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女子力(物理)に物申す

作者: kaiya

何か書きたくなった。何も考えずに読んでください。


 女子力。

 意味:女性が自らの生き方を演出する力。また、女性が自分の綺麗さ、センスの良さを目立たせて存在を示す力。


 つまり、女性が女性らしく過ごすための力ということではないだろうか。


 ここで『女子力(物理)』について考えてみよう。

 前述の女子力に『(物理)』なるものがくっついた言葉だが、これは一体どういう意味になるのか。

 女子、つまり大人になる前の女の子たちが、暴力で問題を解決しようとするのが最もわかりやすいだろう。その暴力に種類があるのが問題だ。

 なにか武術をやっていて、それを使用する女子

 刃物を持ち出し、脅迫する女子。

 鈍器を振り回す女子。

 物を投げてくる女子。

 とりあえず強い女子。


 俺は心から思う。


「(物理)はやめてくれ…」


*****


 朝。


「おはよう渚」

「おはよう誠君」

 

 学校に登校するときは彼女の内海渚と一緒だ。毎朝待ち合わせをして一緒に行くんだが……。


「誠君……」

「ん?」

「昨日電話してくれなかったのはなんで?」

「え、あ……」

「二日連続で電話してくれなかったよ? 誠君は私が大切じゃないの? 好きだって言ってくれたのは嘘だったの?」

「いや、文化祭の準備が大変で眠くてさ……」

「……またあのおんなといっしょ?」

「あの女って…生徒会長のことか?」

「そうよ。あの女いつも誠くん一緒にいるじゃない。誠くんの傍にいるのは私なのになんで? なんでちがうおんながいるの?」

「会長とは仕事だから一緒に居るのであって、俺の彼女は渚だろ? 傍にいてくれるのは渚がいいな」

「……そ、そんな…傍にいてほしいって…それはもうけっこ…キャッ♪」


 内海渚。ヤンデレ。女子力(物理)持ち。

 いや、最初は普通に可愛い女子だった。それが付き合っているうちに彼氏の交友関係、とくに女子に関して厳しくなって、今ではすっかり立派なヤンデレだ。

 平仮名言葉をしゃべりだしたら要注意だ。顔も能面みたいになって、虚ろな目で攻め立ててくる。そうなったら『お前が好きだ』的なニュアンスを含む言葉を聞けば治まるが、同じ言葉では通用しない。

 言ったことのある言葉を言うと、


「前も言ってたよね? そんなてきとうなこというなんて…わたしはこんなにまことくんがすきなのに……」


と言いだして刃物を取り出していたからな。あれはやばい。裁ちばさみとか持ち歩くなよ…。そして分解して二刀流みたいにしてくるんじゃねぇよ……。


「ほ、ほら、学校行こうぜ」

「うん♡」


 手をつないで学校に向かう。こうしておけば病み状態にはなりにくい。デレ状態のときは可愛いんだがなぁ…。


「あれ、誠君。これなぁに?」

「それは……あぁ、昨日バレー部に文化祭の出し物を何にするか聞きに行ったときにおすそ分けしてもらったやつの袋だ」


 渚が示したのは、バレー部が作ったクッキーの袋だった。


「…バレー部って…女子?」

「ん? ああ、男子は運動部合同でお化け屋敷作るらしいから」

「……てづくり…?」

「多分な。けっこう美味かったし、文化祭で寄ってみるのもいいと思うぞ」

「…じょしのてづくり……わたしのりょうりじゃなくて……」

「あ」

 

 渚は繋いでいた手を離し、カバンからカッターを取り出した。


 ああ……今日はカッターの日か…。包丁よりはましだな。(物理)に刃物は入るのだろうか…?



「ねぇどうしてわたしのりょうりはたべてくれないのにほかのおんなのてりょうりはたべるのまことくんのかのじょはわたしなのになんでほかのおんなとしゃべるのなんででんわしてくれなかったのなんでなんで」

「わ! ちょ、待て! 落ち着け!!」


 …今日もいい天気だなー。

 あ、俺? ハーレム系主人公に友人扱いされているモブ一号です。


*****


 ところかわって生徒会室。


「そんな感じでちょっとかすりましたけど、一緒に料理したら機嫌直してくれたんでよかったです」

「なんだ。動きづらそうにしていたが大丈夫そうで何よりだ。ところで、各部活の出し物は決まったのか?」

「あー文化部に確認まだのところありますね…。今日行ってきます」

「ああ、頼んだ」

 

