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古代戦艦クルクス ~呪われた女教王の祈り~  作者: SheilaCross
Episode―3「水飛沫をあげて」
12/17

―1―



 「また次もレオナルドを狙うだろう」と言う帝都神父に、ティラナが問い掛けた。

「帝都神父。ギデオンの攻撃が当たり破壊されたとき、奴は酷く驚いた顔をしていた。それは何故だと思う」


「我々を甘くみて、まさか攻撃を食らうとは思ってなかったのだろう」

「いいや、あれは……」

 ティラナの声を遮り、帝都神父は言った。

「私はこう思うのだ! あれは、宇宙に蔓延る海賊だと!」


 会場にどよめきが起こった。驚き、立ち上がる者さえいた。

「私は考えたのだ。ごく普通の人類ならば、一年前あんな無慈悲な攻撃をするはずがないと! それに、それにだ。もし仮に、レオナルドへの攻撃は手違いで起きた事故だったとしても、我々と接触したあとすぐに自分たちの母艦に戻り、連絡機を寄越すなりなんなり、我々とコンタクトを取ろうとするはずだ。しかし、実際は一年あいだ何も起きなかった。それは奴らが母艦を持たぬ流離い者で、ごく普通の人類ではないということだ」


 誰もが生唾を呑み込み、白熱していく帝都神父の持論を聞くために耳を済ませた。静まり返った会場の真ん中で、ふんぞりかえりながら帝都神父は続ける。

「恐らく手出しできなかった憂さ晴らしに来たのだ。嗚呼、なんて、なんて悪どい奴らなのだろう。そして、前回に邪魔をされた憎きレオナルドをまんまとみつけ出したたというわけだ……!」


 レオナルドが尋ねた。「相手からは、おれたちの姿がみえるのでしょうか」

「勿論そうだろう。なにしろ技術が発展しているのだから。レオナルド、奴らはお前の顔を覚えていたのだ」


 今度はシルヴィオが、非難めいた声色で言った。「でも……! レオと同じ顔である俺は狙われませんでした。確かに全く一緒ではありませんけど、一瞬しかみていないような相手なら俺と間違うはずです。今回は俺の方が先に(そら)に出て、キューブと対面しました。何の反応もありませんでした。その、なんというか、レオナルドのことはただ……偶然ではないでしょうか」


 「ふむ」帝都神父はシルヴィオとレオナルドを交互に見比べると、すぐにこう返した。「瞳の色だ。シルヴィオは深き海の如く碧く、レオナルドは実ったばかりの葉のような鮮やかな緑だ。この決定的な違いは、流石に敵でも分かるだろう」

「では今回、レオナルドを撃たなかったのは何故でしょうか」

「そうだな。うむ、偵察だったのだろう。なかなか執着深い奴らめ!」

 シルヴィオはつい肩を竦めた。


 ティラナが一歩進み出て、言葉尻強く帝都神父に訴える。「レオナルドのことは今はどうでもいい! 仮に狙われているならもう戦闘機に乗せなければ良いだけの話だ。今は話すべきことは、我々は奴らをどう対処するかだ! 奴らが海賊なら目的は戦闘機でなく、このクルクスの母艦を襲い悪事を働くことだろう。ならまた襲来するしいよいよ母艦が危うい。あなたもいま言っただろう。今回は偵察だったのかもしれないと!」


 帝都神父はティラナに向かって何か言いかけて口を開き、しかしすぐに閉じた。何を考えているのか、はたまた何も考えていないのか、ティラナが顎を上げてを蔑むようにみつめると、帝都神父は目を細めた。



 はるか遠く、一番後ろの席から前へと進み出る男がいた。「今は……すぐに母艦を攻撃されることはないように思う」

 鴇畑(トキハタ)首相であった。彼の本名は、ロベルト・S・鴇畑。


 この政府トップに着く男は、ティラナとシルヴィオの世話係であるローザの夫であり、鴇畑一祐(トキ)の父親である(ただし、この夫婦・親子関係は複雑であり、いずれ詳しく話すことになるだろう)。

