乙女の牙、獣人の国に行く。(4)
乙女の牙が獣人の国に行く話です。
翌日。
「アレサ王女、ベンガルだ。入室しても構わないか」
ベンガル王がアレサ王女の部屋を訪ねた。
「ベンガル陛下。ええ、どうぞお入り下さい」
アレサ王女がベンガル王を室内に迎え入れた。
「アレサ王女、頼みがある。あのドライアドをルマニアに譲ってくれないか。それが無理なら、大使として駐在させて欲しい」
ベンガル王がとんでもない頼み事をしてきた。
「ベンガル陛下、申し訳ありません。それは出来ません。彼女は物ではありません。自分の意志があります」
アレサ王女は頼みを断った。
「本人の意志があれば、了承してくれるのだな。確約を取ったからな。取り消しは認めないからな」
ベンガル王がゴリ押しをした。
「待って下さい。そういう意味ではありません」
アレサ王女が顔を真っ青にして、ベンガル王を止めた。
「話は以上だ。失礼する」
ベンガル王は脱兎の如く、退室した。
「マコト、大変な事になったわ。ベンガル陛下があなたを欲しいと言ってきたのよ。勿論、断ったわ。彼女は物ではありません。自分の意志がありますって。そうしたら、本人の意志があればいいのだなと、ゴリ押しをされてしまったのよ。どうすればいい」
アレサ王女が興奮して、事の顛末を話してくれた。
「アレサ王女様、落ち着いて下さい。どうするもなにも、私が拒否すればいいだけの話です」
私は平然と答えた。
「あなたはベンガル陛下の事を知らないから、平然としていられるのよ。ベンガル陛下はゴリ押しのベンガルと呼ばれているのよ。外交的なゴリ押しをしてくるに決まっているわ」
アレサ王女が真剣な表情で話を続ける。
「分かりました。私がベンガル陛下と話をつけてきます」
私はベンガル王と話をつける事にした。
「やはり、来たか」
ベンガル王が謁見室で、私を待ち構えていた。
「ベンガル陛下、私はルーン王国に籍を置く者です。他の国で暮らす意志は絶対にありません。諦めて下さい。その代わり、ルマニアがルーン王国と友好的な関係を続ける限り、決して敵対しない事を御約束します。そして、ルマニアに困った事が起こった場合、出来る限りの協力も御約束します。重ねて言いますが、私の事は諦めて下さい」
私は出来る限りの妥協案を提示した。
「分かった。今のところは引いておこう。ゴリ押しを続けても、やぶ蛇になるだけだ。ただし、今言った事は忘れるなよ」
ベンガル王は渋々、今のところは引いてくれた。
「アレサ王女様、ベンガル陛下は渋々、今のところは引いてくれました」
私は話がついた事を報告した。
「良かった」
アレサ王女は安堵の表情で笑った。
「同盟を結ぶ事になったわ。取り敢えず、今回の表敬訪問は成功よ。マコト、あなたのおかげよ。帰りの馬車の中で二人きりでお祝いしましょう」
アレサ王女がとんでもない事を言い出した。
(奥の手を出すしかないわね)
「アレサ王女様、帰りは用心の為、転移でルーン王国に移動します」
私はベンガル王を見習って、ゴリ押しをする事にした。
転移を怖がる、アレサ王女と侍女達をゴリ押しで説得した。
《スキル創造発動。大転移創造》
《スキル大転移発動》
私は広範囲を転移させるスキルを創造した。
数台の馬車ごと転移で帰国した。
この一件により王都内でゴリ押しのマコトと呼ばれるようになった。ド畜生。
次回は真琴が正式な冒険者になる話の予定です。