 文化部は題材が決まっているところが多いから、聞きに行くのが楽だ。


「おーう生徒かいちょー! 予算もうちょいくれ! 食材増やしたいからさー!」


 …運動部は仕事増やしてくるから面倒でしょうがないがな。


「なんだ、誠もいるじゃん! 昨日のクッキーどうだった?」

「ああ、結構おいしかったよ」

「ほう、そんなものを貰っていたのか…私が予算の割り振りで悩んでいる最中に」

「あ、いや」

「は~ん。かいちょーさんは役員のちょっとした息抜きも許さないんですかぁ?」

「……言うじゃないか、杉山蓮華…!」


 ……また始まった。

 生徒会長の芝ほたる。色々ハイスペックだが女子力(物理)を地でいく。家が薙刀の道場をやっていて、護身術も一通りできる武道系女子。なお料理はできない。

 女子バレー部の杉山蓮華。二年にしてエースとまで言われる女子力(物理)を持つ身体能力お化け。日々ジャンプして鍛えられた足はもはや凶器と化している。

 

 もちろん、二人とも誠にホの字。内海渚に取られているが、奪う気満々で真のことを狙っている。


「会長! 俺はサボってたわけじゃないです! バレー部の皆が一生懸命作ったものだから断れなくて…あ! おいしかったので予算増やしてあげてもいいんじゃないでしょうか?」

「いいのか誠!」

「良いわけないだろう! ただでさえ例年より多いんだぞ!」


 ああ…火に油を注いでいるバカはともかく。この空間で暴れられるとまずい。


「その図々しさを叩き直してやろう!」

「アタシが捕まるとでも?」


 やめてくれ…せっかく整理した書類が崩れ…ぶべッ。


「すまん!!」

「おのれ杉山蓮華!」


 蹴られた。


*****


「大丈夫か?」

「結構痛かった」


 会長と杉山(怪獣大決戦)は放置して、今日の仕事である文化部の予算案の回収に回っているところだ。

 囲碁将棋部と鉄道研究部は男子しかいないから良し。


「…次は手芸部か……」

「え、なんでそんな嫌そうなの?」


 だってさぁ…手芸部にはお前に惚れているやつがいるからだよ。


*****


「ふぁっ!? 誠さん!?」

「辻さんこんにちわ。今日は何を作ってるの?」

「あの、えと、編みぐるみでペンギンを…」

「へぇ、かわいいね!」

「ひゃいっ! ありがとうごじゃいますっ!」


 辻みどり。手芸部の後輩。小動物っぽくて人気らしいが、俺にとっては恐怖の対象でしかない。


「ん? これは何?」

「あ、それはちょっと趣向を変えてアクセサリーを作ろうと思って…」

「ふ~ん…結構きれいだね。色次第では俺もつけられそう」

「ホ、ホントですか! 私頑張って作りますねっ!」


 そうやって気合い入れるってことは…くる…。


「せ、先輩は何色が好きですかっ!?」

「ん~濃い青かなぁ」

「濃い青……わかりまし…あっ」


 辻、何かを取りに行こうとしてつまずく→咄嗟に掴もうとした机にあったミシンを倒す→ミシンがアイロンを倒す→机の反対側にいた俺の脚に落ちる。


「ふぬぁ!」

「おっと、大丈夫かい」

「ひゃ、ひゃい…♡」


 辻と誠でラブコメしてる間、俺は足を押さえてうずくまっていた。

 くそっ!机をはさめば回避できると思ったのが間違いだった!


