの強い推薦で決まった」
レオンさんが私を見た。
私は頷いた。
「分かりました。お引き受けします」
レオンさんが責任者を引き受けてくれた。
「王樹様、お待ち下さい」
レオンさんが私を呼び止めた。
「何でしょう」
「何故、面識の無い私を推薦したのです」
「宰相様からあなたが有能だと聞いていたからです」
「それだけで、私を推薦したのですか。少々軽率ではないですか」
「私は宰相様を信じています。だから、推薦したのです」
「そうですか」
(レオンさん、落胆したみたい)
「あなたではなく、宰相様を信じて推薦した事がご不満ですか。それならば、あなたが有能だと証明して下さい」
私はレオンさんを挑発した。
「分かりました。必ず、王樹様の信用を得てみせます」
「期待しております。それでは、失礼します」
(レオンさん、本当にごめんなさい。期待していますよ)
私は足早に、その場を離れた。
次回はスクーグスローを従属魔物にする話です。




