マリア、激怒する。
真琴が神殿と対立するきっかけの話です。
十日後。王都を観光中、トラブルが起こった。
「お爺ちゃんが殺された」
パルムスの町の神父から凶報が伝えられた。
「誰に殺されたんです」
「突然、王宮騎士が町に現れて、レカタさんを捕縛しようとした。しかし、レカタさんの必死の抵抗に手を焼いた騎士の一人が切りつけたんだ」
「そんな、ひどい」
「マリア、神殿に行こう。あそこなら王宮騎士も簡単には手が出せない」
「待って下さい。マリアさんは混乱しています。どこかで休ませないといけません。ホウマさんの屋敷はすぐ近くです。屋敷に連れて行きます」
「君がサキュバストレントのマコトだね。狙われているのは君だ。君も一緒に神殿に行こう。あそこなら安全だ」
「ホウマさんの屋敷も安全です。とりあえず、屋敷に向かいます。マリアさん、行こう」
私は強引にマリアさんを連れて屋敷に向かった。
「マコト、さっきの話をどう思う」
セイラさんが私に問いかけてきた。
「話に不自然な箇所がありました。一つ目はレカタさんの殺害を見ていたような事。二つ目は私がサキュバストレントだと知っていた事。三つ目パルムスの町では私の事は秘密にしていたのに私の名前を知っている事です」
「私は神父の態度に不自然さを感じた。あの神父は私達四人を異端者として嫌っていたんだ。それなのに、さっきは気味が悪いほど優しかった。絶対に裏がある」
「私が王宮に探りをいれるわ」
ホウマさんが話に割り込んだ。
「大丈夫ですか。王宮に忍び込むなんて」
「別に忍び込むわけじゃないわ。私は国王や宰相とは親しいのよ」
「私は魔法使いのホウマ。宰相にホウマが来たと取り次ぎなさい」
ホウマさんは堂々と正門の衛兵に命令した。
「傲慢のホウマ」
「その呼び名はやめなさい」
ホウマさんは衛兵を叱責した。
「申し訳ございません」
「謝罪はいいから。早く取り次ぎなさい」
「ホウマ、何の用だ」
「サキュバストレントの一件よ。マリアという冒険者の祖父が殺害されたわ」
「殺害。物騒な話だな」
「他人事みたいな態度ね。王宮騎士が殺害したと訴えた人物が居るのよ」
「どこの馬鹿だ。戯言を言うなんて」
「パルムスの町の神父よ」
「警備官に捕縛させてやる」
「本当に王宮騎士は殺害していないのね」
「いくらお前でも怒るぞ。確かにパルムスの町にマリアとかいう冒険者の祖父を丁重にお連れしろと王宮騎士に命令した。しかし、家には誰も居なかったそうだ」
「死体も無かったの」
「争った跡も無かったらしい」
「私はその神父が真犯人だと睨んでいるわ。神父の捕縛も尋問も私がするわ」
「尋問。拷問の間違いだろ」
「殴るわよ」
「話は終わりか」
「そうよ」
「サキュバストレントに会わせてくれないか」
「美味しいお酒をお土産に遊びに来たら、会わせてあげる。それじゃまたね」
「ホウマさん、怪我はありませんか」
「大丈夫って言ったでしょう。宰相に会って来たわ。王宮騎士は殺害に関係無いわ。多分、神父が真犯人ね。セイラとミオは神父を捕縛してくれる」
「分かった」
「任せて」
「師匠、私は」
「ラムは私と神父の尋問よ」
「拷問。楽しみ」
「尋問よ。尋問」
「ホウマさん、私は」
「マコトはマリアと一緒に居てあげなさい」
「神父さん、マリアが話がしたいって。ホウマさんの屋敷まで来てくれる」
「話がしたいなら、神殿に来たまえ」
「ホウマさんの屋敷で話したいってさ。拒否するなら、力ずくで連れて来いだってさ」
「神父さん、初めまして。魔法使いのホウマです」
「私をどうするつもりだ」
「ただ尋問するだけよ」
「そう拷問するだけ」
「拷問だと」
「ラム、尋問よ。神父さん、レカタさんを殺害したのは、あなたよね。誰の指示なの」
「違う。殺害したのは王宮騎士だ」
「素直に白状する気は無いようね。ラム、右手の親指を切り落としなさい」
「はい。師匠、右手の指を五本とも切り落とせばいいんですね」
「親指よ。親指だけよ」
「待て。待ってくれ。レカタは死んでいない。監禁しているだけだ」
「嘘をつくのはやめなさい」
「嘘じゃない」
「指示したのは」
「レイメイ神官長だ」
「どこに監禁したの」
「雇った冒険者の隠れ家だ」
「どこにあるの」
「王都の北にある廃村だ」
「レカタさんは生きているわ。王都の北にある廃村に監禁されているみたい。セイラ、ミオ、ラム、救出に行って」
「私も行きます」
マリアが名乗りを上げた。
「マリアさんが行くなら、私も行きます」
「あそこね」
《スキル探知発動》
(反応が六つ、手前に五つ、奥に一つ)
「手前に五人。奥に一人。奥のがレカタさんみたいです」
「私達が突入する。マリア達は待機」
「「「「「ウギァァ」」」」」
雇われ冒険者達を無力化した。
「お爺ちゃん、大丈夫」
「マリアか」
「すぐ治すから。ヒール」
レカタさんの傷が治っていく。
「マリア、ありがとう」
「無事で良かった」
「マリアさん、レカタさんを早く休ませないと」
「それじゃ、引き上げましょう」
私達は雇われ冒険者を縛り上げ、王都に戻った。
「レカタさん、疲れているところ悪いんだけど、状況を説明して下さい」
私はレカタさんに状況説明を求めた。
「神父が複数の男達を引き連れて、私を拘束した。そして、あそこに監禁された」
「やっぱり、神父が犯人だったのね。許せない」
マリアさんが激怒した。
「あいつら、どうする」
「雇われ冒険者達は警備官に引き渡すとして、問題は神父ね」
「私の実験に付き合ってもらうわ」
ホウマさんが物騒な事を言い出した。
「師匠、私は解剖したい」
ラムさんがものすごく物騒な事を言い出した。
「神官長はどうするの」
「相手が神官長なら、具体的な証拠が必要よ。神父の証言だけでは、捕縛するには足りないわ。あなた達、神殿は敵と認識して用心する事。いいわね」
結局、皆で制裁後、警備官に引き渡した。
「お爺ちゃん、また今度のような事が起こるかもしれないから、此処で暮らさない。ホウマさんも了承してくれたし」
「う~ん」
レカタさんは考え込んだ。
「分かった。此処にお世話になる。ホウマさん、よろしくお願いします」
真琴が宰相と意気投合する話です。