 辻の嫌なところは、ドジっ娘属性で誠とラブコメできるが、ドジった災害は周囲が受けるという恐ろしい体質だ。もちろん一番の被害者は俺。


*****


「あら、誠君。生徒会のお仕事中?」

「最上先輩! お疲れ様です!」


 …出た……。

 最上京子。前生徒会長。任期が終わって今の会長と交代したが、物理的強さはむしろ最上の方が上。なにしろとりあえず強い。そして誠に(ry


「待て、杉山蓮華!」

「誰が待つか! あ、誠じゃん!」

「会長! 杉山さんも!」


 生徒会長と杉山の追いかけっこはまだ続いていた。敏捷性では杉山が優るらしい。


「芝、そんなに急いで…」

「最上か…そこの図々しいウサギを捕まえてくれないか?」

「誰がウサギか! やんのかこんにゃろう!」

「私は野郎ではないが…逃げないのは好都合だ」

「あっ、誠先輩! これ作ってみたんですけど…きゃぁっ!」


 武道系女子、芝ほたる。活発系女子、杉山蓮華。ドジっ娘、芝みどり。最強、最上京子。

 …リーチだ………。そして残った一人は必ず来る。


 まず辻が掃除用具入れを倒し、中から出てきたホウキちりとりその他を芝が受け流しついでに杉山と近くにいた俺に弾き、杉山がそれを俺の方に蹴り飛ばし、結果掃除用具に巻き込まれる俺。それを尻目にラブコメしている辻と誠。



「うごぇ」

「大丈夫かい?」

「は、はい……♡ ありがとうございます……」

「ええいぴょんぴょんと飛び回りおって!」

「バレー部は飛ぶのが仕事!」

「最上は捕まえるのか邪魔するのかはっきりしてくれ!」

「え~、私は誠君にちょっとしたオ・ネ・ガ・イがあるんだけど…」


 色目を使いつつ杉山をこっちに投げ飛ばし…ぐふっ。人一人分は重い


「やったな!?」

「先輩! あの、これ! ひゃぁっ!?」

「ええい、今度は私か!」

「邪魔よ~」


 杉山の次は会長が投げられ、会長には着地の足場にされ…ぐえっ! 鳩尾はアカン……。

 そして杉山が最上に投げた塵取りはさりげなく辻に向かって弾かれて、辻がしやがんで避けるとなぜかまた俺に…いてっ!


「誠君、文化祭一緒に回らない?」

「「「!!」」」


 そして混沌とした場面で最上が誠にアプローチをかける。


「え、俺でいいんですか?」

「ええ、あなたがいいのよ」

「じゃあ喜んで!」

「……よろこんで……? まことくん……?」

「あ、渚……」


 満を持して内海渚が登場。ヤンデレトリガー発動必至な場面だ。流石の奴も今の発言がまずかったことはわかっているらしい。

 そして俺はいろんなダメージ+掃除用具が邪魔で咄嗟には動けない。


「…まことくんはわたしのものまことくんはわたしのものまことくんはわたしのものまことくんはわたしのものまことくんはわたしのものまことくんはわたしのものまことくんはわたしのものまことくんはわたしのもの……」

「あらら…内海ちゃんは随分余裕がないわねぇ。誠君もそうおもうでしょ?」

「ふん! そもそも誠は私と生徒会の見回りだからな!」

「なんだよ~、ウチの部に遊びにくるっていってたじゃんかよ~」

「先輩、あの! これ!」


 ああ…やめてくれ……。


****


 そこから先はよく覚えていない。

 刃物で脅している女子、文化祭の準備で廊下に出ていた資材をなぎ倒す女子、資材を蹴ってつまずく女子。

 刃物で傷ついた資材の補填を約束、資材を出していたクラスには謝罪、蹴り飛ばされた資材の修復、たまに倒れ込んでくる女子と壁の間にはさまれて緩衝剤替わり、その他もろもろ……。


「いつか死ぬ……」

「そんなこと言うなよ。皆可愛いし役得も結構ありそうだけど?」

「実害のほうが多いんだよ」

「渚と一緒に居るのもいいんだけど、たまには男子同士で気楽に話したいんだけどなー。男子でちゃんと話してくれるのお前くらいだよ」

「理由がわかってないのが腹立つ」


 家が隣だから一緒に帰ることが多いが、今日は珍しく女子がいない。

 というとでも思ったかばーか! どうせ家の前にいるんだろ! ほら!


「お帰りっ誠君」

「誠! 今日の報告まだだぞ!」

「別のお菓子試作したから味見してくれよなっ!」

「先輩っ! これ作ったんです!」

「文化祭一緒に回ってくれるわよね?」


 …全員いるとは……。


「まぁまぁ、とりあえずウチにおいでよ。夕飯みんなで食べようよ」


 正気かコイツ…? まぁ俺には関係な……


「せっかくだしお前も来いよ」


 嘘だろ……? ああ、安住の地が遠ざかっていく……。



 頼むから女子力(物理)はやめてくれ……。

モブ1号が逃げない理由は逃げられない世界の住人だから。

どっかのゲームの中と思っていただければ。

お読みいただきありがとうございます。

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