 彼は老人のような白髪頭で、笑うと口元に引き攣りを起こすので、能面のように顔の筋肉を動かさずに喋る、少し変わった男だった。


「本当に我々クルクスを狙うなら、何故一年もの期間を開けるのだ。もしかしたら我々は、一度出会い諦めていった海賊と、偶然再会してしまっただけなのかもしれない」

 帝都神父は鴇畑首相から顔を背けた。鴇畑首相は彼を気にせずこう続けた。

「焦らずじっくり話し合おう……。まだ画像の解析も終わっていないことだし。実際に目にした彼らも、昨日の今日でまだ考えが纏まっていないだろう。今日は報告会とし、あとはまた各々で考え、また集まろうではないか」


 ティラナは力強く同意した。「首相の言う通りだ」

 帝都神父は何度か頷くと(それは納得できぬことを呑み込む為に、何度も自分に言い聞かせるかの如く! そうして彼は会場全体を見回して、口元に微笑を浮かべたのだった)「閉会する!」と叫び、みなを残し颯爽と帰って行った。



 会場から退出して行くオトナたちを見送り、残された出演者はステージ上に座り込んで、降りることすら億劫になっていた。たった数十分ばかりの会合だったのに、みな恐ろしく疲れていた。


 最後まで会場に残っていた鴇畑首相が退出しようと立ち上がったとき、息子であるトキは小走りで彼に近付くと恐る恐る話し掛けた。「お父様。あの、久し振りにお会いしたので……えっと……」


 鴇畑首相は周りに聞こえないよう小声で「私のことは気にしなくて良い。ティラナ様のお側にいなさい」と言った。

 分かりきった返答だと、トキはすぐさま自分の立場を思い出した。「はい」


 その二人の姿を、会場の暗がりからただじっとみつめる目があった。アイリーン・エディンバラ、彼女は、自分のチェック柄のスカートをギュッと握り締めた。彼女の瞳に灯る激しい炎に勘付く者は誰一人としていなかった。




 同じころ、ステージ上でぼんやり映像を見返しているエレナの肩を、ティラナが叩いた。「どうした? なにか分かったのか?」

 エレナは「ふふ」と笑うと、首を横に振った。「いいえ。何も……」


 エレナは自分の三つ編みを弄りながら「ねえティラ。この人は本当に、レオのことを狙っているのかしら……」と呟いた。

「さあ。まだ分からない」

「レオのことを殺そうとしているのかしら」

 エレナの人の話をちゃんと聞かない悪癖が出ている、と気付いたティラナは相槌を止め、一緒に映像を見上げた。


 「ふふ、わたしはまだ飛びたいわ。宇宙を」エレナは構わず、独り言のように呟き続ける。「またきっと来るものね、そうよね」

 ティラナは「分かった分かった。ほらもう行くぞ」と、肩を並べているシルヴィオとレオナルドの方へ、エレナの手を引いた。


 レオナルドがため息を吐くシルヴィオの肩を抱き、言った。「大丈夫だよ、シル。なんとかなる。そんなに落ち込まないでくれ」

「はあ。お前が心配なんだよ」

 ティラナが横から口を出す。「まったくだ」

 「ティラ!」レオナルドはパッと顔を綻ばせた。「ありがとう、ふたりとも」


 王家四人が揃ったところで、ステージのど真ん中で胡座をかいている郡山(コオリヤマ)が尋ねた。「おおい、ちょっと聞きたいんだけど。シル達は今日、学校は休んだのか?」

「そうですよ。それどころじゃないし」

「そうだよな。えー、では、我々は我々で会議をしよう」

 シルヴィオが振り返り、敬礼をしてみせる。「モチロン」

「でもその前に」

 郡山は、はにかみ、その場にいる全員に聞こえるように言った。

「よし、お前ら! 遊びに行くぞ!」



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